Electronics

2014.09.19

自分で直す権利:本当の意味で物を所有する権利のための戦い

Text by kanai

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私の携帯電話が人間だったとしたら、それはバイオニックウーマンだ。ボディは壊れて、数え切れないほど作り直した。頭脳も作り変え、いじくりまわし、改良した。

この3年の間に、私のiPhone 4Sは脱獄して家のホームオートメーション・システムに接続された。Apple公認のガラスのバックパネルは透明なものに入れ替えた。水につけられ、分解され、完全にきれいになった。それも2回。Cydiaストアが提供しているフリーの脱獄アプリのお陰で、Appleが許さない方法で電池残量を調べたりもできる。それに何度もボディをこじあけて電池を交換している。

それは不死身の携帯電話。少なくとも、私はその点に関して疑問を持っていない。

10年前、私はiFixitを立ち上げた。無料のオンライン修理マニュアルだ。私たちが目指しているのは、みんなが自分の物を自分で修理できるようになることだ。ノートパソコン、スノーボード、オモチャ、洋服、なんでもだ。これは私たちだけの活動ではない。iFixitは、自分の所有物を長持ちさせたくて修理しようと考える人たちの世界的なネットワークの一部に過ぎないのだ。

表面的には、Fixer(フィクサー:直す人)とMaker(作る人)は異なる人種に見える。Makerは物を作る。Fixerは物を分解する。片方は新しい装置を作り、片方は既存の装置を作り変える。しかし、どちらも内面ではそっくりだと私は感じている。それは1枚のコインの裏表なのだ。

私たちはみな、Tinkerer(ティンカラー:いじくる人)なのだ。私たちの行動の元は同じ。尽きることのない好奇心、手作りの物への敬意、カンナ屑の匂いへの郷愁、周囲の物を理解したいと思う終わりなき欲望だ。

ティンカラーである私たちは、単なる消費者ではない。私たちは、自分たちで作り、所有し、修理することで製品に参加しているのだ。しかし長年にわたり、こうした製品への参加は、Makerやフィクサーと製造者との関係を気まずいものにしてきた(Appleは私のバイオニック携帯電話を決して認めないだろう)。大方の製造業者は、私たちがネジ回しを捨てて店の行列に並ぶ人間に戻るほうを喜ぶに違いない。

機械の秘密を暴くこと(それを楽しむこと)で、ティンカラーは、製造業者が考える私たちに許された使用範囲の一線を越える。私たちは、彼らの掟を書き換えてしまう。私たちは彼らが作ったハードウェアを作り変えてしまう。そして私たちは古い製品を新しいものに買い換えるのではなく、直して使う方法を知った。

この20年間、製造業者は我々のようなティンカラーに対して静かな戦いを進めてきた。彼らは暗号化によるデジタル著作権管理を行い、なんとなく独占的な知識であることをほのめかし、デジタルミレニアム著作権法によるノーティスアンドテイクダウンの行使、トラクターの整備、Apple製品の修理、計算機のソフトウェアの改良などをユーザーにさせないように法的な脅しをかけている。キューリグなどは、コーヒーポッドにチップを埋め込み、カプセルの再利用を禁止する対策をとっている。

携帯電話のアンロックを求めた「我ら人民」嘆願書に11万4000人が署名してから1年以上経つが、電子フロンティア財団などのデジタル権利を訴える団体の熱心なロビー活動も力及ばず、いまだに携帯電話のキャリアを変更することは違法だ。

ホットロッドが誕生してからずっとティンカラーの聖地だった自動車業界ですら、慌てて同様に扉を閉ざすポリシーを掲げ始めた。今や、自動車にはナットやボルトと同じくらいプログラムが使われている。ボンネットの下をいじくることは、サービス情報と回路、つまり自動車メーカーが教えたくない情報に触れることになるのだ。

マサチューセッツでは、自動車メーカーに内部的なサービスマニュアルと回路図とコンピュータープログラムを独立系の修理工場や車のオーナーに公開させるために、議会で法律を通さなければならなかった。

自分で買ったものは自分の所有物だと私は思っている。本当の意味での「所有」だ。分解、改造、修理、プログラムをガチャガチャいじくったり、自作のArduino機器に接続したりといったことが自由に行える権利を有することだ。

しかし、こうしたいじくる権利を手に入れるには、そのための戦いを始めなければならない。改造したり作ったりする権利を求める戦いだ。修理する権利のための戦いだ。自分の物を自分で所有する権利のための戦いだ。

我々は、新しいデジタル世界に暮らしている。今こそ我々は、Cory Doctorowを始めとするハードウェアの自由化運動を先導するMakerたちのもとに力を結集するのだ。彼はこう言っている。「情報が自由であるか否かではない。人が自由であるか否かだ」

– Kyle Wiens

訳者から:Cory Doctorow(コリイ・ドクトロウ)は作家。クリエイティブ・コモンズの普及に尽力している。

原文