2013.03.19
Kickstarterを使わずに自前でクラウドファンディング(1)
先日、私たちは世界に向けてScoutの予約サイトを公開した。Scoutは手間いらずのDIYホームセキュリティーシステムだ。詳しくは www.scoutalarm.comを見てほしい。私たちは、独自のクラウドファンドサイトを立ち上げるというギャンブルに打って出ることにした。Locktron(編注:スマートフォンを使ったドアの施錠システム)もそうだったが、Scoutはまだ製品ができていないのでKichstarterは利用できない。そこで、Kickstarterはあきらめて、自分たちで資金集めをしようと考えた。幸い、Locktronがオープンソース化によって道を拓いてくれていたので、比較的簡単に行うことができた。
今のところ、Scoutプロジェクトは、Locktronのように申し込み者が予定以上に殺到しているという状態ではないが、この2週間でそこそこの出来だ。このプロセスで気づいたのは、自分でクラウドファンドサイトを立ち上げたい人のための情報が十分でないということだ。私たちは、それを実行した数少ない企業のひとつだが、これまでに学んだことを共有したいと考えた。この記事が、わずかでも、後に続く企業の役に立てたらと思う。
これまでに学んだこと:Self-Starterで始めるのは便利だが、プログラミングが山ほどある。
Lockitronは、オープンソースのGithubのSelf Starterサイトで、充実した初期設定テンプレートを配っている。しかし、すべてのクラウドファンドプロジェクトで必要となる共通の部分以外は、それぞれのプロジェクトに合わせてカスタマイズするための膨大な仕事をこなさなければならない。たとえば、Self Starterでは、注文を受け付けられるのが1種類の製品に限られる。データ構造は、ひとつの製品を複数個注文できるように設定されているのだ。専門の知識を持つ開発者を2週間から2週間拘束して作業にあたらせることができなければ、独自のクラウドファンドサイトの立ち上げは難しい。
広報は最重要。そのように扱うこと。
Kickstarterにあるようなユーザー用の内蔵プラットフォームという贅沢が許されないかぎり、マスコミやソーシャルメディアを利用して人々の注目を集めなければならない。まずはフォロアーを増やし、時期が来たら、数日から数週間を使って包括的なメディアのコンタクト先リストを作る。メディアはしっかりと選ぶ(クラウドファンドや同様の起業の話を記事にしているか、など)。接触するときは、できるだけ個人的な関係を作る。
うまく使えば広報担当者は黄金に値する。
これまでに大きな広報の仕事をしたことがある人がチームにいれば、大きな助けになる。チームとしての自信がつくが、ひとたびマスコミに取り上げられるようになると、今度は電子メールの山に埋もれることになる。有能な広報担当者は、常に売り込みを行い、物事を順調に運んでくれる。マスコミの反応について、こまめにあなたに報告し、あなたの質問に対処し、さらに、とくに重要なこととして、記者が取材を申し込んできたときに、即座に報告してくれる。
最初の数時間は拍子抜け
徹夜の連続で数週間の準備を行ったあと、満を持して世界に向けてプロジェクトを公開することになる。その朝、リストにあるすべての相手に広報資料を送付し、後はひたすら待つ。数時間、または1日の大半は、じっと座ってGoogle Analyticsのダッシュボードのゼロを見つめる。これは必ず経験する消耗戦だ。覚悟しておこう。
思っているより人手がいる
これまでに述べた形で広報担当者を置き、マスコミが順調に反応するようになると、最初の数日間は5人から6人のチームで忙しく対応することになる。カスタマーサービスの電子メールは、数百の単位で受け取るようになる。そのすべてに応えるために、私たちは毎日数時間ずつ費やした。oLark(編注:オンラインストア上のチャット)を利用する場合は、相当数のライブチャットにも同時に対応しなければならなくなる。ソーシャルメディアにも対応しなければならない。さらに、サイトの問題もある。とにかく人材を確保することだ(友だちにビールを奢って手伝ってもらうのでもいい)。
サイトのロードテストを必ず行う
アプリのホスティングを行う場合は、必ず事前にロードテストを行う。
