2014.08.22
導電性インクと導電性エポキシで電子回路をプリントするSquinkはパーソナル電子工場となるか?
アイデアとプロトタイプの間はどんどん狭くなっている。かつては一部の大企業にしか使えなかった3Dプリンターのようなものも、今では近くのホームセンターでも買えるようになった。こうしたトレンドを推進している原動力のひとつに、Arduinoなどのボードが簡単に手に入るようになったことがある。これを使えば内蔵システムのプロトタイピングが、早く安くできる。これまでは非常に難しかったハードウェアの問題は、簡単なソフトウェアで解決できるようになったのだ。
回路の設計が完成したとしても、ブレッドボードから先に進めるのは大変だった。ここ数年で、プリント基板の設計はEAGLEや、もう使えるようになるまでちょっと時間のかかるFritzingといったフリーソフトのおかげでかなり簡単になった。しかし、それをプリント基板にするためには、自宅でエッチングや削り出しを行うか、業者に委託するしかなかった。
家でエッチングは不可能ではないが、汚れる作業だし危険も伴う。それに、OtherMillがあればいいが、それ以外のマシンを自宅に置いて削りだし作業を行うのは現実的ではない。となると、OSH Parkのようなサービスを利用することになる。これは比較的安く、信頼性も高く、数日で、または格安コースなら数週間で完成したプリント基板が家に届く。ただし問題は、発注をかけてからも基板の設計が、毎時間とは言わないまでも毎日変更されるような場合だ。
Squinkパーソナル電子工場
それに、表面実装のパーツを自宅でハンダ付けできる人は少ない。面白いパーツが表面実装型でしか販売されないという傾向がますます強くなる昨今、自宅でのプリント基板作りはどんどん困難になっている。そのため、AdafruitやSparkfunはブレークアウトボードを多く発売するようになっているが、それはさし当たっての応急処置にすぎない。これからのことを考えると、家で基板を作りたい人のための新しいソリューションが必要だ。
そこで、Squinkの登場となる。従来のマシンと違って、これはエッチングも削り出しもしない。新世代の導電性インクを使って回路を直接素材にプリントするのだ。素材は、ほとんどなんでも使える。Squinkは標準のFR4基板にプリントできる他、プラスティックや紙などの柔らかい素材にもプリントできるのだ(そのほうがきれいにプリントできる場合もある)。MetaWearやLight Blue Beanのような小さなボードといっしょに使えば、ウェアラブル機器をプロトタイプから少量生産の段階へ移行できる。
Squinkは導電性インクを使っているので柔軟な回路が作れる。
さらに、これには非常にユニークな機能がある。回路を導電性インクでプリントするだけでなく、パーツを配置することもできるのだ。導電性エポキシを使ってパーツを回路に固定する。
家庭用のピック&プレースマシンのプロトタイプを以前にも見たことがあるけれど(今後半年から1年以内に商品化されるものはほんのわずかだろう)、Squinkはハンダではなく導電性エポキシを使うというのが面白い。だから、我々が使ってきたスルーホール型のパーツに代わって、これからどんどん増えていく(そして安価な)表面実装パーツの取り付けが簡単にできるということだ。
私は先日、BotFactoryの共同創設者、Michael Knoxに会い、SquinkとそのKickstarterキャンペーンについて話を聞いた。
Squinkは現在10万ドルのゴールを目指して、Kickstarterキャンペーンで苦戦している。少額の寄付を受け付けていないことが災いしてのことか。1台2500ドルという価格はちょっと高いように感じられるが、本当に必要だと思う人にとって、この機能がこの価格で手に入るのは決して高くない。
ゴールを達成できるかどうかに関わらず、これに使われている技術は注目に値する。導電性インクと導電性エポキシは、家で回路を作る人たちからハンダ付けという選択肢を排除することにもつながる可能性がある。
訳者から:インタビューのビデオでは、ここに書かれていることが繰り返されているが、導電性エポキシの耐久性について、かなり高いという話をしている。すでに多くのメーカーから発売されている、ある程度確立された技術だとのこと。今は、もっと柔軟性のある導電性エポキシを探しているという。
– Alasdair Allan
[原文]