Electronics

2013.05.29

Hardware Innovation Workshop – ベンチャーキャピタルに聞く

Text by kanai

Eric Klein (Lemnos Labs) moderates a panel of five hardware venture capitalists.

Eric Klein(Lemnos Labs)が司会を務め、5人のハードウェアベンチャー投資家に話を聞く。

ベンチャー投資家ってどんな人?

Makerには、ベンチャー投資家(VC)に対して複雑な考えがある。自分で作った会社の自主性を投資家に奪われてしまった、などという話を聞いてるからだ。KickstarterやIndiegogoなどのクラウドソースでプロジェクトを離陸させる人もいるが、今でも資金をVCに頼る人たちは少なくない。そこでMAKEでは、Hardware Innovation Workshopにベンチャー投資家を招き、率直な話を聞いた。

Lemnos LabsのEric Kleinは、5つの異なる投資企業から出席してくれた投資家たちの内容豊富な討論を取りまとめ役を務めた。資金の裏にはどんな人がいるのか?

彼らの多くは、VCになる前に本格的な技術職についていた。ほとんどは、工学または科学の学士号、修士号、博士号を持っていて、その上に複数の技術系学位とMBAを持っている。職歴は技術系企業から始まり、革新的な役割を担っていた。

話のハイライト

実際にその場で話が聞けるのがいちばんだが、Hardware Innovation Workshopのこの討論会に出席できなかった人のために、ハイライトを紹介しよう。Ericが質問をして、参加者がそれに答える形で話は進んでいったが、彼らの話は質問に答えるだけに終わらなかった。

新興の企業が成長力のある製造業に発展する可能性を、どこで見極める?


Manu Kumar, K9 Ventures(写真提供:Dr. Brian Lee)

K9 Venturesの創設者であり「最高火付け役(chief firestarter)」であるManu Kumarは、ハードウェアはソフトウェアを走らせるためにあるもので、それ自身で完結するものではないと考えている。また、新興企業にとって、製造は彼らが考えるより厳しいものだとも語った。「ハードウェアからハードな部分を取り去ることはできない」と彼は言う。試作品を手に入れるのは、ほんの1ステップに過ぎない。

Manuは実体験から物を言う。K9は彼が立ち上げた3つめのベンチャー企業だ。彼は、SneakerLabs, Inc.を創設しCEOを務めた。E.piphanyのインタラクティブ技術副社長、iMeet, Inc.の会長兼CEOを歴任した。また、iMeet買収後は、Netspokeの役員を務めている。

Manuが研究開発と商品化に携わってきた。その範囲は、スピーチ、分配システム、シャット、ウェブおよび音声会議、遠隔教育などのインタラクティブ技術だ。つまり、彼はちゃんと物がわかった上で話をしている。

Kleiner Perkinds Caulfied & Byers(KPCB)のTrae Vassalloも彼に同意する。「試作品を作るのは簡単だ。仕事の99パーセントは、それを製品化すること」彼女はまた、ハードウェアのコストで企業は簡単に破産してしまうという。


Renata Streit Quintini(Felicis Ventures)

Renata Streit QuintiniはFelicis Venturesの投資家だ。彼女は、その製品に強力な需要があるかを見るという。また、そのハードウェア製品を市場に送り込むには何が必要かを現実的にわかっている人間がチームにいるかどうかが、明暗を分けると彼女は語る。

Renataはもともと、ブラジルとアメリカで、技術系の企業合併および買収を専門とする弁護士だった。その後、JPMorganのTech, Media and Telecomグループに入った。その後、Stanford Management Companyに移り、ベンチャーキャピタルのポートフォリオ管理を手伝った。

Felicisでは、Renataはeコマースと教育に関する投資に専念している。彼女は、Baby.com.br、Bonobos、Dollar Shave Club、Artspaceに投資を行っている。

Shasta Venturesの常務取締役、Rob Coneybeerは、投資先企業が、製品の製造がいかに大変なことであるかを本当に理解しているかを見る。

Klosla VenturesのRyan Kottenstettは、イノベーターたちに対して、何もかも自分たちで作ろうとせず、それが合理的な場合は市販品の利用も考慮すべきだと助言する。また、製品の設計寿命と失敗したときの対処方法にも注目する。たとえば、一般向けの電子製品は、医療製品に比べて製品寿命が短く、失敗してもインパクトは小さい。

新興企業がひしめいている技術分野はあるか?


Ryan Kottenstette(Klosla Ventures)

Ryanは、技術的にどれだけユニークであるかを評価の対象としている。彼の起業家への助言は、今やいち早く市場に参入するだけで足りず、他者が簡単に真似のできない何かを持つ必要があるということだ。

Ryanは自分の名義で、温度管理とスマートマテリアルに関する特許を持っている。素材科学に関する論文も書いている。彼はBMWとNational Renewable Energy Laboratory(NREL)で研究技師として働いていた。

彼は技術系新興企業、Ampriusの最初のメンバーだった。そこでは、次世代のリチウムイオン電池を開発していた。彼は自らの起業経験から語っているのだ。

Robが言うには、現在は3Dプリントの分野で新興企業がひしめいている。一般大衆がこれを受け入れるようになるには、まだ3年から4年かかるだろうと彼は見ている。そして、あまりにもプレイヤーが多い。彼はその中にユニークな切り口を持った人を探している。

Traeはこう言っている。「Kickstarterが活発に利用されているが、ホームランを打つ人は少ない」彼女は、例としてQuantified Selfムーブメントをあげている。日々の自分のデータを集める製品があるだけで不十分だ。「よりよい生活を送るための方法を示す必要がある」

VCとして、どんな分野に興味があるか。あまり開拓されていない分野は?

