Crafts

2018.09.14

世界トップクラスの企業からファイバーアーティストへと転身したWindy Chienが語る、情熱の対象に巡り会うための4つのステップ

Text by Rob Goodman
Translated by kanai

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写真:Molly DeCoudreaux

Windy Chienは、自身の好奇心と情熱に導かれて、魔法のようなキャリアを積み上げてきた。学生時代は内観的な映画を制作していたが(卒業作品は1994年のサンダンス映画祭で上映された)、後にサンフランシスコの名物ともなっているレコード店、Aquarius Recordsのオーナー兼経営者となり、続いてAppleのiTunesとApp Storeの管理職を務めるようになった。世界トップクラスの企業で働くようになれば、それがキャリアの頂点だと思うのが普通だが、Windyの物語はそこでは終わらない。

彼女はさらに自己改革を行い、ファイバーアーティストとして働くというクリエイティブな展望を持つようになった。彼女の「The Year of Knots」(結び目の年)プロジェクトは高く評価され、San Francisco Chronicle、New York Times、Wired、Martha Stewartで取り上げられた。さらに、Facebook本社ビルには、新しくインスタレーションとして作り直したものが展示されていた。

クリエイティブなキャリアにつながる、思い切った転身について考えるポッドキャスト「Making Way」のインタビューで、Windyは、彼女が学んだことや、発見、評価、そして新しいクリエイティブな目標を追求した過程を振り返り、話を聞かせてくれた。

そこでその話の中から、みなさんが夢見るクリエイティブな職業に転向を考える際に、自分探求のヒントにして欲しい4つのステップを紹介したい。

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好奇心を持ち続け、あらゆるものを試す

新しいことに飛び込んで挑戦するWindyのやり方には、豪胆さがある。Windyはこう話している。今でも、アーティストとしての新しいキャリアを追求するときには、好奇心に突き動かされ、新しいものへの挑戦を拒まないと。次に何が起きるかわからないままAppleを退社したとき、背中を押したのも同じ好奇心だった。「クリエイティブになって、自分の手でアート作品を作りたいという気持ちはハッキリしていました。そこで、いろいろな教室に参加しました。版画、編み物、LEDを光らせるやつ、インテリアデザイン、陶芸など、あらゆるものを試しました」と彼女は説明する。1年かけて探し回った結果、Windyの好奇心の焦点が定まってきた。「私の中に残ったのは2つだけ。木彫とマクラメでした」と彼女は話す。

好きなものを探し出すための科学的な公式は存在しないが、時間をかけて新しいことに挑戦するのは、良いきっかけになるはずだ。Windyはこう言っている。「最初の10分とか30分とかで、好きか嫌いかがなんとなくわかります。そして気に入ったものがあれば、またそこに戻って、ウサギの穴に飛び込んで、もっと深く試すんです」

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フローの瞬間を探す

探求を休んでいる間は、自分が心地よいと思える瞬間を探す。Windyの場合、それはロープを結んだり、木を削ったりしているときだった。Windyは、こんな問いかけで自分を導いている。「これをしているときの自分の気持ちは、良いものだろうか?」と。「自分の能力ぎりぎりのところで何かをやっているときの気持ち、その作業にものすごく集中して、その活動自体から、大きな喜びを感じる」、つまりそれがフローだ。「私をフロー状態にしてくれる活動をしているときは、それを続けるべきだと自分で感じます」と彼女は説明する。さらにフローは、毎日のクリエイティブな作業を始めるときに、「活」を入れてくれるという。人によってそれは、瞑想や、ランニングや、落書きや、個人的な習慣に従うことだったりするが、Wendyの経験では、それによって「毎日のスタジオセッションの音合わせができる」という。

