Fabrication

2012.10.01

MakerBotのオープンソースと未来に関する種々のメッセージ

Text by kanai

Replicator 2 OSHW?
この記事(と前編)は、3Dプリンターのオープンソースコミュニティで積極的に活躍しているRob Giseburt の意見記事だ。これは必ずしもMAKEの意見を代表するものではなく、MakerBotがこのほど下した決断や、将来下すかもしれない判断を安易に批判するものでもない。むしろ、オープンソースハードウェア、とくに3Dプリンターに起きた変化が意味することに関する論議を促すことを目的としている。 – Gareth Branwyn
MakerBotからReplicator 2が発表され、MakerBot社のオープンソースのスタンスに関する議論や疑問が渦舞いている。現在、新しいReplicatorと前機種との両方で使えるコントロール用ソフトウェア、MakerWareがダウンロードできるが、いくつかのオープンソースソフトウェアを含んではいるものの、これは明らかにクローズドソースだ。彼らはそれをオープンにする代わりに、開発者向けプログラムを提供している。
Replicator 2がオープンソースになるかと質問されたとき、Bre PettisはMakerBotブログで直接答えることはしなかった。その代わりに、「オープンハードウェアで成功している大企業」がないことから、オープンソースハードウェアでは「ビジネスの継続」は難しいという意味のことを書いている。
Breも一度、疑問を投げかけている。「我々は成功するだろうか? そう願っているが、成功しなかったとしても、できるだけオープンにすることがビジネスにとって有効であること、または、オープンにすべきではないということ、あるいはその中間のいずれかを学ぶだろう」と。ここからは、彼らが明確な自信ある計画を持ち得ていないことが察せられる。
そのページに寄せられたコメントは、直接的な答が書かれていないことへの批判が多かった。それらのコメントに対して、Breはひとつひとつに返事を書いている。それでも最初の質問に対する直接の答は避けつつ、そうなった理由について直截に説明しようとしていた。
Lasivian

えーと、ちなみに、あなたに対してこんな質問がありました。
「質問1:MakerBot Replicator 2はオープンソースか?」
しかしあなたは、これには答えませんでした。この周りでダンスを踊って、オープンソースの美辞麗句を並べ立てただけです。

Breの返事:

Lasivian – みんなは白黒をハッキリさせたいのだろうけど、ボクの経験からすると、オープンソースとハードウェアとビジネスが合わさったときに、そんなに単純にはいかないということだ。オープンハードウェアの定義はあるけど、ビジネスモデルからはほど遠いものだ。

Chris B

オープンハードウェアとオープンソフトウェアとでは、それほど大きな隔たりがないように思える。オープンソフトウェアを提供し、サービスで収益を得るという形で大規模なビジネスを大成功させている例も多い。
類似性はある。大手がそうしているように、コアの部分をオープンにしながら革新的なサービスや事業を開拓して収益を得ることはできる。

Breの返事:

Chris B – ソフトウェアとハードウェアには似ている部分もあるけど、まったく別物なんだ。だけど、サービスに関する部分では同意できる。我々はMakerCareを提供して、プロレベルのサポートをしようと思ってる。はたしてこれが売れるだろうか? すぐにわかるよ。

Breの言葉には、MakerBotの将来に関して自信と不安が交互に出てくる。どうも確実な事業計画ができていないようだ。
MakerBot の古巣であるRepRapプロジェクトの創設の父、Adrian Bowyerも、MakerBotの記事に長いコメントを寄せている。そこから、彼の立ち位置がよくわかる。

RepRapプロジェクトに参加している人は、私同様、オープンソースがモラル的にも政治的にもいいものだと信じていると思いたい。それが信じられない人でも、ぜひ参加してほしい。少なくとも私は歓迎する。RepRapが成功するかどうか、道義的信念、法的制約、お金の流れなどは、また別の話だ。
重要なのは、漸進的なゲーム理論だ。

MakerBotの共同創設者、Zack ‘Hoeken’ Smithは、すでに同社を離れているが、感情的な意見を述べている。その気持ちはわかる。彼は「企業的な二枚舌の連続だ」とコメントしている。さらに、MakerBotがクローズドソースに向かったことに関しては「究極の裏切り」と断じている。そして、オープンソースハードウェアの定義を引用して締めくくっている。
Breの書き込みでは、Thingiverseの利用規約に関する質問に答えている。基本的には、彼が今年の初めに言ったことの繰り返しだが、RepRapプロジェクトのもっとも著名な貢献者のひとりであるJosef Průšaの「Thingiverseを占拠しよう」という、多くの人がシェアした書き込みへの返答と見える。Josefは、Thingiversの利用規約の変更と、MakerBotの新製品をクローズドソースで発売するという疑惑に対して感情的に意見を述べている(彼は勘違いしているようで、利用規約はとっくに変更になっていたのだが、それで彼の意見が意味を失うことはない)。
この問題は、大勢の人々を感情的にしてしまうため、コミュニティの中には礼儀正しく話し合おうと訴える人もたくさんいた。MAKEとAdafruitのPhillip Torrone(pt)は、MakerBotのブログ記事にこうコメントしている。

bre、この記事を書いてくれてありがとう。みんなが参加できて、また参加すべき素晴らしい話題だよ。
みんな、思慮深く礼儀正しい。お互いの言動を尊重していこう。多くの人の間でいろんな感情があるけど、MakerBotやAdafruit やSparkfunなどの企業の成長と、オープンソースやオープンソースハードウェアとの関係について語り合ういい機会だ。大いに話そう。

ArduinoチームのTom Igoeによる思慮に富んだ記事は、こうまとめられている。

だから、MakerBotやその他のすべての人々の意見に異論がある場合は、ハッキリ言おう。ただし、礼儀正しく。何かを言う前に、相手と直に対面していると想像して、言葉を選ぼう。必要ならば、おばあさんに文章をチェックしてもらおう。

MakerBotが、すでに2011年の段階で、特許を出願し、取得したことは、さらなる論争を呼んだ。これが、Thingiverseで公開されたemmettTruly Automatic Thing-O-Maticのような特許技術を使ったオープンソースの派生製品にどのような影響をもたらすか、まだよくわからない。
私の前回の記事とBreの記事に寄せられたコメントの中には、素早い展開のためのベンチャーキャピタルによる出資に関するものも多かった。オープンソースの有望性を理解していると思われる投資家や、 一部の法的文書をオープンソース化している投資家がこのような動きをするとは、ちょっと奇妙だ。
MakerBot は、市場での役割と大きな方向性とで混乱しているように見える。オープンソースのあるべき姿と、自ら築き上げてきた基本の方針から離れているようだ。Breはこうまとめている。「これは、私たちがビジネスのプロになるための変革であり、初めてのことではない。これが最後でもない」
– Rob Giseburt
原文