Electronics

2024.08.13

ミニライブも初開催! おなじみの自作楽器から子どもの心をつかむガジェットまで約40組の多様なプロジェクトが集まった「Hamamatsu Micro Maker Faire 2024」会場レポート

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小規模分散型で地域に根差すことを目指す「Micro Maker Faire」。浜松での開催も4回目を数えた。前回までは共催だったFabLab Hamamatsu / TAKE-SPACEと浜松科学館がオライリー・ジャパンと並んで主催に名を連ね、会場として徐々に定着してきた感もある浜松科学館で2024年7月7日(日)に「Hamamatsu Micro Maker Faire 2024」が開催された。

自作楽器などサウンド系のメイカーの多い浜松で特に待望されていたミニライブ(サウンドイベント)も実施された会場を、静岡県内で活動する映像制作者/メイカーの小野寺啓が取材した。

HAL900

コミックマーケットやニコニコ技術部での活動も知られている。今回は、個人向け射出成形機「TAIYAKI」を用いてRFP(紙プラごみ圧縮燃料)を自作するという活動での参加。どんな家庭からでも出る紙ごみとプラスチックごみを原料として、それらを混合圧縮することで使いやすい燃料として成形する。このシンプルかつ確実な方法のため、利用シーンや使い道にあわせて混合比率を変えるなどして使いやすい燃料を自分で試行錯誤できるというメイカースピリットあふれる環境への姿勢がなんとも頼もしい。

BBコリー

前回に続いて出展のメディアアーティスト/ガジェットクリエイター。独自の視点から生み出されるオリジナルガジェットの数々で知られているけど、前回の浜松開催からわずか7カ月程度の期間で、2つの新作を展示していたのには驚いた。誰もが憧れるかっこいい最強の変形をするお裁縫箱「お最強箱」は会場の男子たちの注目を集め、誰でも指名手配犯の手配書になることができる「WANTED MAKER」は指名手配されることに憧れる(?)子供たちに人気を博していた。

Shachiku Hakase

エンジニアとして会社勤めのかたわらライントレースロボットやマイクロマウスロボットの開発に勤しむ社畜博士は、第44回全日本マイクロマウス大会ロボトレース競技で優勝を飾った実機を出展。マイクロマウスと呼ばれる小型ロボットに周回ラインを読みとらせてその上を自動操縦で走り抜けるスピードと巧みさを競うこの競技。優勝機の実走は想像の20倍は速い!というわけで会場ではスピードマニアたちの人気を集めていた。

浜松発明研究会

前回に続いて参加の、浜松市内の発明者グループ。新登場の「木琴オルゴール」は何重にも重なった歯車の組み合わせから紡がれる複雑な音階が楽しい。前回から出展の「万年カレンダー」は回転文字盤によって100年分の日にちと曜日を表せるカレンダー。前回は複雑すぎて理解が難しかったけど、今回は機構を一新した完全リニューアル版での登場でとても理解しやすいものになっていた。手の込んだ大作の仕組みを躊躇なくリニューアルできる発明者たちの勇気がかっこいい。

e炭素工房

水の中で流動する「液体金属マーブルマシン」のかわいい動きで来場者たちを惹きつけていた。液体金属ということで磁石を使って制御するのかなと思っていたら、磁力以外にも重力やら粘性やら、素材の性質や機構によってさまざまに異なる仕組みを考案しては自作して試しているのだそう。いろいろ話を聞いていると、うまくいっているものとそうでないものの違いなども細やかに説明してもらえるのが楽しかった。液体金属といっても、毒性のある水銀は使用していないという優しいエンジニアリングがうれしい。

テツオ

事前にタブレットで入力した数字の位置で必ず止まるという“オリジナルイカサマ”機構を搭載したルーレット。それを人生ゲームのルーレットに仕込んでいるということで「人生を制御するルーレット」ということなのだそう。自然な動きに見えるようにルーレットの減速アルゴリズムにこだわって試行錯誤を重ねたということだそうで、確かに事前に知らなければ普通のルーレットと何が違うのか気づかないクオリティ。何回も説明されてようやく不思議さの意味を理解した子どもがそのあとしばらくブースを離れずに回し続けていたのが印象的だった。

dojinosuke

オリジナルキャラクター「ドジパンダ」の関連グッズを出展していたのは、深圳出身のスタートアップ・電子工作クリエイター。メインの展示物はセンサーやリモコンでこちらの問いかけに応答してくれるしゃべぐるみだけど、関連ガジェットやアプリ、漫画などさまざまなキャラクター展開を独自に広げているのは圧巻! 「DIYガジェットを売り物として成り立たせたい!」という底知れぬ意欲を感じた。

