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2016.02.26

出展者が自分たちのために作るイベント「NT京都」運営の工夫

Text by guest

編集部から:毎年春に開催されているニコニコ技術部のイベント「NT京都」が今年は3月20日開催予定です。このイベントのユニークな運営方法やその背景にある考え方について、運営の中心であるakira_you(野田)さんに寄稿していただきました。

NT京都はニコニコ技術部有志が京都で開催している展示交流会です。みんなで集まって展示を行うという点では、小さなMaker Faire Tokyoとも言えますが、出展者がゆっくり楽しめる雰囲気が特徴です。そんなNT京都を主催者、そして出展者の視点から紹介します。

ニコニコ技術部(以下、ニコ技)は動画サイト「ニコニコ動画」で自然発生的に集まった趣味で作ったモノを動画にして公開している人たちです。ニコニコ動画は、「MAD」と呼ばれるアニメなどの動画コラージュが盛んだったり、誰かが歌った歌に勝手にPVを作ったりと、マッシュアップ作品が多い動画サイトです。そのマッシュアップ文化の影響を強く受けているニコ技では初音ミクやアニメなどを中心としたネタに合わせた作品を作る。また、誰かの作品に対する返歌としての作品を作ることが多いのが特徴です。

そんな「ネタもの系」の作品・作者が集まるイベントがNT京都です(NTはNicoTECHの略)。出展者の数は、70〜80組程度と、Maker Faire Tokyoに比べればかなり小規模ですが、2008年から継続して人気のある展示交流会です。また、京都だけでなくNT名古屋・NT金沢など各地で派生のNT○○が実施されています。

ちなみにMTM01(Make: Tokyo Meeting、Maker Faireの前身)の開催も2008年ですが、NT系イベントの開催の方が後です。MTM01にニコニコ技術部として参加した時に、「MTMは面白いから自分たちでもやりたい」と言い出したのがはじまりでした。

展示会を「作る」ことを楽しむ

このように、MTMがきっかけではじまったNT京都ですが、Maker Faire Tokyoの「地方コピー」を目指しているのではありません。そこにはニコ技らしさがあります。ニコ技発祥の地であるニコニコ動画は、しばしば「終わらない学園祭」と評されていました。終わらない学園祭について知りたい方は、アニメ映画「うる星やつら2〜ビューティフルドリーマー〜」を見ることをお勧めしますが、一言でいうと、形としてはお客・観客へのサービスの提供を目的としている行為の真の目的が「その作業自体を楽しむ」ことになっているということです。私自身も学生時代に技術系のサークルに所属し、毎日が学園祭前日のような生活をしていました。しかし、社会人になるとそういう場は意外とありません。工作系の作品を一人で作り、時々動画で投稿していました。そんな時に久しぶりにMTM01というイベントで展示を行って、おっさんになっても現物展示は楽しいと再確認しました。そこからニコ技らしく派生していったイベントがNT系イベントなのです。

ここで、簡単に出展者の当日の流れを写真とともに追ってみましょう。

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10時:設営開始。細かい展示レイアウトの修正は設営日に来た出展者が自分で決めます。自分で何かを変更するだけで、居心地の良いブースになります。

15時:ティーブレイク。各地の変わり種お菓子をつまみまながら近況報告。次のMaker Faire Tokyoに出展する? などと言ったこともよく話題にあがります。

16時:内覧会+10秒コメント撮影。この時間までに設営が終わっている人の作品の内覧会を行います。出展者同士なので前置きなしの単刀直入な説明と質問とネタが飛び交います。同時に10秒で作品を説明する動画を撮影します。

21時:若者はピザパーティ、中年は酒パーティ。そしてみんなで星空観測会やってみたりもします。


10秒コメントの例

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10時:展示開始。慣れた出展者は午前のうちに他の出展者の作品を見に行きます。NT京都では「隣組」が設定されていて、隣組の人同士が交代で他の人の作品を見に行くことができます。

