Electronics

2014.02.05

雪中のドローン:ナイキの「Never Not」撮影の裏話

Text by kanai

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MAKE本社で初めてのドローン招待大会を開いたとき、ロサンゼルスの映画製作者、デザイナー、ドローン専門家からなるグループ、Drone Dudesの面々に会えた。彼らのクライアントには、アウディ、Spy Optics、ナイキなどが名を連ねている。彼らは、ドローンでなければ撮影できないショットを売りにしている。雪が大好きな私は、彼らがカナダの山中で撮影したナイキの新しいスノーボードムービー「Never Not」の裏話がとくに興味深かった。雪の中のドローンだって? 私は話を聞かないわけにはいかなくなった。そこで、Drone Dudesのパイロットで映画カメラマンのAndrew H. Peterson(写真左上)を捕まえた。このムービーでは、Andrewは操縦を、Jeffrey Blank(写真右上)がカメラの操作を行い、Aaron Lieberがプロデューサーを務めた。

1. Drone Dudesがナイキの「Never Not」を撮影することになった経緯は?

プロデューサーのAaron Lieberがアクションスポーツの大ファンで、Drone Dudesのほかの連中も好きでした。彼は何本ものサーフィン関係のプロジェクトを通じてナイキやHurkeyと太いつながりがありました。この話が持ち上がったとき、私たちはすごいチャンスだと感じ、飛びつきました。

2. 製作者側では、ドローンを使うことで、とくにどんなショットを望んでいたのでしょう?

彼らが望むものを撮ることが私たちの使命です。日没前のゴールデンアワーに、通常のヘリコプターでは不可能なショットを撮るために私たちが呼ばれました。ライダーたちが巨大な40フィート(約12メートル)のキッカーランプから出発して彼方へ消えていく。斜面に沿って滑らかに動くショットが多く使われています。人が乗るヘリコプターだったら、ローターの回転で周囲の状況をめちゃくちゃに壊してしまいます。私たちは、ぐっと寄ることができ、ワイドアングルを保持できました。

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3. 寒くて雪に覆われた高山という環境でのドローン撮影では、何か特別な問題がありましたか?

ええ、とにかく、この極限状況での撮影は楽ではありませんでした。スキーのリフト3台分の機材を運び上げ、スノーモビルで30分から45分、引っ張っていきました。スノーモビルがひっくり返ったこともありました。機材は転倒することなく無事でしたが、すべて雪まみれになってしまいました。

しかし、本当の試練は、飛行時間が約半分に減ってしまったことです。そこではオクトコプターに、超高解像度のRedカメラを搭載していたので、システムが大きくなった分、さらに飛行時間が厳しくなりました。バッテリー切れで4回か5回落ちました。考えつく限りの手段を使ってバッテリーを温め活性化させたのですが、予測外の事態が発生するのが常です。幸い、一面の雪で、人のいない場所だったので、バッテリーが切れたときも、うまく不時着をコントロールできました。

とにかく寒くて死にそうでした。高度も関係していたと思います。しかし結果的に、最高の仕事ができたし、他の方法では絶対に不可能な「神」ショットも何本か持ち帰ることができました。もうひとつの困難は、日没まで撮影していたことにありました。10分以内に荷物をまとめて、チームを引き連れて凍てつく山道を降りなければなりませんでした。でも、本当に楽しかった。撮影の合間の移動はいつでも楽しいものです。たとえ、地獄のように恐ろしい状況でもね。特注ケースがなくて、すべてバラバラに持ち運ばなければならなかったとしたら、この短いスケジュールで撮影ができなかったでしょう。私たちは、すべてを4日間で撮り終えました。

4. 機材とスタッフを現地まで運んだときの様子を教えてください。

機材は、まったく問題なくカナダに入国できました。ただ、ケースが巨大だったので大変でしたけど。私たちは学生のプロジェクトだということにしました。まんざら嘘ではありません。たいていの人はドローンに圧倒されて、興味を抱いて、私たちを通してくれます。むしろ、アメリカに再入国するときのほうが面倒でした。結果は問題なしでしたが。

5. ほかの撮影クルーやライダーたちは、現場でドローンを見てどう反応しましたか?

みんな気に入ってくれましたよ。ほとんどの人は、ドローンを見るのが初めてで、Redカメラを宙に浮かせる私たちの方法に感心していました。ライダーやクルーに接近するときは、彼らが安全に、安心して仕事ができるよう、厳重に注意を払いました。とても寒く、あの環境では行動も制限されることをみんなは理解していたので、ドローンには最初から有り難がられました。ドローンが飛んでいる間は、アスリートたちは本当に極限まで力を出し切ります。そこが本番です。彼らは私たちが撮ったような最高のショットを求めてきます。そのエネルギーがとてもエキサイティングで楽しいものでした。彼らのエアートリックと私たちの空中撮影が合致したときは、最高に楽しかったです。

6. 何か大きな教訓はありましたか?
新しい環境での飛行を甘く見ないこと。特に高高度で寒い場所では。ドローンとカメラは何度も雪まみれにはなりましたが、現場では何も壊れなかったのがラッキーでした。本当にクレイジーな仕事でしたが、モチベーションを高く保ち、同時に自分たちの限界に挑戦することで、このムービーへの高い期待に応えることができました。私たちは負けませんでした!

7. いちばん印象に残っていることは?
数カ月語にハリウッドでムービーを見たことが、Drone Dudesにとって最高の経験でした。しかし私自身は、本当にたくさんの困難に遭遇して、それをなんとか乗り越えて撮影を完了できたことですね。それがすべてといった感じです。このチームと、最後までやりぬいたことを、私は誇りに思います。

8. ドローンは将来、アクションスポーツの撮影で重要な役割を負うようになると思いますか?

100%確実です。Drone Dudesには本当に腕のいいパイロットが何人もいますが、彼らはみなアクションスポーツが専門です。私たちは、それが好きなんです。実際、みんなその経験者です。誰も成し得なかった最高のショットを撮ることを、いつも考えています。私たちが今日あるのは、ファンや支援者のみなさんのお陰でと、感謝しています。明るい未来は頭の上から来ます!

– Goli Mohammadi

訳者から:「Never Not」の全編はここで見られます。

原文