2017.11.17
米TechShop破産申告により廃業へ(日本語版注:米TechShopと資本関係のないTechShop Tokyoは継続して営業)
日本語版編注:TechShop Tokyoを運営しているテックショップジャパン株式会社からは、「米国TechShopと同社の間に資本関係はなく、米国TechShopの破産手続によって財務的な影響は受けないこと。TechShop Tokyoは通常どおり営業し、会員は引き続き「TechShop Tokyo」の施設・設備を利用できる」ことが発表されています。
英語版編注:今朝、TechShopのCEO、Dan Woodsから以下のメッセージを受け取った。営業中のすべてのTechShopを閉鎖するというのだ。我々は、TechShopのいいときや大変なときを数年間にわたって追いかけてきた(両リンクとも日本語版記事)。コミュニティは、メイカースペースのビジネス展開版としてTechShopに期待をかけていたのだが、実験は終わったと言わざるを得ない。TechShopの何が有効で、何がダメだったのかを振り返り、過去に学ぶことで将来につなげよう。
TechShopの全店舗が11月15日をもって閉店することを告知しなければならないのは、痛恨の極みです。我々は、連邦破産法第7章に基づく破産申告を行いました。会社の負債を埋めて、新しい方針を打ちだして投資を求めるといったこの数カ月間の努力も実らず、もう資金が底を突いてしまったのです。もう打つ手がありません。
私たちは、アメリカ国内の10店舗と小規模な企業グループを11月15日の午前8時をもって閉じることにしました。海外のTechShopに関しては、すべて海外ライセンスの保有者が運営しており、このまま継続されます。会員のみなさんには、管財人との調整が付き次第、私物の回収などの日時を改めてお知らせします。
これ以上、延命することはできません。きわめて長い間、私たちは現金がほどんどない状態で営業してきました。そのため、インストラクターや取り引き業者への支払いを、大変に不本意ながら、遅らせることになりました。しかし、数週間は遅れたものの、少なくとも全員に支払うことはでき、工房を開いておくことができました。多くの人たちに直接話をしてきましたが、私はこのような状態での営業は好ましくないと考えていました。私たちは、いつの日にか、大きなライセンス契約が交わされて明日の光が見えることを期待して、できる限り長く営業を続けたいと思っていましたが、それは叶いませんでした。現在の現金の状況は、そして従業員、インストラクター、会員へのしわ寄せは、受け入れがたいものになっていたのです。
先週は、なんとか連邦破産法第11章での破産申請をする道を探りました。それが通れば、債務を整理し立て直すことが出来たかもしれません。しかし、そのためには現金が必要となり、結局、従業員、インストラクター、家賃、光熱費、保険といった部分に、さらなるしわ寄せが行くことになります。早い話が、お金がないのです。給料が支払えるだけの現金を持たずに、インストラクターや従業員や契約者たちに働けとは言えません。非常に残念ですが、唯一残された道が、連邦破産法第7章だったのです。
大変に無念な状況になってしまいましたが、TechShopがこの10年間に、会員やコミュニティに与えた大きなインパクトは、忘れないでいただきたいと思います。
私は、「Make:」誌に在籍していたときに、初めてファウンダーのJim Newtonに会いました。私たちは2006年、最初のMaker Faireを立ち上げました。小さなMaker用のテーブルで、彼はMaker Faireが開かれた週末を使って、オープンで誰でも夢を作ることができるコミュニティ型のメイカースペースという構想を語り続けました。その年の終わりに、Jimは最初のTechShopをメンローパークにオープンしました。そこは、中古の機材とワイルドなまでにクリエイティブなMakerたちがすし詰めになったような場所でした。そこではアイデア、運営ノウハウ、人々、コミュニティが急速に発展し、他の街にもTechShopがオープンするようになりました。
TechShopのビジョンの中核は、メイカースペースのネットワーク、会員、カリキュラム、基準、インストラクター、そして新しい技術、製品、仕事、企業を生み出す燃料となる学習でした。TechShopは、このビジョンをほぼ実現しました。
何万人もの若い人たちに、自分をイノベーター、問題を解決できる人、クリエイター、Makerだと自覚させることに私たちは成功しました。私自身も退役軍人ですが、3,000人以上の退役軍人に会員資格を与え、トレーニングを行ってきました。このプログラムによって、退役軍人たちはスキルと経験を身につけ、最先端の製造業界への就職や、起業を果たしています。
TechShopの従業員、投資家、そしてJimは、大いなる結果を生み出したそのビジョン、忍耐、努力を誇りに思ってしかるべきです。そしてTechShopコミュニティは、何万人もの人々や、その周囲の人たちを刺激し、意識を変革し、何万もの新しい雇用を生み出しました。それには正味数十億ドルの価値があり、新しい技術の創造にも寄与しました。その中には、人の命を救う技術もあります。
私たちは、こうした成功を振り返ると同時に、失敗も振り返らなければなりません。完全所有のメイカースペースの営利目的のネットワークは、街の助成金、企業や財団の支援、または会費、訓練助成金、スポンサー付きのプログラムなしには存続できません。このような資金は、非営利団体を対象とするのが通常で、営利目的の企業が受け取れることは希です。私たちが方針転換を打ちだしたのは、そのためです。それは、私たちのノウハウ、経験、システム、プロセスを活用するというものです。TechShop 2.0の目標は、非営利団体、企業、大学に、それぞれ独自のメイカースペースを立ち上げ、運営してもらうことです。私たちは、メイカースペースを所有するビジネスから脱却して、他の人たちにメイカースペースを作り運営してもらうことを目指しました。
思えば、私たちはあまりにも長い年月、あまりにも多くの資金を、間違ったビジネスモデルに費やしてきました。しかし、この10年間で私たちが成し得たことには非常に大きな価値があったと信じています。私は、私たちの会員、従業員、パートナー、そしてMakerコミュニティ全体に対して、TechShopの体験から学んで欲しいと考えています。世界はメイカースペースを必要としているのです。
Jim Newton、TechShopの従業員、会員、そして投資家のみなさんは、それぞれの経験を活かして前進していただきたい。その中には、また力を合わせて何かを行う人たちも多いことでしょう。TechShopの功績によって、世界はずっとよくなります。
私は決して、従業員、会員、信頼してくれた投資家、お金を貸してくれた人たちへの言い訳をしているのではありません。TechShopへのみなさんの信頼、尽力、協力に報いる方法があるなら、私はそれを実行する覚悟があります。
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