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2017.06.06

支援技術ハッカソンで作られた素晴らしい15の介助技術

Text by Oded Shorer
Translated by kanai

Tikkun Olam Makers(ティックン・オーラム・メイカーズ)は、4月21日から22日にかけて、ブルックリンの海軍工廠で、Accessibility Makeathon(支援技術ハッカソン)を開催した。そこで誕生した作品を紹介しよう。

都市環境のための軽量なポータブル斜路

課題

Rachelは、電動カートでマンハッタンを動き回っている。彼女がチームに要求した課題は、都会での移動性を高めるための、持ち運びが楽で、軽量な斜路の開発だ。

解決策

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チームは、軽量な折りたたみ式の斜路を製作した。街中での電動カートの使用に耐えられる強度がある。コンパクトに折りたためるので、Rachelの脚の間に挟んで、ハンドバッグのように持ち運べる。重量は450グラム以下。縁石や店の入口の段差を乗り越えることができる。同じような問題を抱える人たちも、Rachelのこのプロトタイプを利用すれば、都市計画で見過ごされた場所にも行けるようになる。


自傷行為を予防するエネルギー検知機

課題

スミスマゲニス症候群(SMS)患者であるBenのように、自傷行為に苦しむ人たちがいる。SMS患者は、頻繁に感情が爆発して自傷行為に走ることが多い。そこで、自傷行為に繋がる感情の爆発を探知して、和らげ、抑える方法を開発する。

解決策

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チームはスマートウォッチをハックして、Benの状態を監視できる基本的なセンサーを埋め込んだ。心拍数の増加、不規則な体の動き、筋肉の収縮といった苦痛の兆候を検知する。すると、スマートウォッチは、Benに、感情的、肉体的な状態に関して、音声で簡単な質問をする。Benは、左右にスワイプすることで、自分の感情のレベルを答える。助けが必要な場合、または30秒以上反応がないときは、スマートウォッチから警報が鳴り、介助者に彼の状態を知らせる。それと同時に、彼を落ち着かせるためのアプリが起動する。


ウェイトマシン用の適応技術

課題

ウェイトマシンは、どれも全身が健常な人のために作られている。27歳のNijは、低酸素性虚血性脳症を患ったために、右半身全体の筋力が極端に落ちてしまった。全身を使うウェイトマシンは、彼には使えない。腕も十分に伸ばせないため、器具をしっかり握れない。そこで、ウェイトマシンやジムの運動器具が使えるようにする適応技術を開発する。

解決策

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チーム「Bioj4ck」は、二頭筋から手にかけて装着し、肘の伸展を助け、筋肉活動を強化する装置を開発した。これによりNijの腕は完全に伸ばすことが可能になり、可動範囲が広がる。同時にチームは、ダンベルやバーを使うときのために、手首を強化して、しっかりと手で握れるようにするグローブも開発した。


杖の滑り止めとハンガー

課題

19歳のReneeは、先端にゴムが付いた松葉杖で歩いている。しかし、雨や雪の日の大理石や、モップをかけたばかりの床の上ではよく滑る。また、公共の場所で腰を下ろしたときに、杖を横に置くことになるが、立てておくのは難しく、よく倒れてしまう。そこで、杖の滑り止めと、公共の場所で困らないように杖を留めておく軽量なハンガーを開発する。

解決策

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チーム「Yes We Cane」は、滑り止めに2つの方法を考えた。1つは、タイヤのパターンを模した杖の先端を3Dプリントするという方法、もう1つは自転車のタイヤを杖の先端に取り付けるという方法だ。これで滑りやすい床の上でも安定する。もう1つの課題は、3Dプリントで安価に作れる、杖に取り付ける形のクリップだ。これで、レストランの椅子などに杖を固定できる。

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単ボタン・リモコン

課題

Dwightは四肢マヒのMakerで、地元のMakerたちと単ボタン式のリモコンを開発している。課題は、通常のリモコンに代わるリモコンを作ること。通常のリモコンのボタンは密集しすぎていて、手がうまく動かせない人には、テレビのチャンネルを変えるだけでも、一度に複数のボタンを押してしまう。

解決策

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チームは声で操作するリモコンを開発した。Dwightのような手が不自由な人でも、テレビのチャンネルを変えたり照明を調整できるようになる。また、手がうまく動かせない人にも使えるよう、1つの大きな選択ボタンが使われている。これによりDwightは人の手を借りることが少なくなるだろう。また、このプロトタイプには、他の家電品を操作できるようにする可能性もある。

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起立を支援するコンパクトな器具

課題

進行性の神経筋疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)を患う16歳のRossは、長距離を歩いたり、階段を上ったり、車を乗り降りするのが難しい。座った体勢から立ち上がることも困難で、机に寄りかかって、自分を手で引っ張り上げるという方法も、なかなかうまくいかない。そのため、学校での授業後は、人の手を借りなければならない。

解決策

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チーム「Take a Seat」は、Rossが椅子から立ち上がるのを支援する2つの器具のプロトタイプを作った。1つは、ポータブルなiPadのドッキングステーションで、立ち上がるときに体を支える台の役目も果たす。もう1つは、床に取り付けるコンパクトな器具で、そこに杖を固定でき、立ち上がる際に、さまざまな角度で体を支えることができる。


小児患者の自立性と食事を助ける器具

課題

9歳のUrsulaは低緊張型脳性マヒを患っている。運動企画障害と口の動きに問題があり、顎関節も硬直しているために大きく口を開けることができず、舌も左右に動かすことができない。

解決策

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チームは、しっかりと握れるように持ち手をカスタマイズでき、先端もUrsulaにとって最適な角度に調整して、食事を口に運べるようにできるスプーンを開発した。また、控え目ながら、魔法の杖のように見えるデザインも施した。

