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2020.10.04

Maker Faire Tokyo 2020 Day 1レポート― 話題の外骨格恐竜、自宅粒子加速器から電飾サンバ衣装など驚きの作品がたくさん!

Text by Yusuke Aoyama

Maker Faire Tokyo 2020が今年も開幕した。初日の会場から目についた作品を写真で紹介する。

外骨格恐竜

会場入口からすぐのところに鎮座しているのはヒゲキタさんによる「外骨格恐竜」。プラ段ボール製で、内部に人間が入って動かすことができる。子どもたちは大人気で、会場を練り歩くときは、いつも子ども達がゾロゾロと後ろをついていく様子が見られた。

手作りバーチャル・ワールド

演劇のセットのようなブースは、ズームス・ラボによる「手作りバーチャル・ワールド」。街角の風景を描いたパネルが、数枚に分割されて配置されており、ある視点から見ると立体的な風景に見えてくるというもの。広い通路に面していることもあって、フォトスポットのようにバーチャル・ワールドに入り込んで写真を撮る人が多く見られた。

気軽に作れる自宅粒子加速器

昨年、自作の粒子加速器「サイクロトロン」で大きな注目を浴びた高梨さん(参考記事:Maker Faire Tokyo 2019レポート #1|自宅のリビングで作った「粒子加速器」に度肝を抜かれる)、今年は自宅粒子加速器愛好会として参加。シンプルで低コストを目指した電子加速器の試作品を愛好会のメンバーたちと展示している。

学校で加速器を作っちゃおう

自宅粒子加速器愛好会の隣に出展しているのは、実際に大型の粒子加速器を使った研究を行っている高エネルギー加速器研究機構の加速器科学イノベーション推進室・SOKENDAI。加速器のガチ勢がMaker Faire Tokyoに参加した理由は、高専などで加速器を制作するワークショップを通じて、教育や啓蒙を行う「AxeLatoon」というプロジェクトのアピールのため。自宅粒子加速器の高梨さんも発起人のひとりとなっている。

宇宙栽培キット with 見守りロボ

紫色の怪しげな光を放つ黒い箱は、DMC宇宙農業チームの「宇宙栽培キット」。月面で人が暮らす将来のために、月の表面を覆う砂礫(レゴリス)を使った作物栽培を行う循環型栽培システムの開発を目指しており、展示しているのはそのプロトタイプ。

農作業の負担を減らすドンキーカー

過去にはAIをつかった「キュウリ選別機」を出展したworkpilesは、農作業をサポートする自動運転ラジコン(ドンキーカー)のデモを行った。このマシンも、画像認識によるディープラーニングで、対象を識別して雑草を拾ったり、植物の生育を記録したりし、人間の作業を減らすことを目指している。

小型電動クローラキット&ねこ車電動化キット

スタートアップを支援するMAKERS UNIVERISTY ものづくり部では、そのなかから生まれたプロダクトをいくつか展示。モビリティ技術に特化したCuboRexは、動力源まで含めて完全にユニット化した電動クローラ「CuBase」と、工事現場や農作業で使われる手押し車(ねこ車)を電動化するキット「E-Cat kit」を展示している。

お米の品種判定装置

AIによる画像認識はMaker Faireでおなじみの技術だが、「お米の品種判定装置」はおそらく初登場。農業や薬品の測定・分析装置を開発する企業の有志が集まったKETT AI 研究会が開発したもの。これまで米の品種を正確に判定するためには、DNA検査をするしかなかったが、画像認識ならば低コスト化とスピードアップが実現する。現時点では、品種によって100%近いものから85%程度のものまでばらつきがあるが、学習データを増やすことで精度向上を目指しているという。

また、同ブースでは自動的に指定した歩合まで精米してくれる「一升瓶精米機」も展示。一升瓶に入れた玄米を木の棒で突く昔ながらの「瓶づき」を人力ではなくモーター駆動にし、画像センサーによって米の白さを検知することで精米歩合を判定するというもの。ちなみに精米には12時間ほど掛かるそうだ。

VRで実現した「どこでもドア」

make道場が展示したのは、小型の段ボール製ドームの内側に映像を投影することで、VRゴーグルや3Dメガネなどなしで全天周映像によるバーチャルトリップを体験できる「どこでもドア」。ニューヨークやロンドンから月や火星まで好きなところの風景を楽しむことができる。

オープンな「リアルタイムPCR」が普及した未来

久川真吾・まり子のMaker夫婦は、ウイルスなどのDNAを検出するためのオープンなリアルタイムPCRを出展。設計データやソフトウェアをGPLで公開しており、部品代など含めて300ドル程度で制作できる。原理的には新型コロナウイルスの検出も可能で近日中に実証テストを行う予定だという。

漆電脳繭玉「卯辰山のいきもの」

クラフト&デザインゾーンの一角では、ダークルームの代わりに照明を消してできるだけ暗さを演出し、光りものの展示を集めている。そこで、ほのかな光を放っていた「卯辰山のいきもの」は、電子工作と漆というグループのは漆工芸に電子工作を組み合わせた作品。

闇夜で華やかに輝く「LEDサンバ衣装」

電飾サンバProjectでは、その名の通りLEDで光るサンバの衣装を展示。単に衣装へLEDを付けたのではなく、3D CADから宝石の形状の型を作り、レジンにLEDを埋め込んだストーン型LEDを作成するといった工夫により、より強く煌めくサンバ衣装を実現している。

フィラメントを自作して作るご当地マテリアル

3Dプリンタのフィラメントに、変わったモノを混ぜてしまったのはVernacular Lab。コーヒーを入れた後の豆カスや越前ガニの甲羅、ブラッドオレンジなどを混ぜることで、一般的なPLA製フィラメントとは違った質感が生み出されている。生ものを混ぜても大丈夫なのかと思うが、完全に乾燥させ粉末にして混ぜているため、通常のフィラメントと同じように扱えるそうだ。

チキンの首が叫ぶ「SHOUTING PIANO」

握ると変な声を出す黄色いチキンのオモチャを楽器にしてしまったのはtofunology。本来ならば単一のピッチでしか啼かないはずのチキンだが、発声部分をソレノイドで振動させることで、なかば強引に音階を作り出しているそうだ。

オカリナのようなウインドシンセ「AFUUE」

オカリナのようなウインドシンセサイザーを作ってしまったのはOTOONE_DEV。基板を独自に起こし、3Dプリンタで筐体を作り、2年もの歳月を掛けてここまで作り挙げたとのこと。

ピアノ演奏可視化装置「Bright Note」

派手なサウンドやビジュアルで目立つ音楽・楽器系の出展のなかでも、ひときわビジュアルで目立っていたのがWest Gate Laboratoryが製作した「Bright Note」。電子ピアノのキーを叩くたびに、フルカラーLEDの光が大きく動く様子は、曲を弾いているだけなのに音ゲーをプレイしているかのよう。

ソーシャルディスタンスのため余裕を保った会場

COVID-19が収束しないなかでの開催となったMaker Faire Tokyo 2020。会場内の密を避けるため出展数は昨年の半数以下にまで抑えられ、会場の設営もブース間の距離を十分に取っている。

また、会場内に同時に滞在する参加人数を抑えるため、入場チケットも入場時間を指定したものとなっている。それでも、来場者は一様にMakerたちの新たな創作物を楽しみにしていたようで、多くのブースで熱心に話しを聞き、展示物を見つめる人々が見られた。