Crafts

2014.05.28

ルーク・スカイウォーカーのバイオニック義手を作る

Text by kanai

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Dean KamenのDEKA Armの販売をFDA(米国食品医薬品局)が認可した。一般に、親しみを込めて「ルークアーム」と称されるロボット義手だ。『帝国の逆襲』でルーク(・スカイウォーカー)中佐が失った腕にロボットアームを取り付ける有名なシーンにちなんで、そう呼ばれている(手術した医療ドロイドは、私の記憶が正しければアクションフィギュア2-1Bのやつだ)。

FDAによれば、このルークアームは「筋電電極からの電気信号で同時に複数の動力を制御する初めてのロボットアーム」だと言う。これには、脚に装着できる無線モーションセンサー、筋電センサー、押しスイッチ、引きスイッチなど、さまざまなコントロール系統がある。これが、もっと微妙な手の動きを求めていた装着者の世界を広げることになる。復員軍人援護局で研究を重ね、90人の実験参加者が、鍵の開け閉めや、食事の支度や、食事、ジッパーの上げ下げ、髪の毛のブラッシングなど、それまでの義手ではできなかった複雑な作業が可能になったという。

開発者たちはどう感じているのだろう。私たちは、DEKAのエンジニア、Tom Doyonに、認可が下りたGen 3 DEKA Armについて話を聞いた。

『帝国の逆襲』でダース・ベイダーがルーク・スカイウォーカーの腕をライトセイバーで切り落とすシーンは忘れられませんよね。映画の最後に、ルークは、本物の手とまったく同じに見えて、同じに動くロボットハンドを移植されます。Dean Kamen’s DEKA Research & Development Corpのエンジニアたちは、上腕を失った人たちのために、そんなSF映画の魔法を現実にしようとしてきました。米国防総省国防高等研究事業局と米国陸軍研究所(ARO)をスポンサーにつけて、高度な義手技術を開発するルークプロジェクト(内部的にはDEKA)が組織されたのです。

現在第3世代となったDEKA Armは、装着者のレベルの違いに対応できるようモジュラー化され、設定変更ができるようになっています。もっとも多機能なもので、10個の動力化された自由度があり、肩、肘、手首、手をそれぞれ駆動するというものです。手には6種類の“握り方”のプログラムがあり、装着者が選択して使用します。その6つとは、強いグリップ、工具用グリップ、手を開いて繊細につまむ、手を閉じて繊細につまむ、水平につまむ、掴む、です。2.4 GHzの無線インターフェイスと専用プロトコルを使い、技師が装着者の好みに合わせてアームのコントロール方法を設定できます。

本物の腕と同じサイズ、同じ重さ、同じ機能の高度な義手を開発するのは容易ではありません。DEKA Armの開発中にも多くの設計変更がありました。設定変更を可能にする、非侵襲的なコントロール手法にする、元の義手と同じ重さに抑える、要求されるスペースに要求されるすべての機能を詰め込む、などです。

DEKA Armの開発で技術的にもっとも難しかったのは、おそらく、手でしょう。テーブルに置かれたペンをつまみ上げるときの手の動きに注目してみてください。それと同じ動きを再現するためのモーター、メカニズム、ギヤ、電子部品を、手のサイズの中に収めることを想像してみてください。みんなのアイデアを実現するために、DEKAのデザインチームは、ソリッドモデリング、3D CADシステム、SLSとSLAラピッドプロトタイピングシステムを駆使して、コンセプトの素早い検証を重ねてきました。最初のシステムも、アドバンスト・マニュファクチャリングを駆使しています。

The DEKA Arm is modular, so it can serve

DEKA Armはモジュラー式なので、装着者のレベルに合わせることができる。

DEKA Armの開発は非常に困難でしたが、同時に、関係者全員にとって、大変に実りあるものでもありました。実際に腕を失った人たちと密接に協力し合って、彼らからフィードバックをもらいました。その貴重な意見のおかげで、DEKAの開発チームは高速なイテレーションが可能になり、デザインを洗練させることができたのです。さらに、DEKA Armが、テストに参加してくれた装着者の生活を劇的に変化させた様子を間近に見られたことも、大変な収穫です。

SF映画の中のルーク・スカイウォーカーの世界が現実になったのです。

Tom Doyon

電気エンジニア

DEKA Research & Development Corp.

ニューハンプシャー州マンチェスター

[1] この記事の内容は、アメリカ政府の立場や政策とは必ずしも一致しません。公式な承認を暗示するものでもありません。

No, it doesn't look like this — yet.
まだ、このレベルには達していないけど。(いてて!)

– Keith Hammond

(日本語版編注:Dean Kamen(ディーン・ケーメン)は、アメリカの発明家。セグウェイの開発者として知られています。)

原文