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2024.03.21

「Kariya Micro Maker Faire 2024」会場レポート:ロボットからモビリティにVR、大人から子どもまで、「作りたい」という気持ちにあふれた作品たち

Text by Yusuke Aoyama

愛知県で初のメイカーフェアとなった「Kariya Micro Maker Faire 2024」。すでに速報レポートにて、会場や展示の様子についてお伝えしているが、それ以外に目立った展示や出展者について、こちらの記事にて紹介したい。

公道走行が可能な超小型自作電動バイク

過去にMaker Faire Tokyoでも出展したことのある「世界最小のバイクメーカーのデゴチ」は、オリジナルのオリジナルの小型電動バイクの展示の他、ステージにてプレゼンテーションを行っていた。デゴチの電動バイクは法的基準を満たしており、ナンバーを取得しているため公道走行が可能なのが特徴。

制作者も日常的の足としても使っているそうで、会場付近でも公道を走行して、近所まで買い出しに出かけていく様子が見られた。筆者も試乗させてもらったが、体重80kg超の大柄な男性が乗ってもまったく問題のない剛性感で、初めての乗車であってもスクーター感覚で走行できた。

ボールから変形して動き回るスイカロボット

MONO Creator’s Labは、大手自動車メーカー関連の社員が集まったグループ。メンバーのひとりである、小林竜太さんはパネルディスカッション「企業内メイカーな生き方:ワーク・メイクバランス」にも登壇している。

毎回、ユニークな作品を作っている彼らだが、今回の目玉はスイカ型のロボット。スイカのような球体から、表面が4つに分割して開き、それぞれが足として動き回ることができる。四足歩行だけでなく、ひっくり返ったり、1本足で這うように動いたら、ボールに戻ったりと、多様な動作はまるで生き物のようで、常に子どもの視線を集めていた。

ロボコン出場を目指す小中学生チーム

愛知県豊田市の地域ロボットクラブ「JRT豊田ジラソーレ」は、自分たちで製作したロボットの展示と、活動内容の紹介を行っていた。JRT豊田ジラソーレは、小学5年生から中学3年生のメンバーによって構成されており、自分たちでロボットを製作・開発して、「The Championship of Robotics Engineers」というロボット競技会への参加を目指している。

会場には中学生のチームメンバーと監督する社会人エンジニアが来場し、自分達のロボットや活動について、来場者に説明していた。中学2年生のメンバーのひとりは、「将来、災害救助ロボットの開発がしたくて、ロボット作りの経験を積むためにチームに参加した」と話してくれた。現在は、3月末の大会に出場するロボットを完成させるため、最後の追い込みの真っ最中とのこと。


中学2年生のメンバーの彼女は「ロボットの製作は、作ってみても最初は思った通りには動かない。それを直して動くようになるのが楽しい」と話してくれた

テーブルサイズのフィールで「ロボットサッカー」競技を提案

OP-AmP & Roots」では、「超小型ロボットによるサッカー」競技のデモンストレーションを行っていた。

ロボットによるサッカー競技の「Robocup」は、中型リーグだと18m×12m、小型リーグでも12m×9mという大きなフィールドで行うため、どこでも気軽に実施することができない。そこで、小型リーグの約1/10サイズのロボットを使うことで、テーブルサイズでも競技を行えるようにし、手軽にいろんなところでRobocupを開催できるようにしたいというもの。

会場では、超小型リーグ向けの試作ロボットが、実際に小さなフィールド上で競技する様子を見せていた。試作ロボットは、手のひらサイズで、モーターはミニ四駆に搭載されている130サイズを4機搭載、電源も単3電池が2本と、汎用的かつ低廉なパーツで作られており、コスト面でもハードルを下げている。

現在は、ロボットの規定やフィールドサイズなどレギュレーションを検討しており、今後は実際のRobocupの会場などでもデモンストレーションを行って、競技化を目指していくそうだ。

手のひらに載る超小型ロボットアーム

moguzo.com」のブースで、一際小さいながらも、自在に動く姿で目立っていたのが超小型のロボットアーム。成人男性の人差し指ほどの大きさながら、左右に旋回し、上下に腕を振り、3本の指でものを掴むことができる。動作はスマホのカメラ用のステッピングモーターと遊星ギアを組み合わせ、ESP32からI2C通信で制御。操作はゲーム機のコントローラで行っている。moguzo.comさんのサイトやツイッターでは動画や資料も公開している。

