Electronics

2013.09.13

ハッカソンを開催しよう

Text by kanai

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2月に開かれたPenHacksでは、Yesha O、Atul T、Saad Aによる、Arduinoで作ったミニチュアギターペダルで彼らがハックしたGµitarixのデモに人だかりができていた。

大学ハッキングマラソン、学生の間では「ハッカソン」という名称で知られるイベントは、大学生なら一度は体験しておくべきものだ。ハッカソンは本当に気合いが入る。ほぼ2日間、ぶっとおしでハックをするのだ。なかには、ハッカソンに参加するだけでは物足りないという人間もいる。参加したハッカソンの内容が、自分が求めているものと違うこともある。そんなときは、自分をひとりのハッカーから「主催者」に切り替えてみよう。私も以前は、どうやってハッカソンを開けば良いかわからなかった。しかし、ひと夏をかけて準備して、一回やってみた今は、いろいろと助言できることがある。

自分の大学でハッカソンを開こうと目論んでいる人、またはすでに準備を始めている人のために、覚えておいてほしいことを、ここに列挙しよう。

1) コンセプトとアイデア

最初に考えるべきことはシンプルだ。なぜハッカソンを開くのか。そこで何を達成したいのか。それがわかれば、あとは全力で大成功に導くだけだ。

私はPennHacksの立ち上げを手伝った。ペンシルベニア大学で初めて開かれたハードウェアベースのハッカソンだ。主催はペンシルベニア大学のThe ArchitectsとComputer Engineering Club。開催されたのは今年の2月。卒業生と在校生を含めて60名が参加した。PennHacksは9月13日から15日にまた開催されるが、今度はさまざまな専門の学生が120名ほど参加する予定だ。

私はPennHacksを成功させたかった。ハードとソフトの両面からのハックや、副産物的なプロジェクトが大好きだからだ。プロジェクトにArduinoやmbedを応用する方法は無数にある。私自身、ハッカソンに参加したことがないわけではない。ペンシルベニア大学主催で2年に一度開かれるPennAppsというハッカソンがある。

私は、PennAppsには何度も参加してきた。しかし、ハードウェア中心のハッカソンの必要性を感じていたのだ。そこで、PennAppsや他のグループの人たちがハードウェア系のハッカソンを開いてくれるのを待つ代わりに、仲間を集めて、自分たちで開くことを決めた。

ハッカソンを一から立ち上げるのは大変な仕事だったが、最高の体験でもあった。プレッシャーに負けたり、やることが多すぎて挫折していたら、きっと後悔しただろう。ちょっとした楽しみのためにハッカソンを開こうという場合でも、途中であきらめることなく、最後までしっかりやり抜くことが大切だ。たぶん、その後も長く続くイベントをスタートさせることができるだろう。

2) 予算

残念なことに、ハッカソンは金のかかるイベントだ。それだけに、よい人脈が大いに役に立つ(これについてはあとで詳しく述べる)。スポンサーはハッカソンを大いに助けてくれる。というより、必要だ。

とは言え、スポンサー探しには苦労する。PennHacksの場合がまさにそうだった。まず、誰にコンタクトを取るべきなのかがわかるまでに時間がかかった。また、我々と同じ考えを持ち、ハードウェアに対する情熱を理解してくれるスポンサーを探すのが大変だった。そのためには、ハッカソンの目的と目標を明確にしておくことが大切だ。それがあって初めて、支援を求めるに値する最適な企業を探すことができる。

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Running Gait RectifierはAadithya P.とSonny S.によるプロジェクト。2月のPennHacksで製作された。Arduinoを使って、走るペースと圧力の分布を走者にフィードバックする。

ハッカソンの予算は、ハッカーたちとの関わり合いの深さと、イベント全体の内容に大きく影響する。また、提供する食事、活動内容、賞品にも関わってくる。もちろん、ハッカソンの規模によっても予算は変わる。巨額の予算があれば、もちろん最高だが、そこまでは必要ない。とは言え、予算が十分にあれば、次回はより大きな規模で開催できるし、準備も楽になるのは事実だ。

3) スケジュール

まず、ハッカソンの開催期間を決めよう。そして、そのほかの活動やイベントと重ならないようにスケジュールをしっかりと空けておく。ハッカソンは機械と同じだ。スケジュールを綿密に組み立てることで、すべてが滞りなくスムーズに動くようになる。

もっとも大切なのは、ハッカソンの長さだ。私が参加したり参加を考えたハッカソンは、ほとんどが24時間、48時間、72時間のいずれかだった。とくに長いハッカソンでは、適度な休憩時間の割り振りが重要になる。主催者も参加者も、狭い場所に閉じ込められて頭が変になるといけない。精神的な休息が必要だ。

ハッカソンの間にやりたいことを、すべてスケジューリングしておくことは、とても重要だ。さまざまなトラブルが、どうしても起きる。そんなときに、スケジュールをしっかりと立てておけば、立ち直りが速い。また、事前にやるべきことの計画を立てておけば、開催中に時間的な余裕ができる。

4) グッズ

ハッカソンがどれほど楽しかったかを伝えるためにも、無料で配るグッズは大きな要素となる。少なくとも、私が参加したハッカソンではそうだった。タダのものは、誰だってもらえばうれしいものだ。ただし、もらうほうにはタダでも、当然、配る側には金がかかる。スポンサーには、そうした販促用のグッズが用意されていたり、参加者に配るための製品を提供してくれたりするので、そこにお願いするのも手だ。サングラス、USBメモリー、カップなどいろいろなものが考えられる。しかし、スポンサーに頼り過ぎるのもよくない。どうせなら、ハッカソンに参加した記念に取っておきたいもの、友だちに見せびらかしたくなるようなものを配りたい。我々はハッカーたちにTシャツを配ることにした。それは、どれほど楽しい時間を過ごしたかを自慢できる記念品となるし、ハッカソンが終わったあとも、長く使ってもらえるものだからだ。

5) 人のネットワーク

強いつながりのある人をたくさん知っていること、また自分からつながりを作っていくことが大切だ。困難なこともあるが、役に立ってくれる人と親しくなっておくと、ハッカソン実現のためのたくさんのドアが開かれるようになる。そのためにも、いっしょにハッカソンを立ち上げてくれる親しい人間を増やしておこう。人がたくさんいれば、責任の分担もできるだけでなく、個々の能力を発揮して、組織の中のさまざまな分野で活躍してもらえるからだ。適材を得ることができれば、会場やグッズの手配をしてもらったり、相談に乗ってもらったり、実務的な指導を受けるなどして、ハッカソンを成功に導くことができる。

6) 態度と期待

最後に、しっかりとした態度を維持し、手を放して、楽しむことだ。初めての開催なら、完璧にいなかくて当然。うまくいけば大成功、失敗したらそれを次への糧とする。常に次回のハッカソンを視野に入れておけば、結果的に目的の場所にたどり着ける。

もちろん、ハッカソン開催までには、ここに列挙した以上のことがいろいろある。しかし、これらのポイントを押さえておけば、最初のハッカソン開催への正しい方向へ自分を導くことができるはずだ。

– Jeffrey Shih

原文