「Make:」英語版の50号目(April/May 2016号)を記念して、誌面に貢献してくれた人たち、Maker Faireに参加してくれた人たち、ウェブサイトに記事を書いてくれた人たち、Maker Mediaの成功に大きく関わってくれた人たちに、最近の活動について聞いてまわることにした。彼らには、現在行っているプロジェクト、とっておきの助言(実用的な工作の技からMaker Proとしての心構えまで)、そしてMakerムーブメントで刺激された思い出を聞いた。完全な記事は本誌を読んでほしい。
我々のもとには28人からの返事があった。ご想像のとおり、本誌にも収まりきれないほどの話が集まった。しかし、彼らの助言は切るには惜しい。そこで、ここに掲載することにした。どうぞ、お楽しみあれ。
Steve Hobley(stephenhobley.com)は「Make:」に掲載されたレーザーハープ(上の写真)の開発者だ。Weekend Projectsでもいくつか協力してくれて、その他のDIYプロジェクトも自身のサイトで発表している。
Steveのとっておきの助言
最後まで仕上げる!:あるMakerから、どうやって最後まで作るかを教えてもらった。作業を「かたまり」に分けて、1日にひとつのかたまりを行う(私の場合は日曜日が作る日だ)。そして、その工程を楽しむ。さらに、「やりすぎ」ているときにそれを自覚すること。あるところで、なんとしても仕上げたいと思うときが来るが、そんなときに作業が雑になりやすい。そのときがきたら「やめる」。そして休む。
Harbor Freightは最良の友:Harbor Freightからは、安い工具がたくさん出ている。
CADプログラムの使い方を学ぶ:私はCADプログラムで多くの問題を解決してきた。実際に作る段階になったときに、非常にスムーズに事が運ぶ。きちんとした寸法で全体を描けば、材料も正確に見積もることができるし、部品を動かしたり、リンクさせたり、メカニズムをテストすることもできる。アームチェア、ベッド、風呂場でも手軽にできてしまう。長い目で見れば、かなりの時間の節約になり、ホームセンターを歩き回る時間が増える、そして……
予備を注文する: かならず、10%余分に材料を買うこと。
Jie Qi(technolojie.com)は、MITメディアラボのResponsive Environmentsグループに在籍する博士号取得候補者だ。彼女の紙の回路と「circuit stickers」については、「Make:」でも記事になった。このウェブサイトではいくつかのプロジェクトで貢献してくれている。
Jieのとっておきの助言
製品開発で何を犠牲にするか?:プロジェクトを商品化するときは、美しく、消化しやすくしなければならない(つまり、オリジナルの栄養素から一部を取り除くこと)。プロトタイプから製品に移行する場合には、耐久性などのポジティブな品質が加わるが、コストの関係で機能は削られる。こうした駆け引きが、本当に必要なものなのかを考えるべきだ。品質を下げて1000人の人に行き渡るようになるなら、そうするのか? 1万人だったらどうか? そこを明らかにすることが、自分自身と自分の製品にとって大切だと私は学んだ。自分の壊れやすい貴重なアイデアが、生存競争に勝てる市場性のある製品として、産道を通って「現実世界」に生まれ出るための信頼できるガイドとなる。
作ることはパズルを解くこと:初めて何かを作るときは、なかなかうまくいかない。複雑なもの(または見た目にはシンプルなもの)を作ろうとして、途中でイライラが溜まってしまう人は多い。実際、最初はほとんどのものが機能しない。そこから忍耐強く、小さなパズルやバグをひとつずつ解いていく。それがものを作る工程の大部分を占める。間違ったり、変な風になってしまうことを認めよう。それは、自分が新しい世界を切り拓いている証だからだ。
紙でプロトタイプを作るとすごく簡単:頑丈で柔軟な回路を紙で作る。電線の代わりに銅のテープを貼り付け(電気を通すだけでなく、平らで、貼り付けた場所からずれない)、平らな表面実装部品を使う。ハンダ付けをすればよりしっかりと接触する。作り直し可能なように作ることもできる。ハンダとテープを剥がして、もし配線が重なるところがあれば、そこに紙の切れ端を重ねて使う。紙の上に回路を作れば(丈夫な基板にしたいときは厚紙を使う)、そこにメモを書き込んだり、きれいに飾って自己表現もできる。
Leah Buechley(leahbuechley.com)は、アーティストでエンジニアで教育者。「ハイ」と「ロー」テクノロジーの接点を探っている。彼女はウェアラブルサーキットやソフトサーキットで広く使われているLilyPad Arduinoを開発した。
Leahのとっておきの助言
レーザーカッターを忘れるな:3Dプリンターが注目を集めているが、私はハイテク工房においてはレーザーカッターが最強のツールだと思っている。非常に汎用性が高く、驚くほど速く、なにより柔軟性が高い。紙でもゴムでも木材でもプラスティックでも布でも切れる。私は、巨大な(そしてビックリするほど安い)RedSailマシンを中国から買ったばかりだ。税関を通すのに苦労はなかった。これを(Bridgeportの場合も)工房へ運び入れるときは金庫の運送屋を頼むといい。:)