そのサイトでどの程度のことが対処できるか、アクセス数が突然膨れあがったときに、どれほど拡張すればよいかなどが事前にわかる。私たちはherokuでホストし、Blits(無料アドオン)を使って250以下の同時ユーザーの場合にサイトがどう反応するかを見ている。加えて、どこからキャッシュすればよいかを見極めるためのよいインジケーターにもなる。memcachedをdalli_storeで使うようサイトを最適化し、私たちの資産を提供できるようCloudFrontディストリビューションを作った(チュートリアルがたくさんあるが、CloudFrontのミラーサイトの静的バージョンについて知っておくべきことがある。https://forums.aws.amazon.com/thread.jspa?messageID=420936񦱈)。
海外への発送とレートについて事前に方針を決めておく。
海外への発送が可能か、海外でも使えるか(電子製品の場合)といった質問を受ける。発送できる国、できない国をあらかじめ決めておこう。質問者は細かいことを聞いてくるものだ。
製品を扱いたいという業者への対応を決めておく。
クラウドファンディングが順調に進むと、世界中からたくさん送られてくるメールの中に、どこそこの国での流通業者は決まっているのかという問い合わせも舞い込むようになる。流通の交渉に関する詳細をあらかじめ決めておくのが理想的だ。少なくとも、彼らの情報を記録して、追って連絡することを丁寧に伝えておこう。
Amazon FPSの支払いをPayments Well in Advance
私たちは、実際の取り引きを始める前に、Amazon FPSのアカウントをテストした。サイトの準備を急いでいたので、Amazonが銀行口座の情報などを確認するのに1〜3営業日かかることを見落としていた。少なくとも、1週間前に入金の受け付けを開始できるようにしておこう。会社の銀行口座情報と国税局のEIN書類を準備しておくことだ。それらを同時に送付する。信じてほしい。これだけで数時間分の頭痛が緩和される。
YouTubeの設定で半日潰さないために
Vimeoのプロアカウント($199)がない場合は、製品のビデオをYouTubeで公開することになる。あまり知られていないことだが、YouTubeでは、最初のフレームをサムネールに設定できないことがある。製品の画像をサムネールにしたい場合、それが問題になる。通常は、ランダムに3カ所のフレームが示されて、そこからサムネールにしたい画像を選ぶようになっているが、そこをなんとかしようともがくのは時間の無駄だ。その代わりに、Photoshopでプレイボタンの画像を作ってくれる人を探し、その画像を製品の写真の上にオーバーレイする方法をとろう。ボタンをクリックすると、ボタンが消えてYouTubeのビデオが再生されるようにしておくのだ。
ここに例がある。
「あとで知らせる」ボタンを忘れずに
LockitronのSelf-Starterテンプレートには、Remind Me Later(あとで知らせる)ボタンは含まれていない(今のところ)。このボタンはとても重要だ。現在、私たちのサイトでは、200名以上の人が、「あとで知らせる」の登録を行っている。この機能には、数時間をかけて開発するだけの価値がある。人はみな忙しいし、サイトがもっと便利になったら戻って来たい、またはキャンペーンの終盤を見に来たいと思っている。そのオプションを提供するのだ。
サイトにライブチャットのウィンドウを設ける
製品についてわからないことがあったとき、ライブチャットがあるかないかで、製品をあきらめるか、注文するかの違いが出てくる。ぜひとも備えておくべきだ。注文数が確実に増える。
Google Analyticsを監視してスプラッシュページを更新することは癖になる
これを回避する手立てはない。覚悟しておくことだ。まだ未経験の人も、すぐにその意味がわかる。
何がなんでも自前でやろうと思わないこと
自前のサイトを立ち上げる前に、LockitronがKickstarterに申し込んだのにはワケがある(私たちだってそうしたかった)。Kickstarterには山ほどの利点があり、それはいろいろなところでさんざん語られている。自分でやろうと決め込んで、Kickstarterを侮ってはいけない。
質問はいつでもどうぞ。私たちが実際にどうやっているかも、www.scoutalarm.comまで、ぜひ見に来てほしい。
この記事は、もともと Scout blogに掲載されたものです。この話のパート2はここで読めます。(日本語訳も次週掲載予定)
– Lindsay Cohen
Lindsay Cohen:Sandbox Industries副社長。Scout のアドバイザー。
[原文]