Kids

2010.02.01

若きMakerたちへ

Text by kanai

jon&zolle.jpg
2008年のベイエリアMaker Faireの会場で娘のZollaを抱き上げるカリフォルニア州オークランドのMaker、Jon Sarriugarte。
先週開かれた高等教育カンファレンス(degree.org)で、私はMarieという女性に会った。これは彼女が聞かせてくれた幼い娘Annikaの話だ。
「私には、数学が天才的に得意な息子がいます。彼が何を求め、どこへ行こうとしているのか、なんとなくわかりました。しかし娘は違いました。彼女が何を考え、何をしているのか、私にはまったく理解できませんでした。それから私はMakeを知り、彼女がいつも何かをやりたがっていて、家の中でみつけた部品を使って何かを作ろうとしているのだとわかるようになりました。彼女はMakerなのだと気づき、とてもうれしく感じました」
Annikaの話を書かせてほしいとMarieにメールを書くと、彼女はその返事に娘さんの言葉を添えてくれた。「ママが1分間私に背中を向けたら、私はもう何かを作り始めるっていうこと、あの人に話した?」素晴らしい子だ。
これが意味することの大きさを、私は表現しきれない。母親が娘の新しい生き方を発見することに貢献できる雑誌の製作に関わっている私は、とても幸せだ。このような例は他にもたくさんあると思う。Makerだと思われることで幸せになれる子供たちが、どれほどたくさんいるだろうか。

Young Makers Program

去年の夏、PixarのTony DeRoseが私に、幼いMakerのためのプログラムのアイデアを話してくれた。彼と彼の子供たちは、去年、ポテト・ガトリング砲を作ってMaker Faireに持って来た。アイデアを思いつき、ガレージの工作室でそれを作り上げ、Maker Faireでみんなに公開する。それはすばらしい体験だった。こうした体験を、もっと多くの子供たちにも与えるべきだとTonyは考えたのだ。
私に話した以外にも、Tonyはサンフランシスコのエクスプロラトリウムのスタッフとも会って「2つのことを話した。1) ピクサーの名前を使って科学と数学の教育を推進したい。2) 彼の家族は物作りが大好きである」 Tonyは エクスプロラトリウムのLearning Studio (学習スタジオ)を長年運営しているKaren WilkinsonとMike Petrichに紹介された(彼らは毎年Maker Faireにエクスプロラトリウムの参加をアレンジしてくれている)。彼らの学習スタジオには、科学と数学の教育は機械をいじることによって発展するものであり、サイエンスセンターのような場所でそれを行うことで、より創造的に物作りや実験ができるという信念がある。彼らは、Tonyの提案をエクスプロラトリウムとして新しいアイデアを試す価値があると感じた。そして、Makeともさらに密接に活動していくことにもなった。
私たちは、物を作る人たちを招き、子供たちに実演をして見せるという案を話し合った。私たちは、電子回路の設計、ソフトサーキット、音楽、メカなどの分野のプロジェクトで見ていきたいと考えている。MikeとKarenはこの物作り体験をエクスプロラトリウムの常設教室にしたいと思っている。また私たちは、物作りの達人たちといっしょに何かができる場所も探している。そこで、我々はJim NewtonとTechShopを仲間に引き入れ、彼らとともに、サンフランシスコベイエリアでYoung Makers Program(ヤング・メイカーズ・プログラム)を立ち上げた。現在は試験運用の準備中だ。
Young Makers Programの概要を、Tony の言葉を借りて説明しよう。

人の学習方法にはいろいろあるが、物作りから学ぶことは非常に多い。幼い子供たちは、レゴなどの組み立てオモチャから豊かで際限のない経験を得ることができる。残念ながら、数十年前から学校から技術科の授業がなくなり、組み立てキットより上の技術を学びたい年長の子供たちやティーンエイジャーが学習できる場がほとんどなくなってしまった。
Young Makers Programは、そうした場を作ろうという活動だ。ネット上または現実社会で、物作りを学びたい子供たち、技術指導したい大人たち、そして工作設備によるコミュニティーを形成することが狙いだ。指導者は、プロジェクトの構想を持つ子供たちの相談にのり、漠然としたアイデアはいっしょに具体化させ、実際に作る指導も行う。こうした活動を通して、子供たちと指導する大人たちは、プロジェクトに潜む数学や科学や工学の原則などを引っ張りだし、道具の使い方や安全意識を習得し、さらには集団で力を合わせて発明や実験を行う文化を身につける。Maker Faireはその締め切りとなる。そして、そこで子供たちに作品を展示させ、お客さんに説明をさせる。

私としては、若いMakerたちを奮い立たせて、Maker Faireに参加してもらうために力を貸せたらと思っている。今年は、子供のための特別なエリアをMaker Faireに作って、そこでプロジェクトを発表してもらう。対象となるのは、中学校から高校の生徒たちだ。
– Dale Dougherty
原文