七色に光る日本刀

会場に入ってすぐの目立つブースに展示されていたもののひとつが、「BotaLab」による「七色に光る日本刀」。シンプルなアイデアながら、刀身や柄、鍔の形状、柄と刀身の接合方法、柄への滑り止めの組紐の巻き方など、細部までこだわって製作されており、製作そのものよりも、そうした日本刀の構造などに関して調べることに手間が掛かったそうだ。

「氏名手配書」や「長さ自販機」などユニークな作品

これまでも東京や大垣、浜松などのメイカーフェアで独創的で楽しい作品を披露してきた「BBコリー」。刈谷では最新作として、来場者の顔から、西部劇のようなお尋ね者の手配書を作成する「WANTED MAKER」を展示していた。

「WANTED MAKER」は、内蔵したカメラで作成した顔写真をモノクロ二値化し、自動的に算出した賞金額と共に印刷するまでを自動化したマシーン。手配書なのに、写っている人が“悪人顔”でなく、みな笑顔になっていて、とても楽しげな作品だ。

この他にも、投じた金額に応じて「長さ」を売る自動販売機や、鍵盤が1つのみの「世界最薄ピアノ」など、過去のメイカーフェアで公開した作品も展示していた。

100均を活用したハードルが低いメイカー活動

技術チャレンジ部」は、魔改造の夜にも出演したことがある総合電機メーカーのグループ社員が集まったメイカーサークル。さまざまな活動に取り組んでいる彼らだが、今回は100円ショップなどで売っている製品をぶっ壊して別のモノに5時間で魔改造するハッカソン、名付けて「Bukkowathon」についてアピールしていた。

Bukkowathonは、ゼロから何かを作ることは大変だが、元々あるものを改造することはハードルが低いことに着目して、ものづくりへの抵抗感の払拭を狙ったものだそうだ。「ヘボコン」でおなじみにのデイリーポータルZの石川大樹さんらの共著『雑に作る』(オライリー・ジャパン)に触発されて始めたのだそう。これまでは技術チャレンジ部の中での活動だったが、今後は公開イベントとして開くことを模索しているそうだ。

ヘッドの自動交換機能を持った業務用3Dプリンター

有限会社名古屋工芸では、ヘッドを自動で交換できるシステムを搭載した国内初の業務用オートツールチェンジ3Dプリンター「Senju」を展示。複数のヘッドを搭載して、フィラメントを使い分けられる3Dプリンターは以前から存在していたが、自動的に刃を交換できる工業用の切削加工機のように、ヘッドそのものを交換できる3Dプリンタは、中・大型機としては日本初だそうだ。

ヘッド自体を切り替えることのメリットは、フィラメントの種類だけでなく、複数の径のノズルを素早く使い分けられることにあるそうだ。それによって、生産性や可用性が向上できることから、3Dプリンターをプロトタイピングだけでなく、最終製品の製造に能う本格的な工業用工作機械として普及させることが狙いだそうだ。

実車のパーツを流用したデンソー製のEVカート

自動車部品メーカーであるデンソーの社内サークル「EVシステム活動」は、製作した電動レーシングカートの展示を行っていた。シャシーにはレーシングカートのもの、モーターには実際の乗用車で使われているデンソー製のスターター兼オルターネーターを流用しており、インバーターや制御用コンピュータなどは自作したもの。出力は10kWにもなり、最高時速は100kmにも達するという本格仕様。会場ではデモ走行などはできなかったものの、子どもたちがシートに着座し記念撮影を行っていた。

おなじみ「VR黒ひげ危機一髪」が、密かにアップデート

デンソーの社内サークル「DMC」こと「D’s Maker College」は、多くの作品を展示していたが、そのなかでも子どもから大人まで多くの人気を集め、終始行列が絶えなかったのが「VR黒ひげ危機一髪」の最新バージョン。

過去にもMaker Faire Tokyoなどで展示してきた作品だが、体験者の着座部を木製からアルミフレームに刷新して耐久性を高めたほか、体験者の体重に合わせて射出する力を調整できるようにしたそうだ。また、当たった時に風船を破裂させることで「剣を刺す側」の緊張感も高めたり、VR映像をブラッシュアップしたりと、より質の高いVR体験を目指したそうだ。

なお、メンバーの内藤英智さん(VR映像担当)はパネルディスカッション「企業内メイカーな生き方:ワーク・メイクバランス」に、小原基央さん(射出機構担当)はパネルディスカッション「メイカーの育て方」に、それぞれ登壇している。