Kipp Bradford(kippbradford.com)は起業家で技術コンサルタントで教育者だ。「Make:」とこのウェブサイトに寄稿してくれた。Mini Maker Faireもいくつか主催している。
Kippのとっておきの助言:私がエレクトロメカニカルなデバイスのプロトタイプを作るときによく使っている技がある。Eagleから回路をDXFファイルで書き出して、Solidworksで2Dスケッチとして開く。そうすると、それぞれの部品を見てアウトラインを抽出できるので、それを実際の部品の高さまで持ち上げてSTLファイルで保存して3Dプリントすると、ボードが物理的に収まるかどうかを、お金を使って実物を作る前に確認できる。Altiumなどのハイエンドのプログラムなら、それをシームレスにできるのだけど、この方法なら、Eagleを使っているすべての人が応用できる。
Jim NewtonはTechShop(techshop.com)の創設者。Maker Faireにはいつも参加してくれていて、「Make:」英語版やウェブサイトで記事になることも多い。
Jim のとっておきの助言
ShapeLockをクロロフォルムで溶かす:私たちは、Shapelockプラスティックをいろいろなプロジェクトに使っている。ShapeLockはポリカプロラプトンとも呼ばれ、約70度Cで柔らかくなり、冷めるとナイロンのように固くなる。しかし、このShapeLockがクロロホルム溶媒で溶けることをご存知だったろうか。これを応用すると、中にものを浸したり、型に流して成形したり、平らな面に広げて薄い膜状にできたりする。クロロホルムはインターネットで購入できる。
Bethany Shorb(cyberoptix.com)は、アーティストでプロダクトデザイナーで、The Cyberoptix Tie Labのオーナー。彼女の活躍は、「Make:」本誌でもたびたび記事になっている。Maker Faireにも何度も出展している。
Bethanyのとっておきの助言:もしあなたがプロのMakerなら、経理まではDIYしないこと! 経理は専門家に任せよう。DIYの戦いは慎重に選ぶこと。通常、あなたが本当に好きな部分は、自分でやるべき部分だ。
Mister Jalopy(misterjalopy.com)はMakerでアーティストで作家で教師で店のオーナー。現在は、一品もののバイクショップ、Coco’s Varietyをロサンゼルスで経営している。彼は数年間、「Make:」のコラムニストとして活躍し、Maker Faireにも多く出展し、Makerムーブメント初期からの思慮深い論客だ。
Mister Jalopyのとっておきの助言:YouTubeは素晴らしいが、関連ビデオは見ないこと! 目的のビデオだけ見たら、さっさと引き上げる。その時間があれば、飛行機がひとつ作れる。
Sean Ragan(smragan.com)は、現在、製品化を目指すMakerのための、人のつながり、ツール、サービスの検索を支援するFoundryの編集ディレクターとなっている。また、「Popular Science」と「Make:」の外部筆者でもある。彼は数年間、「Make:」のウェブサイトの編集者であり、本誌の技術編集者でもあった。
Seanのとっておきの助言:おそらく、一般的にもっとも便利な助言は、廃材を使うアーティスト、Nemo Gouldとのインタビューで見たものだ。彼は、インタビュワーに工房を案内してまわり、丁寧に分類した工業製品のジャンクの背の高い棚を見せてくれた。彼はこんなことを言っていた。「きちんと整理しておけば、それはパーツのライブラリーとなり、便利なツールとなる。整理しないと、ただの邪魔くさいジャンクの山だ」つまり、捨てられないものは、きちんと整理しておこうということだ。
Anouk Wipprecht(anoukwipprecht.nl)はオランダのファッションデザイナーであり、ファッションテクノロジスト。彼女の作品は「Make:」英語版、ウェブサイト、Maker Faireでも紹介された。数年前、彼女はMaker Faireでファッションショーを開き、ハイテクなウェアラブルで観客を唸らせた。
Anoukのとっておきの助言:使用する分野の言語を学ぶこと。プログラマーならコード、デザイナーならどのように物事が流れるか、建築家ならどうやって建物を建てるかなど。それぞれの分野に学ぶべき言葉がある。フランス語やイタリア語と同じように。
Kate Harman(katehartman.com)は、アーティスト、テクノロジスト、そして教育者。フィジカルコンピューティング、ウェアラブルエレクトロニクス、コンセプチュアルアートの世界を探索している。彼女の作品は「Make:」英語版やMaker Faireで紹介された。また彼女は「Make: Wearable Electronics」の著者でもある。
Kateのとっておきの助言:何かを作るときに正解はない。チュートリアルやDIYキットもいいが、作るということは、究極的には実験、発明であり、異なる分野のツールと手法を組み合わせて、新しくてエキサイティングなものを達成することだ!
