Fabrication

2013.10.02

デスクトップ製造革命を生きる

Text by kanai

maker faire robots

(日本語版編注:原文は9月21日、22日のMaker Faire New Yorkの前に掲載されました)
次の火曜日の早朝、私は飛行機に飛び乗り、ニューヨークで「Maker Week」と呼ばれることになる時間を、World Maker Faire New Yorkを始めとする数々の楽しいイベントを担当するMAKEの編集チームといっしょに過ごす。すごいことになるよ。クイーンズに日帰りできる範囲に住んでいる人は、ぜひ参加してほしい。想像をはるかに超えるほど、新しいものを見て、学ぶことができる。作ることに対する大きな刺激を土産に帰れるはずだ。

今年のイベントでは、3Dプリントが大きな目玉になる。じつは去年もそうだったのだが、3Dプリント技術の熱は指数関数的に上昇している。たくさんの企業が多くのマシンを持ち寄って、Makerだからこそ実現した、さまざまな発達レベルのいろいろな技術を披露してくれることになっている。

MakerBotが3Dプリント業界の大手Stratasysに買収されたことで、この市場もわずかに成熟に近づいたと感じられるものの、まだまだ根性のある小さな新興企業が、市場に食い込もうと、新しい工夫を凝らした製品を投入してきている。この世界はまだまだ始まったばかりだ。数年後にどうなっているか、誰にも予想がつかない。

だが、この状況はどこかで見たような気がする。我々が目にしているのは、1980年代のデスクトップパブリッシング(DTP)革命のリメイクのようだ。ただ今回は、インターネットとMakerムーブメントという「捻り」が加えられて、開発プロセスが加速されている。

覚えてない人のために解説するけど、80年代までは、美しい文字組みやグラフィックの作業は手で行うものだった。おもに、写真、ライトテーブル、印刷機などが使われていた。そして、最新のコンピューターとソフトウェア(とくにMacとPostscriptフォント、それに最初のレーザーライター)の登場により、クリエイティブな作業がデジタルでできるようになり、ライターやデザイナーが、書籍やビラや広告資料などを自分で作れるようになったのだ。写真を切り抜いてノリで台紙に貼るといった手間もなく、クリックとタイプでできてしまう。それは、印刷製品のデスクトップ・プロトタイピングだった。

ここでは、プロトタイピングという言葉に重要な意味がある。プロトタイピングとは、再検討や修正を数回繰り返すことだ。プロトタイピングは、最終的な製品を大量生産する前の段階だ。

DTPの場合は、印刷物のプロトタイピングを行っていた。もちろん、レーザープリンターで高品質の校正までは出せたが、大量に印刷する段階になると、以前と同じく、業務用の印刷機を備えた大手の印刷会社に依頼しなければならなかった。現在、自分のオフィスにある機械でどこまでできるようになったかを見ると、隔世の感がある。高品位なカラーレーザープリンター(通常はスキャナーとコピーとの複合機)は、DTPで作った原稿を大量に、高画質で印刷できる。だが今でも、大手印刷会社に発注したほうが効率的な場合がある。

このパターンは、デスクトップ製造革命にも見られる。まず、3Dプリントは、高速プロトタイピングとも呼ばれているという点を考えてほしい。MakerBotやAfiniaでの印刷は、最終的な製品にすることは前提としていない。あくまで開発段階での確認用だ。デスクトップ3Dプリンターを使ったプロトタイピングは、80年代のDTPで印刷物のプロトタイピングを行っていたのと同じことだ。そして今、私たちが買えるマシンは、驚くほどクールなものだが、洗練度や出力の品質からすれば、初期のレーザープリンターやインクジェットと同じレベルにある。

ものとは、どんどんよくなるものだ。

デスクトップ製造に関して、もうひとつ言っておきたいことがある。これは3Dプリントに限ったことではない。画像用のスキャナーは非常に高度に発達し、DTPの能力を高めた(大変に普及しているし、プリンターと一体化もされている)が、3Dスキャナーも、デスクトップ製造に新たな世界を開こうとしている。MakerBotはMaker Faireで新しいスキャナーを発表すると見られている。ほかにもいくつかのメーカーからスキャナーが発表されるだろう。3Dスキャナーと3Dプリンターを組み合わせたもののクラウドファンド・キャンペーンも見られるようになった。ゼロックスのコピーマシンの3D版が現れる日も近いだろう。

だが、それで終わりじゃない。プロトタイピングは3Dプリントだけでなく、切削やエッチングも含まれる。今や、デスクトップサイズのCNCマシンも登場している。3DプリンターとエッチャーとCNCが一体化されたマシンのKickstarterプロジェクトなんかも現れた。すべてが同時に発達している。DTPで10年かかったところを、すでに2年で追い越してしまった。それが実現したのは、Makerの関与があったからだ。また、インターネットによってアイデアを簡単に共有できるようになり、開発サイクルが格段に短縮されたこともある。デスクトップ製造ハードウェアとソフトウェアの世代交代は、スマートフォンの世代交代と同じぐらい高速に進んでいる。

もちろん、これはあくまで、製造ではなくプロトタイピングの話だ。デスクトップ製造マシンは、アイデアの洗練に役立つが、高品質な最終的製品は、大手の印刷サービスに頼らなければいけない(業務用マシンを自分で購入するという手もあるが)。そうした考えに基づくならば、MakerBotや3D Systemsの製品を有効に使うことができる。

来週のWorld Maker Faire New Yorkへお越しになるみなさんは、3D Printer Stageでのプレゼンテーションや、出展されるさまざまなプリンター、スキャナー、レーザーカッター、CNCなどを見て、それらを歴史的な文脈に当てはめてみてほしい。私たちは革命を目の当たりにしている。30年前、私たちは自分だけの印刷所を手に入れた。今、新たな大変革により、私たちは自分だけの工場を手に入れるのだ。

私たちがクラウドファンド基金を更新してから少し経つ。また来週にはMaker Faireが控えている。次回の基金獲得に向けた投票合戦は激しくなるだろう。そんなわけで今週は、MAKEが支援するKickstarterページに掲載したプロジェクトを紹介しよう。よく見てほしい。なかには間もなく締め切りを迎えるものもある。いけると思ったものがあれば、支援をお願いしたい。では、ニューヨークで待ってます!

– Ken Denmead

原文