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2015.10.26

MakerCon Tokyo 2015 — 「テクノロジーに関するギャップを埋めることで潜在的なメイカーをメイカーに変えたい」小林茂さんインタビュー(前編)

Text by tamura

いよいよ開催まで2週間を切った「MakerCon Tokyo 2015」。今回、プログラムチェアを務めていただく小林茂さん(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]産業文化研究センター 教授)に、MakerCon Tokyo 2015のプログラムと、その背景にある小林さんの活動についてお聞きしました(後編)。なお、タイトルや本文にある「メイカー」と「メーカー」は、どちらも英語表記は「Maker」です。しかし、メイカームーブメントに関わる文脈では、日本語として「メーカー(企業)」「メイカー(個人の作り手)」の2つの表記が可能になります。同じ言葉が2つの意味を持ち、そこからさまざまな議論が生まれることに注目し、本カンファレンスでは、2つの表記を使用します。

小林さんの現在の活動について教えて下さい。

小林:最近の活動としては、製造業を中心とした地場産業と情報産業という異業種を掛け合わせてイノベーションの創出に挑戦する、という取り組みを行っています。その中の1つとして、傾けるとほのかに光ることで日本酒を飲む体験に彩りを添える枡「光枡」が生まれました。これは、1300年の歴史を持つ枡を専門に製造するメーカーの経営者兼木工職人、ITに専門特化した人材サービスやアウトソーシングサービスを行う企業のプロジェクトマネジャーとソフトウェアエンジニア、印刷会社のカメラマンといった多様なスキルや視点、経験を持つ人々が集まってゼロからつくられたものです。

アイデアをプロトタイプにする段階ではオープンソースハードウェアやデジタルファブリケーションを活用しましたし、Maker Faireに出展しているメイカーも大きな役割を果たしました。このように、メイカームーブメントと言われる時代ならではのイノベーション創出の方法論を研究しています。

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光升(写真撮影:井戸義智)

小林さんご自身といわゆるMakerとの関わりは、「Gainer」や「Arduino Fio」というツールの開発に始まり、「IAMASイノベーション工房 [f.Labo]」というスペースの運営へと領域を広げています。それらの活動に共通する問題意識(または解決したいと考えていること)があったら教えて下さい。

小林:Gainerを仲間と一緒につくったころに考えていたのは、つくりたいものがあるのに電子回路の知識がないアーティストやデザイナーが様々な作品をつくれるようにするためのツールをつくろう、ということでした。実際にGainerをオープンソースハードウェアとして世の中に出して広めていく中で、その対象はソフトウェアエンジニアにも広がっていきましたが、テクノロジーに関するギャップを埋めることで潜在的なメイカーをメイカーに変えたい、というのはずっと共通しています。

また、3Dプリンタやレーザー加工機も含め、様々なツールをどこでどのように使えばいいのかを伝えないとツールだけでは何も起きませんし、使いこなせる人たちを育てることも必要です。そうした問題意識からメイカースペースを運営するようになりました。

小林さんは、2010年のMake: Tokyo Meeting 06では「Make:r × Maker」 ―工作道具・素材のリデザイン展」、2013年のMaker Conference Tokyo 2013では「Maker×メーカー」というセッションをそれぞれモデレートしてきました。さらに現在まで、個人の作り手である「メイカー」と既存の製造業である「メーカー」の関係がどのように変化したのか、お聞かせください。

小林:数年前からそうした活動に取り組んできましたが、今回のカンファレンスを企画する中であらためて思ったのは、素材や部品を製造するメーカーの中で、従来のメーカーだけでなく多様なメイカーの可能性に着目しているところは着実に増えてきている、ということです。

また、メイカーとメーカーは独立した存在ではなく、その2つが同じ人物の中で混在している人々が結構いることもわかりました。依然としてハードウェアを製造して世の中に送り出す、というハードルは高いものですが、その中でメイカーとメーカーがどのように関わってどのような生態系ができればいいのか、が少しずつ見えてきた気がします。これについては、基調講演やそれぞれのセッションの中で議論したいと思っています。

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Make: Tokyo Meeting 06で行われた「Make:r × Maker ―工作道具・素材のリデザイン展」のプレゼンテーション(写真撮影:ただ)

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MakerCon Tokyo 2015」では、「”Open Innovation” by Makers」をテーマに「メーカーがつくるメイカースペースとメイカーコミュニティのいい関係」「オープンソースハードウェアの可能性と課題—知的財産権と製造物責任から考える」「半導体メーカーとメイカーの新しい生態系」といった多彩なセッションが行われます。チケットはPeatixにて販売中です。みなさまのご来場をお待ちしています!