2023.10.15
昨年よりもさらに熱量が上がってビッグサイトにMaker Faire Tokyoが帰ってきた! 再び現れた魔改造 “モンスター”たち、新たな “自宅で○○” シリーズ、ボトルの中のロボットなど。Maker Faire Tokyo 2023[Day1]フォトレポート
お台場に現れた3体のモンスター
すっかりMaker Faireでもおなじみとなった、NHKの番組『魔改造の夜』の“モンスター”達。今年はAエイチアイとN産が作り出した、3体のモンスターが会場に現れた。
Aエイチアイのモンスターは、電器ケトルベースの蒸気機関で綱引きをする「電気ケトル綱引き」に登場した「スチームパンクビクトリー」の完全体と、ネコちゃんが6メートルの段差を落下しても歩き続ける「ネコちゃん落下25m走」に登場した「ブルーニャンパルス」の2体。「Maker’s Vector-0」(ブースE-02-03)にて展示中。
Aエイチアイのスチームパンクビクトリーは、放送時から改良が加えられた「完全体」だそうだ
汽笛を鳴らすスチームパンクビクトリー
デモでは走行せず、本体を固定したまま車輪だけを動かした
Aエイチアイのブルーニャンパルスには、多くの「かわいい」との声が掛かっていた
N産のモンスターは、扇風機を速く走らせる「扇風機50メートル走」に出場した「旋風-R」だ。「@ち~む+魔改造の夜N産チーム」(ブースM-02-01)にて展示されている。
ちなみに、今回の会場に現れたモンスターは3体のみだったが、番組に出場経験のある「魔の技術者」はメイカー側にも来場者側にも数多く見ることができた。
「旋風-R」には、Rのエンブレムが輝いていた
導電糸で刺しゅうをタッチセンサーに
電気を通す糸「導電糸」を刺しゅうミシンで普通の布に刺しゅうすることで、様々なデザインや形のタッチセンターを作り出す「インタラクティブ刺しゅう」のデモを行っていたのは東京大学 IIS Lab(ブースY-02-03)。導電糸の上に重ねる普通の糸の刺しゅうの厚みを変化させることで、わずかな電位差を生み出し、タッチする場所の検知が可能になっている。
4つの箇所を検知できるタッチセンサーの例。配線は1箇所のみで動作可能
導電糸の上に普通糸を重ねて刺しゅうしているので、さまざまな色や形を表現できる
3Dプリンタ等を駆使した複雑時計たち
からくりすと(ブースD-01-09)では、木材や3Dプリンタを使った、様々な「カラクリ時計」を展示。地球儀をもした球体の中に重量の影響を排する「トゥールビヨン脱進機」を搭載し、世界7都市の時間を同時に表示する球体型世界時計「GEARTH」の他、カメレオンのように四方八方を見つめる目玉の付いた時計、食虫植物「はえ取り草」を模した歯車が口を開け閉めする時計などが展示されている。
球体型世界時計「GEARTH」は、トゥール美容機構を搭載し7都市の時刻を同時表示出来る世界時計
目玉やはえ取り草のようなカラクリを搭載した木製時計達
廃棄するものをクリエイティブの素材に変える
クリエイティブ・リユース研究所(SACHIYO KOJIMA)(ブースD-01-06)では、ハギレや毛糸、ボタンやプラスチック片、何かの部品など、家庭から出るゴミであっても何かを作り出す素材となることに着目して、制作キットとしてパッケージ販売している。廃棄物でも、色や材質、作るものに合わせて取りそろえると、見事な「素材」となって、子ども達の目を輝かせていた。
ハギレなどをパッケージにしたブローチ作成キットは2200円。他にも人形キットや素材詰め合わせなどもある
ブースではリユース素材で作られたサルとオランウータンが出迎えてくれる
大人が身につけられるスマート防犯ベル
Yolni株式会社(ブースY-03-03)は、大人が身につけられるスマート防犯ブザー「Yolni」を開発し、年内の販売を行っているスタートアップ。完成品のデモを行っていたほか、開発途中のプロトタイプや試作品も展示している。
Yolniの最終製品版。シルバーの部分は金属製で、丸いカラーボタンはプラスチックでカラバリも豊富
左上が最初のプロトタイプで、右下が後期のデザイン検討モック。途中の試作品には、重すぎて検証に堪えないものもあったとか
自宅で○○シリーズに半導体製造が登場
「TNKS OZ」(ブースY-01-06)は、半導体デバイスの自宅製造を目指す2人の大学生によるプロジェクト。会場では、高真空装置内での電極作成と、ミストCVD装置によるシリコン基盤上へ半導体膜を作成するデモを行っていた。今後は露光による回路の作り込みも目指しているそうだ。
高真空装置内でプラズマで銅粒子を加速し基板に堆積させているところ
黒い箱がミストCVD装置。上部左側の白い四角の内部にシリコン基板が格納されている
デルタ型ペンプロッタの描線は手書き風味
さまざまな形式の自作小型ペンプロッタを開発しているいしかわきょーすけさん(ブースR03-07)は、新作としてデルタ型のペンプロッタを開発。従来とは機構や制御がまったくことなるため、動かすのにかなりの苦労してており、手書きのような味のある描線となっている。
デルタ型のペンプロッタ。構造、制御ともまだ満足できる出来ではないとのこと
木材と金属でできたコーラスロボット
ナカタニコーイチさん(ブースR-03-03)が作るのは、レトロでエキゾチックなルックスで歌うロボット。すべての構造が黒檀と真鍮で構成され、内蔵するマイコンがモーターと電球とスピーカーを制御しパフォーマンスを行う。配線も真ちゅう線になっており、一見しただけではロボットに見えない。
ボトルシップならぬボトルロボット
瓶の中に舟ではなくロボットを組み立てた「ボトルロボット」を展示していたOKs(ブースY-04-07)は、東京工業大学で趣味のロボット製作を行っているチーム。ボトルの中で組み立てるために、部品を分割したり、内部で変形できるように設計したりといった工夫をしている。外部から磁力によって動力を伝達することで、内部で様々な動きを見せてくれる。
台座に内蔵したモーターが回ると、磁石によって内部の機構も動く
3Dプリンタで陶磁器の可能性を追求
京都芸術大学情報デザイン学科のいとうみずきさん(ブースD-02-08)は、3Dプリントで制作した陶磁器を展示。ノズルの形状や3Dデータの変化によって、陶器の模様がさまざまに変化する様子を解説していた。
廃れつつあるネオン管の製造に挑戦
electrode(ブースD-02-02)では、ネオン管を使ったアート作品を制作しており、会場では空気圧や封入するガスによってどのようにネオン管の色が変化するのか、デモンストレーションを実施。同じガラス管が、内部のガスによって様々な色に変化する様子が興味深い。
ネオン管は内部の圧力やガスの種類によって色が変わる。これは空気の場合
こちらはアルゴンガスを入れた状態。これに少量の水銀を添加するとより鮮明に光るそうだ
音を目で見たり体で感じたり
スピーカーユニットやイヤホンなどの製造を手がけるフォスター電機(ブースO-01-01)は、「OTONOWA」という、水の入ったガラス容器の内部で音に合わせて波紋が生じるスピーカー、たくさんのセンサーを内蔵し生体認証やVRのヘッドトラッキングなどにも使える「ヒアラブルデバイス」などオーディオの枠にとらわれないデバイスやシステムの展示を行っていた。
音に合わせて波紋が生じ、光によって波紋の揺らぎが影として周囲に投影される
音に合わせて生じる波紋の影が広がる様子