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軽量な電動車椅子

課題

市販の電動車椅子はとても重くて価格も高い。脳性マヒを患う6歳のRyanは、自由に歩くことができない。そこで、電動式で、軽量で、持ち運びができる柔軟性の高い車椅子が欲しい。

解決策

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チームは、安価で、軽量で、持ち運びが楽にできて、電動式の「楽しい動く椅子」を開発した。ホバーボードをハックして、ベビーカーを電動化したのだ。操作はジョイスティックで行える。これでRyanも自立でき、外へ出かけられるようになる。


階段を上れる歩行車

課題

アパート暮らしの高齢者であるRobertaは、歩行車を持って長い階段を上らなければならない。そこで、楽に階段を上り下りできる軽量な歩行車が欲しい。

解決策

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チームは、Robertaの歩行車に、小さな三輪ホイールを追加し、アパートの4階まで楽に上がれるようにした。さらに、伸縮式のドアストッパーを作り、ドアの出入りも楽にした。ドアストッパーは軽くてコンパクトなので、歩行車の中に入れておくことができる。


障害児のためのスイッチで動くおもちゃ

課題

現在市販されているスイッチ式のおもちゃは種類が少なく、全体に高価で、耐久性が低い。他の子どもたちが持っているのと同じ、人気のおもちゃで遊べる通常の環境を切望する、特別な状況にある子どもを満足させるには、少し物足りない。課題は、スイッチとおもちゃを無線でつなぐこと。スイッチとおもちゃをつなぐアダプターは市販されているが、有線で壊れやすく、ときには危険を伴う。また、介助者が簡単に電池交換できる構造も必要だ。

解決策

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Blythedale Children’s Hospital(ブライズデール・チルドレンズ病院)のスタッフは、無線式で、2つのボタンでおもちゃを動かすことができる装置を開発した。また、おもちゃのいろいろな機能を操作できる装置も開発した。

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カスタマイズ可能なリングスプリント

課題

障害を持つ子どもは、指の関節が逆に曲がるなど、異常な形状になってしまうことが多い。指の状態が正常であれば、手の動きも改善される。リングスプリント(指輪型固定具)は、指の姿勢を整えるための小さな装具だ。市販されているが、子どもの指に合うものが少ない。また、何度もサイズ合わせをする必要がある。頑丈な銀製のリングスプリントは、かなり高価だ。課題は、安価な指輪型添え木を自由なサイズ、色、形状で作れるプラットフォームを開発すること。

解決策

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チーム「Ring Bling」は、障害をよく知る人たち(ブライズデール・チルドレンズ病院の専門家)と協力して、理学療法士が病院内でリングスプリントをカスタマイズし、3Dプリントできるようにするためのデジタルプラットフォームを開発した。今回作られたRingBling.orgで患者の手のサイズをインプットすると、それに適合したリングスプリントのファイルを入手でき、3D プリントができる。素材、色、デザインも選べる。

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未就学障害児のための椅子

課題

障害児の多くは、真っ直ぐに座った姿勢を保つことが難しい。しかし、適正な支持機能を持つ椅子があれば、目や手が使えるようになり、学習や遊びが可能になる。ブライズデール・チルドレンズ病院の理学療法士チームは、未就学児が適正な姿勢を保てる、調整可能な椅子の開発に挑戦した。

解決策

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チームは、Islaのような未就学障害児の胴、腰、頭を支えて姿勢を保つための、軽量で持ち運びができる椅子を開発した。必要なときには、背を倒すこともできる。これによって子どもたちは、学校でも家でも、より活動的に遊べるようになる。

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アンジェルマン症候群患者の首反らしを止める器具

課題

11歳のAliは、歩いているときに頭を後ろに反らす症状があり、本人も、その後ろを歩く介助者もバランスを崩してしまうことがある。また、突然体が不規則に動く傾向があり、たとえば、手に持っているカップを落としてしまったりする。課題は、Aliが頭を反らせるのを防ぐ装具と、手に持ったカップを落とさないようにする器具を開発すること。

解決策

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チーム「Ali’s Angels」は、Ovid Therapeutics(オービッド・セラピューティクス)社と協同で、軽量で装着可能な歩行用システムを開発した。これには、頭を後ろに反らすのを防ぐパッドが付いている。また、分厚いが感触のよいゴムバンドを使って、Aliの手からカップが離れないようにするグローブも開発した。


多目的な車椅子用バッグ

課題

利用者本人が使いやすいバッグが付属している車椅子は少ない。バッグが付いていても、たいていは背後にあり、それを使うには介助者の助けが必要になる。課題は、車椅子の利用者であるAnthonyが自分だけで使える、自由に配置できるバッグを開発すること。

解決策

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チームは、Anthonyが自分だけで電子機器や薬などが出し入れできる、折りたたみ式のプラットフォームを開発した。このバッグは、車椅子の脇にしまうことができ、自分で簡単に取り出せる。また、表面はしっかりとしたトレイ型の板になっていて、その上で物を書いたり、iPadを使ったりもできる。反対側にはいくつものポケットがあり、いろいろなものが収納できる。


着替え介助ロボット

課題

先天性多発性関節拘縮症を患う4歳のJojoは、関節が変形し、筋肉量も最低限しかないため、日常の活動が大変に難しい。課題は、Jojoが自分一人で着替えができる介助装置を作ること。

解決策

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チームは、どんな椅子にでも取り付けられる、機械式の着替え介助装置を開発した。モーター式のアームがシャツを広げて、腕を通しやすい位置に持ってきてくれる。その後、着替えが完了する位置までシャツを移動させる。この装置は、Jojoが成長するのに合わせて、調整することができる。

原文