2016.08.29
ロボットがタトゥー業界の未来を背負うのか
最近公開されたこのビデオでは、人の脚にロボットがタトゥーを彫っている。これは、Appropriate AudiencesのJohanとPierreとAutodeskのPier9の共同事業だ。JohanとPierreにとっては、これは初めてのロボットタトゥーの試みではない。以前にも、ハックしたMakerBotにタトゥーマシンを接続して、人の体にタトゥーを「プリント」する実験を行っている。それがどんどん洗練されてゆき、下のビデオにあるような性能の高いものに進化した。しかし、彼らがAutodeskと手を組む前は、そして上のビデオに登場する工業用ロボットを導入する前は、タトゥーが彫れるのは平らな部分に限られていた。.
工業用ロボットのバージョンは、単純な渦巻を彫っているが、これはちょっとミスリードだ。シェーディングや複雑な形状が描けないのではないかと思われてしまう。しかし、彼らのVimeoチャンネルのビデオを見ると、このバージョンはMakerBotをハックしたものと違い、よりクリエイティブなスタイルが彫れるように多くの進化を遂げている。
タトゥーの未来について話す前に、下のSmarter Every Dayのビデオで、タトゥーがどのようにして彫られるのかをまず知ってほしい。これはすばらしいチャンネルなので、購読するといいだろう。
未来はロボットがタトゥーを彫るのか? おそらく。ただし全員ではない。
現実を見てみよう。タトゥーアーティストに彫ってもらうことがどれほどロマンチックだったとしても、たいていの人は安くて品質の高いタトゥーマシンを選ぶだろう。簡単で高性能で(私たちの夢の予測によれば)写真のようなリアルなタトゥーが彫れるとあれば、それを超えることは難しい。しかし、この未来の前にはいくつかの問題がある。
検査と規制の問題
検査と規制について、まだロボットタトゥーに関するものが何もない。Googleでタトゥースタジオの検査チェックリストを検索すると、土地によって実際の項目が異なるが、そのほとんどが、簡単な衛生上の条件を満たしているか、記録をつけているかだ。そのリストを見ても、機械を使って彫ってはいけないとは言っていない。私は、間もなくタトゥーを入れる場所が適切かどうかを検査されるようになるという記事を見つけた。それでも、ロボットをそれに従わせることも可能だ。
その一方で規制の問題がある。工業用ロボットの場合、工場に置かれていることが多く、そこでは従業員の安全に関する多くの規制が存在する。しかし、人間に対して工業用ロボットを使うことに関する公的な規制は見つけることができなかった。操作する側の安全に関するものばかりだ。
これら2つの法律がまだ存在しないからといって、未来もずっとないとは言えない。タトゥーロボットが多く普及するようになれば、規制が現れる。もちろん、そのころには業界にストップをかけられない状態になっているはずだ。
タトゥーロボットはまだ「アホ」で高価なので時間がかかる
自動化されたタトゥースタジオやタトゥー自動販売機が今すぐ現れるわけではない。それにはいくつかの理由がある。ひとつは、それほど大規模に展開する動機がないことだ。現在はいくつかのマシンが存在する。愛好家によるハックした作品やプロトタイプだ。おそらくそのほとんどは、JohanとPierreが上のビデオで公開しているものだ。マシンはまだ制約が多い。美しいシェーディングはまだできない。線が外れてしまったときに停止してくれない。このビデオの段階に至る前は、肌の高低にも対応していなかった。また、人が動いてエラーが出たときのために、ずっと人が監視していなければならない。タトゥーアーティストは、彫っている間、いろいろなことに気を遣っているのだ。美しいパターンをトレースするように見せるのは簡単なことだ。しかし、皮膚は複雑なキャンバスだ。アーティストたちは作業を進めながら肌を観察し、修正し、調整している。
だからと言って、ロボットがまったくクールじゃないというわけではない(自分でもひとつ作ってみたいと思っている)。タトゥーを入れたい人たちが行列を作ることはまずないだろう、ということだ。あったとしても、ロボットの彫り師が物珍しいからだ。
こうしたシステムの研究開発が十分に進んで、非常に細かいタトゥーが、安定して、安い価格で彫れるようになったとしたら、そこに新しい市場が生まれるかも知れない。そうした研究開発には多額の金がかかる。誰がそれに金を出すのだろう? 誰が自動タトゥー機に出資したいと思うだろう? 今は誰もいない。誰かが時間と労力をつぎ込んで新しいものを作るまでは。タトゥーアーティストを雇うより安くてより効率的になるなものをだ。
アーティストには価値がある。だから常に彼らはそこにいる。
街にタトゥーブースができて、絵を記録したチップを差し込むと、インクジェットプリンターのように肌にタトゥーが彫られる。そんな風になったら、大勢のタトゥーアーティストは廃業してしまうだろう。また、質の悪いタトゥーはずっと少なくなるだろう。しかし、腕のいいアーティストも同様に苦しむことになる。とは言え、業界全体が機械化されてしまうという話ではない。
多くの人にとって、タトゥーアーティストは、その人自身が総合的なアート作品だ。絵画と同じだと考えると、プリントされたものとオリジナルとどちらがいいだろう。私はどちらのタトゥーでも構わないが、アーティストの手によるオリジナルを彫ってもらえれば、かなり自慢できると思う。
不審に思っている人のために言うが、私もタトゥーを入れている。あの偉大なJason Jonesの作品だ。
上のビデオは、私のプロジェクト、Controlled Chaosシリーズのために準備したものだ(今は休止中だが、いつか復活させるよ!)。
[原文]