12時:屋上でのBBQ。出展者およびNT京都をよく知る人が参加するBBQ。腹をみたすというよりも、立ち話をするために寄ってきます。

15時:展示だけでなく、ステージショーやプレゼンテーションもあります。

18時:みんなで撤収・清掃して、打ち上げです。机の片付け、床掃除など指揮担当出展者が割り当てられ、各自が自律的に動きます。

主催者も出展者も無理をしない

Maker Faire Tokyoに比べると出展者がやることが多くなっています。設営もやって、掃除もやって、と大変です。しかし大変なことは悪いことばかりではありません。例えば、壊れた家電を修理することで初めて「自分のモノ」になって愛着が湧くってことがないですか? NT京都もそんな展示会なのです。ある程度のベースはあるけれども、ちょっといじれる。出展者にとって「自分の展示会」なんです。

そして「主催者が無理をしない」ということもその理由の一つです。これは第一回のNT(NicoTECH 高槻 Meeting)の打ち上げで決まった方針です。楽しい展示会なので、各地でみんなが真似して開催するようになると楽しい。しかし主催者が苦労して成り立つような運営では真似ができない。真似しやすいようにできるだけ主催者が苦労しない努力をすべきだと。

さらに主催者が無理しないという方針と同じように、出展者も無理し過ぎないという方針もあります。その一つがカンパ制度です。NT京都では各出展者が作品と一緒にカンパ箱(チップボックス)を置くことを推奨しています。多くの場合、見学者より出展者のほうが遠方から来ていて、高い交通費・輸送費を出しています。娯楽としてやっているとはいえ、地味に出費が効いてきます。そこを自然に助け合える仕組みとして、強制ではないものの、カンパ制度を根付かせようと思っています。

さらに、1/1スケール戦車や等身大初音ミクなどの大きな作品に至っては、事前にある程度カンパが集まるかどうかわからないと出展すること自体、「怖い」ものがあります。そこで事前にNT京都のサイトで事前カンパを募る活動もしています。

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NT京都ではこのような金銭面で「無理をしない」という策の他に、展示の説明でも無理をしない方針を打ち出しています。それが「隣組制度」です。NT京都の出展者の半数は一人で展示している人です。朝から晩まで一人で展示するのは大変です。せっかく来たのだから、他の作品もちょっとは見たい。だからといって「休憩中」の札だけかけて不在なのは見学者から見てちょっと残念です。そこで隣組制度ではおよそ3~5人で一つの組を作って展示を行います。隣組のうち必ず一人は展示のために残り、自分以外の作品も一言程度説明します。込み入った説明になると、本人でないと無理ですが、休憩中の札よりはかなり「マシ」です。このようにマシな状況が担保されると、出展者がちょっとだけ気軽に席を立つことができます。最低一人は残るという義務を与えることで、逆に一人残れば出て良いという権利を得た気分になれる制度です。残念ながら、全員が活用しきれているとは言えませんが、かなりの数の出展者がこの制度を活用して屋上のBBQをつつきにやってきています。

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最後に

Maker Faire TokyoがあるからNT京都は必要ないんじゃないだろうか? そう思ったことも確かにありました。しかしNT京都はNT京都なのです。出展者の中には「Maker Faire Tokyoに出すのはハードルが高いけど、NT京都なら」というように大きな展示会へのステップとして捉えている人もいれば、Maker Faire Tokyoではがっつり展示して、ホームのNT京都ではゆったり展示するという人もいます。出展者にとっての価値は様々です。小さな展示会でもソレを楽しむ人がいれば価値があるのです。貸会場を借りる程度なら大したリスクはありません。これを機にあなたの思う展示会を開いてみませんか? 会議室を借りたオーソドックスな展示会でもいいですが、例えばMaker Faier Tokyoの夜にクラブで光り物をメインに踊る、Aki Partyというイベントもありますし。逆にゆったり落ち着いて、バーでウィスキー片手ってのも面白そうじゃないですか?

P.S.
記事では取り上げませんでしたが、屋内だけでなく神社境内も使っています。なかなか京都っぽくていいですよ。写真は境内の能舞台で実演するヒゲキタさんの3Dプラネタリウムです。

ntkyoto_keidai

再び編集部から:今年のNT京都の日程、会場は以下になります。

・日時:2016/3/20(日)9:30〜16:30
・場所:西院春日神社内 春日幼稚園(京都市右京区西院春日町)
・参加費:無料/チップ制(投げ銭歓迎)

詳しい内容や、参加の注意点(上履き、靴袋持参など)はhttp://j.nicotech.jp/ntkyoto2016を参照してください。ちなみにこのサイトでは、コメント欄を使った出展者同士の連絡なども見ることができます。