PikaPikaらいと

LEDライトをさまざまに使った「光モノ」ガジェット工作クリエイター。初出展となったHamamatsu Micro Maker Faire 2022から1年おいて2度目の参加。思いつくかぎりのLEDの使い方を実現してしまうその行動力から生み出された多種多様な光モノの数々はさすがの一言。中でもLEDパネルユニットを2枚つなげて広いプレイ画面を確保しつつ加速度センサーを使って「落ちものゲーム」を物理的に実現した「LEDパネルで落ちゲー」は感動的な出来栄えで、「テトリス? ねえこれテトリスなの!?」と、子どもたちに引っ張りだこになっていた。

Yara:Makers

市販のカッティングマシンを自作プログラムで改造して制作した「ペンプロッタ」を軸に独自のモノづくりとデザイン技法の開発を進める浜松のチーム、Yara:Maker(やらめいかー)が今年も登場。今回は、ペンプロッタにファミコンコントローラーをインターフェースとして搭載したマシンが新登場。「縦」「横」「ナナメ」「A」「B」しか入力できない制限の多い入力装置によって、確かに「このマシンでしか描けない独特のデザイン」が生み出されてゆくのが不思議だった。

R-MONO Lab

こちらも浜松の常連となった、音響や音楽を主なテーマとする浜松のものづくりチーム、R-MONO Lab(アールモノラボ)。今回の新作は、どこにでも設置できてなんでもリズムマシンにできるテーブルトントンモビリティ「TETOMO(テトモ)」。ソレノイドでモノを叩いてリズムをつくるガジェットというのは他所でも見たことがあったけど、無線接続も不要で自作のリズムをガジェットに入力できるオリジナルアプリなど、作り込みの完成度がすばらしい。みんなで何十台も持って、金物屋さんに行って遊びたい。

鷲山技研

玩具のような本物の楽器のような、電子楽器のような本物の楽器のような、木の風合いの優しい奇妙なオリジナル楽曲を多数制作する鷲山技研は、前回に続いて2回目の出展。前回は「楽器の人」としての登場だったけど、今回はミニライブにも出演して「音楽家」としての見せ場もつくってくれた。楽器が持っている風合いそのままの優しい音楽に、浜松ならではのDIY音楽の可能性を感じた。

ウエダトモミ

シルクスクリーンを使って不思議な幾何学模様を端材やさまざまなものにプリントするという活動。浜松在住のデザイナーで今回が初出展だそうだけど、こういうペーパープリントやデザイン、工作やクラフトなどの「一見メイカーフェアっぽくない」活動で出展する人が毎回数組いるのも浜松の特徴のひとつかもしれない。端材や自分の持ち物におもしろカワイイプリントをできるワークショップは子供たちに大人気だった。

ミニライブ

今回のHamamatsu Micro Maker Faireでは、待望だったサウンドイベントが開催された。6組のメイカーたちによる「ミニライブ」という形だったけど、音響系や楽器系のメイカーが多い浜松ではやっぱり音のでるコーナーがあるのは楽しい。ブース展示している楽器やデバイスを使った演奏を披露する出展者もいれば、それとは全然ちがうプレゼンテーションを展開する出展者もいて目が離せなかった。いずれにしても、浜松のメイカーたちの「音」への探求が盛り上がる楽しい時間だった。

やっぱり浜松では、ライブイベントがあると楽しい。サウンド系のメイカーがとても多いこの場所では、小規模であってもライブイベントがあるかどうかで全体の意味が全然違って見える。東京や京都、それ以外の土地でのMaker Faireとはちがうこの地域ならではのMaker Faireの姿が、4回目の開催にしてよりはっきりと見えてきたように思った。また、コンピューターや電子テクノロジーを前提としつつも、それだけに寄らないクラフトマンシップのようなものも浜松の特徴のひとつかもしれない。次回以降も、この地域ならではのものづくりの動向に注目したい。