2015.07.01
Blink Blink:女の子による女の子のための電子キット
写真:blink blink
意欲的な起業家から気楽なミートアップが大好きな女の子まで、女性だって理系の職業に前向きで、理系の職場で働いている人もたくさんいる。しかし、みんなが同じように科学や技術や工学や数学に興味があっても、もうひとつ共通する問題がある。教室やオフィスに入ったとき、周囲を見て、圧倒的に男社会であることに気がついた経験があるはず。
これは、航空宇宙工学を学んでいたNicole Messierも経験したことだ。大学時代、彼女には女性としては珍しい役割を担った模範、教師、友人がいた。しかし彼女は、通常の航空宇宙工学の業界へ進むことなく、理系の男女比を正す活動に専念することに決めた。彼女は現在、blink blinkのCEOだ。初心者でも簡単に始められる、エレクトロニクスとアートとクラフトのキットで、電子回路とウェアラブルファッションで遊ぶことができる。彼女はこの会社を友人と立ち上げたのだが、そればかりでなく、同じ考えを持つ女の子たちとこのキットをデザインした。
Nicole MessierとJoselyn McDonald。blink blinkの創設者たち
ニューヨーク市の周辺やニューオリンズで子どもたち向けに放課後のワークショップを開きながら、Messierはそのプログラムの中で、女の子たちとキットを作っていった。女の子たちにいろいろな素材、さまざまな美学やブランドデザインを見せた。そしてわかったのは、女の子たちは、素材の好き嫌いや、どのようなデザインやパッケージに惹かれるかといった意見を声に出して言い合うことができ、前向きな協力態勢を作れるということだった。ちなみにその女の子たちは、手描きの落書きっぽい、自分で描いたようなスタイルのデザインを好んだ。
協力して電子回路を作る女の子たち
こうした、キットを開発するという直接的な活動は、彼女たちに良い意味での力を与えることとなった。女の子たちがキットで作ったものを見せ合えるよう、Messierはあえて彼女たちとの個人的なつながりを保つように心がけている。彼女たちは本当に一生懸命に協同開発を行ってくれたからだ。テクノロジーを探り、創造性の新しい道を探検しながら、彼女たちは意見を言うことや、リーダーシップをとる訓練もできた。
女の子たちとの協同開発はいい考えだった。それは彼女たちを勇気づけ、普通なら女の子には場違いのようなところに入っても自信を持っていられる。しかし、若い女の子たちと製品を協同開発することだけがMessierの目指すものではない。彼女はblink blinkウェブサイトも運営している。そこには、クリエイティブな技術の現場で働く女性のインタビュービデオなどを見せるブログを書いている。さらに、そのブログを中心としたコミュニティもできている。そこで女の子たちは、自作プロジェクトの投稿を安心して行っている。みんなに見てもらうためにだ。
MessierとMcDonald。初めてのワークショップ作られた作品といっしょに
Messierは、今の会社を立ち上げることを最初から考えていたわけではない。Messierとblink blinkの協同創設者でCTOのJoselyn McDonaldは、大学院の論文のための研究を、中学校と高校の放課後のワークショップへと発展させていった。
やがてMessierとMcdonaldのワークショップの評判が広がり、あちらこちらから要請が来るようになった。するとMessierは、もっと幅広い子どもたちもできるようにと、キットの開発を決意した。目標は、女の子たちに、クリエイティブで技術的なものへの興味を持たせること。そしてMessierは、ワークショップに参加していた女の子たちといっしょに製品を開発することにしたのだ。
Messierによれば、ニューヨーク市の学校でワークショップを開くことは、なによりも難しかったという。すでに満杯だったからだ。しかし、若い女の子たちを刺激して力を与えたいという明確な願いがあったため、なんとか頑張った。そしてMessierとMcDonaldはできるかぎり多くの学校関係者に会い、すでに行われているアートやファッション系のプログラムに組み入れてもらえないかと掛け合った。やっとドアを入ってわかったのは、多くの女の子がテクノロジーとは無縁だったことだ。そのため、MessierとMcDonaldは、アートとファッションとテクノロジーの有機的な接点を探った。手編みのスカーフにLEDを仕込んだり、導電性テープを使ってグリーティングカードを光らせるといった初心者向けのプロジェクトだ。
そう、blink blinkは女の子向けにデザインされた製品だ。現在出回っている多くの製品が性別に関係のないものが多く、性別を意識した製品への批判もある(女性は黒ではなくピンクのホチキスを使わなければならないのか?)が、Messierは、これは別だと考えている。女の子向けと銘打たない製品のほうがよく売れる場合もあるが、女の子たちの意見を聞いて、女の子たちといっしょに開発したものが売れることもある。
これは、すでに男性で占められていて、入りづらい場所に女性を呼び込むためには必要なことだ。「市場には電子オモチャが山ほどあります。それらは男の子向けとは謳われていません。しかし、男の子が遊ぶことを想定して作られています。だからパッケージには男の子の写真があるのです」と彼女は言う。製品、とくに子どものおもちゃは性別に関係なく遊べるものがいいと彼女も指摘するが、男性はもはや暗示的デフォルトではない。もっと他のものがあっていい。女の子たちが楽しくテクノロジーの世界を探検できる道だ。「女の子たちと協同開発することで、女の子たちをテーブルに招いています。当初、学校にはその手本になる人物がいませんでした」と彼女は語る。そこで、それを変えようとしている。これは、女の子たちを理系の道に誘うための唯一で最初の製品というわけではないが、Messierはこう言っている。「いいんです。もっとたくさんあるべきです。女の子がテクノロジーの世界を探検するための道はたくさんあるべきなんです」
現在、blink blinkは初回ロットが売り切れてしまったが、今朝、彼女たちはKickstarterの2万5000ドルのゴールを達成した。次は新しく2つのキットを作る。新しいキットの開発に加えて、ウェブサイトでプロジェクトのチュートリアルも公開しようと考えている。さらに、夏にはガールスカウトと協同でワークショップを開き、秋からまた学校でワークショップを行う予定でいる。
[原文]