2013.12.25
Googleはロボットで何をしたいのか?
Boston DynamicsのBigDogがリモコンで歩いている様子。
Googleはロボット企業を買おうとしているのか?
Googleは今年、いくつかのロボット開発企業を密かに買収していた。最近では、BigDogなどの運動性能の高いロボットで有名になったBoston Dynamicsがある。
インターネットでは、Big G(Google)のロボティクスプログラム開発のトップ、Andy Rubinの計画がしきりに噂されている。RubinはGoogleのAndroid部門のトップだった人物だ。
12月4日、GoogleのCEO、Larry Pageは、彼のGoogle Plusのプロフィールにこう書いている。「私はAndy Rubinの次のプロジェクトに興奮している。彼が手がけたAndroidは、何億人もの人のポケットにスーパーコンピューターを入れるというクレイジーなアイデアから始まった。まだそれは始まったばかりだが、その進展を非常に楽しみにしている」
Googleがどこへ向かおうとしているのかを探るために、Googleが買収した企業をひとつずつ見ていこう。
Google は何を買ったのか?
情報は限定的だ。買収された企業のウェブサイトは、フロントページ以外はアクセスできなくなっている。
たとえばMekaのウェブサイトは、「弊社はGoogleに買収されました。ロボット革命をがんばって目指しています。またお越し下さい」となっている。
Schaft, Inc.
Schaft, Inc.は日本の会社だ。2012年のDARPA’s Robotics Challengeに参加し(日本語版編注:多数報道されているように、先日行われた2013年のDARPA’s Robotics ChallengeにおいてSchaft社は一位となりました)、「認識、計画、動作生成、動作制御、ユーザーインターフェイスに必要なソフトウェアモジュールを統合するインテリジェントなロボットカーネル」を作ると宣言した。
Schaftが参加させたロボットは、川田工業のヒューマノイド、HRP-2ロボットの改良版をベースにしている。
Industrial Perception
Industrial Perception Inc.(IPI)は、パーソナルロボティクスを専門とする企業、Willow Garageの知覚担当グループのメンバー2人が設立した会社だ。IPIのErin Rapackiは、2013年1月のIEEE Spectrumのブログに、コンピュータービジョンを産業オートメーションに応用すると書いている。
IPIは、3Dビジョンと動作計画を合体させて、産業ロボットの、ばらばらに置かれたものを拾って扱う能力を高めるという。
Redwood Robotics
Redwood RoboticsはMeka Robotics、Willow Garage、SRI Internationalのジョイントベンチャーだ。SRIのウェブサイトには、Redwood Roboticsが「プログラムが簡単で、安価で、人に使っても安全な次世代のロボットアームを開発する」と書かれている。
Meka Robotics
Meka RoboticsはMIT Computer Science and AI Lab出身の2人のエンジニアが設立した会社だ。彼らは、下のビデオのモバイルマニピュレーター・ロボットとヒューマノイドヘッド・ロボットを作っている。
上にも書いたように、MekaはWillow GarageとSRIと共同でRedwood Roboticsを設立した。
Holomni
Holomniは、ロボット用の無指向性車輪を作っている。サンフランシスコに本社があり、元Willow Garageのデザイナー、Bob Holmbergが所有していた。
Bot & Dolly
Bot & Dollyは、買収されてもウェブサイトが見られる数少ない会社のひとつだ。映画業界で確かな立場を築いている会社だからだろう。彼らは映画『ゼロ・グラビティ』での無重力の効果で協力している。下のビデオで、彼らの実力がわかる。
監督はBot & DollyのIRISとSCOUTのロボットアームを使ってカメラや照明やその他のものを動かし、即座に、また繰り返し撮影ができる。
AutoFuss
ロボットは作っていないが、Bot & Dollyの姉妹会社であるこのAutofussも買収された。ここはデザインと製造サービスを行っている。彼らのFacebookページには、「動くデザインとアニメーションとライブアクション製作に特化した学際的なデザインスタジオ」と書かれている。
Boston Dynamics
