Other

2014.08.18

Edison:1つの部品に複数の役割を持たせ、誰にでも買えるロボットを作る

Text by kanai

電子工作とレゴは、つねに私に情熱を与えてくれました。子どものころ、私はレゴを大量に持っていたし、電子部品満載のDick Smith Electronics(RadioShackのオーストラリア版)カタログを眺めて遊んでいました。40歳代になり、ついに私はその2つの情熱をEdisonという形で合体することができたのです。

Edison_hero
Edisonの製品版。

Edisonは、LEGO互換、そしてプログラムが可能で、1台39ドルでの販売を目標にKickstarterキャンペーンを開始した誰にでも買えるロボットです。私に言わせてもらえれば、驚きの価格です。自分でも驚いてますから。問題は、もっと機能が少なくてセンサーの数も少ないロボットがこれの何倍もの値段で売られているのに、どうしてこの価格でできたかです。

その答のひとつは、リサイクル電子部品です。とは言え、それは使用済みの部品を再利用しているという意味ではなく、ロボットの中のひとつの部品がいくつもの役割を果たすという意味です。それを実現させるために、ご想像のとおり、私は大変に特殊な工学上のソリューションを見つけなければなりませんでした。

Edison-robot-CAD-image
Edisonのセンサー。

なかでもいちばん難しかったリサイクリングソリューションは、赤外線(IR)レシーバーでした。私はひとつのレシーバーに以下のことをやらせようと考えていました。

  1. 標準的なテレビやDVDデッキのリモコンの信号を受信する。
  2. 他のEdisonロボットからのIRデータを受信し、さらに……
  3. 2つの赤外線LEDの信号をロボットの両側で受信して障害物検知をさせる。

ぜんぜん簡単そうに聞こえるでしょう。でも、そうではありませんでした。テレビのリモコンでEdisonをコントロールするとき、IR信号は真上から入りますが、他の方向からも入ってきます。2台のEdisonがIR信号で通信するときは、天井で反射したIR信号に依存します。つまり、これも信号が上から入ることになります。これは、IRレシーバーは上に向けたほうが効率的であることを示しています。しかし第三の問題によって、すべてがひっくり返されます。IR信号はEdisonの正面にある障害物でも反射するのです。そのため、IRレシーバーはEdisonの正面に付けなければいけません。まったく!

Edison-robot-IR-receiver
IRレシーバーの方向。

この難題の解決策は、IRレシーバーを上に向けて配置し、IR信号を反射させ屈折させるレンズを装着することでした。これで、前から入ってきたIR信号も受信できるようになります。もちろん上からの信号も受信できます。これと同じデザインのレンズは、上向きに配置されたIR信号を発信するIR LEDにも使うことができます。信号は上だけでなく、前方の障害物に向けても発射されることになります。さらに、2つの上向きのフォトトランジスターにも使用しました。それにより、Edisonが光を追いかけることができるようになりました。

Edison-reflection-CAD
レンズの交差点。

言うまでもなく、設計どおりにレンズを働かせることは、朝飯前とは行きませんでした。Edisonのプロトタイピングのなかで、この部品だけは特別で、3Dプリンターが使えません。完全に透明で表面がピカピカなレンズをプリントできないからです。私は親しい友人である工業デザイナーのAndrew Rogersを訪ね、助けを求めました。Andrewは屈折面の角度を計算して、さらに表面に盛り上がりやへこみをつけ、Edisonの正面の彎曲した形状を作り出しました。この形によって、IR LEDからの屈折した光が集まってIRレシーバーに届くようになります。正面のレンズを覗き込むと、プリント基板や部品が拡大されて見えます。

Edison-robot-reflection
正面のレンズを通して、水平に配置されたプリント基板と部品が拡大されて見える。

Andrewの次の仕事は、実際に使えるプロトタイプを作ることでした。彼は、12ミリ厚で410ミリ径の円盤を透明アクリルで切り出しました。そして、旋盤を使った手作業で、周囲に屈折面を工作しました。円盤はダイヤモンドペーストで磨きあげられ、それを切り分けてプロトタイプを完成させました。

Prototype-lens
アクリルの円盤から切り出されたレンズのプロトタイプ。

障害物を正しく検知するまでには時間がかかりました。その原因としてレンズの光学特性、電子回路(部品の選定とバイアス)、それにソフトウェア(IR LEDのパルス周波数とデジタルノイズのフィルタリング)という3つの要素が絡み合っていたのです。トライアンドエラーを2週間ほど続けた結果、それらの適切な組み合わせがわかり、左右の障害物の検知も2つのIRを通信させることで実現し、テレビのリモコンからのコマンドを受信することにも成功しました。

これは、Edisonの部品のリサイクルのほんの一例であり、コストを低減するための技術的チャレンジのひとつに過ぎません。この他には、ライントレースするフォトトランジスターをプログラミングポートとしていかに二重にするかという問題もありましたが、それはまた次の機会にお話ししましょう。

Edisonに関する詳細はhttp://www.meetedison.comをどうぞ。

– Brenton O’Brien

原文