Bunnie Huang(bunniestudios.com)は、ハイテクMakerとして知られており、小さなハードウェアの開発を行っている。彼は「Make:」英語版でも紹介され、執筆もしている。Maker FaireとMaker Conにも登場した。
Bunnie のとっておきの助言:私がおくることのできる最強の助言はこうだ。サプライチェーンは人でできているということを忘れるな。アイデアをスケールアップするときは、人間サイドの物事を忘れてはならない。
Mark Frauenfelder(boingboing.net)は「Make:」の初代編集長。それ以来、ずっと「Make」を導く光となっている。
Markのとっておきの助言:デジタルノギスを買って使い方を学ぶこと。アマゾンで15ドルも出せばいいものが買える。3Dプリントを行うなら、とても重要な投資だ。
Liam Casey(pchintl.com)は、スタートアップからFortune 500社にいたるまで、あらゆる企業の製品に関する問題解決を行うデザイナーグループ、PCHのCEO。LiamはMakerConのハードウェアイノベーションワークショップに招かれ、Maker Proニューズレターでも紹介された。
Liamのとっておきの助言:ハードウェア系の起業家によく話すのは、製品を作ることのずっと先を考えろということだ。作るのは、比較的単純なこと。障害となるのは、資金集めや製造のためのエンジニアリング、市場に素早く送り出す方法、サプライチェーンを効率的に管理すること、顧客との関係を築くことだ。これらが最終的に非常に重要になってくる。
Lenore Edman(evilmadscientist.com)はEvil Mad Scientist Laboratoriesを支える2人のうちの1人。Lenoreとその夫のWindellは、「Make:」とそのウェブサイトで何度も取り上げられ、Maker Faireでは最初の2006年の回からのレギュラーだ。
Lenoreのとっておきの助言:車の中でWindellとブレインストーミングするときに、決まってやることがある。運転していないどちらかがノートを取ることだ。現在の製品に関する問題を考えたり、長い予定表を具体化したり、新しいアイデアを話し合ったりする。
John Edgar Park(jpixl.net)は、「Make:」が生まれた日からずっと良き友であり同士であった。彼は、エミー賞にもノミネートされた「Make: Television」のパーソナリティーを務め、「Make:」英語版、ウェブサイト、Maker Faire、MakerCampと、ほとんどのMaker Mediaのプロジェクトに貢献している。そしてその膨大な空き時間を使って、DisneyToon Studioでコンピューターアニメーションの技術監督を行っている。
Johnのとっておきの助言:工具が欲しいときは、ヴィンテージものを試してみる。上質な古いハンマー、ドライバー、レンチ、クランプ、ペンチなどは、よくノミの市で見かける。今の工具よりも質がよく、量販店で売られている工具よりも安い。それに非常に味わい深い。それを手にすると、いつも幸せな気分になれる。
Matt Mets(blinkinlabs.com)は、アーティストでエンジニア、そして、インタラクティブな照明技術を開発する小さなデザインスタジオ、Blikinlabsを経営している。Mattは「Make:」の外部編集者を長年勤め、MakerBotではソフトウェアエンジニアとして働いていた。
Mattのとっておきの助言:プリント基板を扱うプロジェクトでは、すぐに取り外せるように、スタンドオフを接着剤で仮止めする。プリント基板にはスタンドオフをネジで取り付け、その反対側と本体を接着剤で貼り付けるのだ。そうして本当に位置が決まったら、改めてネジ止めする。
Jimmy DiResta(jimmydiresta.com)はMakerの中のMakerだ。彼に作れないものは、ほとんどないように思える。しかも、どんな材料からでも作ってしまう。大変に才能に溢れ、「Dirty Money」、「Hammered」、「Trash to Cash」といったDIYテレビ番組にも出演している。彼はまた YouTube のスターでもある。「Make:」のWorkshopビデオシリーズ、Core77チャンネルではレギュラーを務め、彼自身のJimmy DiRestaチャンネルも持っている。
Jimmyのとっておきの助言:工作機械の使い方を学びたければ、それで何かを作ってみることだ。なによりも、ミスを隠す方法をすぐに習得できる。
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