多くのロボディクスマニアや、軍事ロボットマニアと、それに反対する人たちの間でとても有名な会社だ。高度な移動能力を持つロボットは、動物のような反応をする。彼らは軍事目的で研究開発をしてきたが、New York Timesは、Googleは「軍と直接契約するつもりはない」と書いている。
可能性
これらの企業がGoogleの計画を構成するとしたら、どんな結果が得られるのだろう。いくつかの可能性を考えてみた。
オンラインショッピング
Googleショッピングは姪の誕生日プレゼントを探すにはいいところだが、Google自体は何も販売していない。Amazonは、ドローンを使って空から配達する計画、Prime Airを発表したが、Googleも独自のロボット配達システムを考えているに違いないと多くの人が指摘している。しかし、Googleのロゴが入った巨大なロボットが荷物を持って道を歩き回る日は、ちょっと遠いように思える。
見方を変えよう。知らない人もいるかもしれないが、Amazon.comは、Amazon Web Serviceでビッグデータの世界に進出した。おそらくGoogleは、これに対抗してオンラインショッピングでデータウェアハウスの世界に進出しようとしているのではないか。高度に自動化されたウェアハウスと出荷施設を展開すれば、GoogleはすぐにでもAmazonやその他のオンラインストアに対抗できる勢力になる。
娯楽
Bot & DollyとAutofussを買収したことで、Googleは娯楽関連のサービスや製品を売る計画を立てているとも想像できる。NetflixやHulu、言うまでもなくAmazonのようなオンラインビデオ配信サービスは、膨大なオンライン・データストレージがあることを表している。Huluはオリジナルの番組を作り始めた。GoogleはYouTubeを所有しているが、もっと大きなアクションを起こそうとしているのではないか。
これは、新しく買収した企業だけでなく、Googleが持っている巨大なデータストレージやビデオのストリーミング能力を合体させたものとなるだろう。
マップとナビゲーションデータ
今年の始めに、GoogleはWaze(ウェイズと読む)も買収している。Wazeは、ソーシャルメディアと統合させたGPSベースのマッピングサービスの会社だ。契約者は、交通、事故、障害物、速度取締などの情報を共有できる。
おそらくGoogleは、地図ソフトウエアのためのデータの収集を自動化しようとしているのではないか。GoogleのロボットカーにBot & Dollyのロボットアーム付きのカメラを搭載して、Wazeを通じて最新情報を報告させるのだ。
そうでなければ…
ちょっと飛躍すぎだろうか。みんなはどう思うか、コメントを寄せてほしい。
Makerにとって意味することは?
Googleのロボティクス・ショッピングの大騒ぎがMakerにどんな意味をもたらすかは、簡単には言えない。しかし、ここまで言ってしまったからには、もう少しあれこれ考えてみよう。
オープンシステムの統合
Googleは2012年5月にもうひとつ小さな買収を行っている。Willow GarageのKen Conleyを雇い入れた。彼はオープンソースのRobot Operation System(ROS)の共同創設者でプラットフォームマネージャーだった。それ以前は、GoogleはWillow Garageといっしょに、ROSをAndroidプラットフォームでも走るようにJavaで実装するための開発を行っていた。
そのため今では、Androidを支えてきた人物と、ROSを支えてきた人物が同じ会社にいるというわけだ。Googleがもしロボット開発をROSフレームワークで行うようになれば、オープン化されることが考えられる。そうなれば、ハッカーやMakerは、Googleが作ったすべてのものを使えるうようになる。
Googleのショッピング、娯楽、ナビゲーションシステムと統合されたアプリのオープンソース市場を想像してみてほしい。
仕事
Googleがロボットに進出すれば、雇用の道も開ける。Googleだけではない。新しい未開拓の事業を立ち上げれば、競争相手もできるし、関連業者のエコシステムもできる。
雇用のチャンスが増えれば、より多くの Maker がプロに転向できるようになる。
さらなる買収
Googleのロボット関連企業の買収はこれで済んだのだろうか。それとももっと買収するつもりだろうか。3D RoboticsやOpenROVなど、コミュニティとして我々が誇りに思っているMakerによるスタートアップが買収されるだろうか。ないとは誰にも言い切れない。
– Andrew Terranova
[原文]