Trae Vassallo(KPCB)

Traeは、スマートフォンの急増を実現技術と見ている。スケールメリットにより、エレクトロニクスは「モノのインターネット」を安く身近なものにした。彼女は、ウェアラブルの評価が不当に低いとみている。

彼女の話には説得力があり、人間的な側面への敬意も込められている。彼女は、技術が、どのようにして家庭、とくに親たちの人生を前向きに変化させられるかを考えている。

Traeは本格的なデザイナーでありエンジニアでもある。スタンフォードで機械工学の学位とMBAを取得した。最初に就職したのはIDEOだった。そこでPalm and Dellで使用するための革新的な製品の開発を行った。さらに彼女はGood Technologyの協同創設者であり。さまざまな技術の13の特許を持っている。

Manuは革新的なカメラの技術に多くの投資を行っている。撮影後に焦点深度を変更できるカメラに彼は興味を持つ。現在のカメラの機能を高める拡張機能や、まったく新しいカメラのデザインをいろいろ見てきた。

Robは、ロボティクスと「モノのインターネット」の交差点に期待を寄せている。スマートなデバイスがみなつながるようになると、次のステップは、それらを作動させることだと彼は考える。だから、現実世界に作用を及ぼすようになる。

Renataは、3Dプリントと画像処理がインターネットの世界に広がると見ている。建築設計図は高品位な3Dスキャンに取って替わられる。建築とデザインに革命が起きる。

Ryanは、個別の技術ではなく、システムやソリューションの統合に興味がある。将来は3D映像システムにソリューションの統合が起きると考えている。

VCにとって、KickstarterやIndiegogoなどの資金集めサイトの価値は?

Rob Coneybeer(Shasta Ventures)

Rob は、クラウドファンドに挑戦しようという人のために具体的な助言をした。大きなキャンペーンを行って、上質なビデオを作り、それを支えるためのコミュニケーションを行うのは大変なことだ。周到に計画を立てて、着実に実行すること。Kickstarterでの成績が、良いにせよ悪いにせよ、投資家の判断材料になる。Kickstarterキャンペーンに失敗すれば、永遠に悪評がつきまとう。

Robは最初に就職したのがMartin Mariettaだ。そこで彼は、最初のEchoStar宇宙船の製造に携わった。そもそも彼はロケットエンジニアなのだ。ベンチャーキャピタルのNew Enterprise Associatesに移った彼は、半導体、ソフトウェア、ネットワーク技術など、15件に初期投資を行った。そして、2004年にShasta Venturesを協同設立し、モバイルと無線に関する新興企業を中心に投資を行っている。

Manuは、マーケティング、コミュニケーション、配布のためにKickstarterを利用し、そこからVCの投資につなげようとする新興企業もあると言う。クラウドファンドサービスは、実質的に、支援者や顧客のネットワークを作る手段になっているが、必要な資金を獲得できるとは限らない。

Renataはクラウドファンドサービスで得られるデータに価値を見いだしている。プロジェクトに対する関心の量は非常に大きい。彼女は、それらのサイトが、流通のチャンネル、そしてコミュニケーションのチャンネルとして有意義であるという意見に賛同していた。

ハードウェア製品で大ヒットを飛ばしたら?

Manuは、自分の子供が好きになるかどうかで製品の価値がわかるという話をした。彼の3歳の子供は、お気に入りのiPadのゲームよりも、試作品のゲーム機を好きになったとき、この製品は当たると感じたという。ほんのひとつかふたつのポジティブなデータで投資を決断することがある。しかし彼は、一発屋で終わらせないように注意を払う。投資先が、行き当たりばったりで事を進めているのではなく、しっかりとエンジニアリングのプロセスを踏んでいることを確かめる。

Ryanは、長続きする製品を求める。Traeも同様だ。製品を売るのではない。問題解決手段を売るのだ。それで、それをどう伸ばすのか? VCは産業変換技術と長続きするアイデアを求めている。

支援するアイデアのデザインの美しさをどう考える?

Robによれば、人は触れる物に対して親密な関係を築くという。その感触や関わり方が気に入れば、ソーシャルメディアに書いたり友だちに勧めたりするようになる。

Manuは、単に技術面のデザインだけではなく、全体的なデザインの重要性を強調する。パッケージ、説明書、箱を開けたときの感じ、サポートも重要だ。開発者にトータルなデザインを描かせるために、彼はこう尋ねる。「あなたの製品をApple Storeの棚に並べたら、どう見えるだろう」

400キロのゴリラが手を付けようとしているアイデアからは、手を引く?

Robの助言には会場のみんなが笑った。「ゴリラの手からバナナを奪ってはいけない」しかし、ゴリラを観察し、それがどこへ向かうかを考えることはできる。

Manuは、大きな企業にピッタリの大きな穴に入る製品からは手を引くと言う。期待が持てない。小さな新興企業なら、動きが速いし、大企業は見向きのしない良い場所を獲得できる。

TraeはFitBitの話を持ち出した。そこが人々の生活を改善する方法は、製品に同じような技術を使っているナイキとは違っている。ナイキは靴にフォーカスしているが、FitBitはエンドユーザーにフォーカスしている。

まとめ

VCパネルディスカッションはとても面白く、会話もはずんだ。ワークショップに参加した、ベンチャーキャピタルを求める多くの人たちにとって、素晴らしい入門の話になった。Makerコミュニティでは、普段はほとんど触れることのない世界の話だ。自分のアイデアを市場に送り込みたいと考えるMakerのみなさんの成功を祈っている。

– Andrew Terranova

原文