だから、たとえ今の仕事で成功していたとしても、フローを感じることができなければ、別の道を探ってみるべきだ。たとえばWindyは、大学を卒業して芽を出し始めたばかりの映画制作の仕事を、投げ出してしまった。「映画作りのプロセスを心底好きにはなれなかった……。紐を結んだり木を削ったりという、今、私が毎日行っている活動は、単に完成した作品だけでなく、その製作工程のすべての瞬間、すべての段階が本当に愛おしい」とWindyは言う。これは、彼女が学生や友人に伝えている助言の核心部分だ。「作品の出来栄えだけでなく、その製作工程そのものも含め、その行動のすべての部分を本当に好きに感じているのかを確認することです。それが、続けるべきかどうかを判断する手掛かりになります」

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写真:Cesar Rubio

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写真:Helynn Ospina

自分で自分に許しを与える

職業を大転換するときには、障害がつきものだ。業種を変えて、別の世界に移り、独立する。こうした職業と人生の大転換には、いろいろな苦悩や失敗を恐れる気持ちが強く付きまとう。人がそうした変化を躊躇するのは、誰かの許しを待っているからだとWindyは言う。「やっていいよ」「やるべきだ」「あなたにはやる資格がある」といった言葉を待っている。言ってしまえば、そんなものは意味がない。

Windyは、こうした許しを待つ習慣は、小さいころに植え付けられたと批判する。「私たちは人生のABCを積み重ねることで『成功』できると教わってきました。カギ括弧付きなのは、その意味を知らずに使っているからです。成功は人によって違います」と彼女は言う。そんなふうに物事が運ぶのは稀なことだと、ほとんどの人は気がついている。幸せや職業上の成功のためのチェックリストなど存在しない。地位を高める力を授ける魔法の杖なども存在しない。許しを待つことは、固定化された存在への片道切符であることに気づくべきだと、Windyは言う。「仕事を辞めることに許可を出してくれる人はいません。雇い主が辞めるように勧めてくれることもありません。両親が、給料をもらうなんてことは止めて他のことをしたらどうだ? なんて言ってくれるはずもありません」。Windyの解決法はシンプルだ。「自分で自分に許しを出すことを恐れないこと。……あなたは大人なのだから、常識的で、現実的で、賢い決断ができるはず!」

自分に許しを与えれば、「危ないぞ!」という煩わしい心の叫びを黙らせることができる。しかしWindyにはもうひとつ、自分のキャリアやクリエイティブな方向性に蓋をする気持ちを、振り払うためのアドバイスがある。「心配するということは、先に失敗してしまうことと同じです。先に失敗するなんて、冗談じゃない。間違ってるわ。やるべきは、先に成功すること。自分の成功と、本当にいい仕事をしている場面を思い描いて、それを実行するんです」

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馬鹿みたいに働く

Windyは、Year of Knotsでアートとクラフトの世界に初めて進出するや、大きな注目を集めた。彼女のプロジェクトはWiredに発掘され、その後、アメリカ国内で高い人気を誇る出版物で次々と紹介されるようになった。しかし、Windyの成功は、信じられないほどのハードワークの上に築かれたものだ。それは、Windy自身が決して忘れない瞬間から始まった。

Windyはこう話している。「2016年1月4日。まさに電球が点灯する瞬間を迎えました。裏庭で落ち葉を掃いていたとき、自分の作品で、本当の自分自身を表現するためには、もっと技を増やさなければならない。すべての結び方を習得しなければならないと、気づいたのです。そしてすぐさま閃きました。プロジェクトの周囲にデザイン上の制限を設けること。そして、毎日ひとつずつ、Instagramで紐の結び方を公開するという日課を定めたのです。自分で学び続けるのと同時に、それに興味を示す支持者を増やし、対話を生み出すことが目的でした」

その瞬間、Windyは、それ自体が実習であるプロジェクト、範囲の制限、厳しい締切を、自らに課すことになった。しかし、これがソーシャルメディアを通じて自分のプロジェクトを広く知らしめることになるという目算もあった。Windyによると、「このプロジェクトを開始したときは、それが毎日の約束事だと考えていました。そのパフォーマンス的で儀式的なアート活動は、1年以上続きました」

毎日の締切と自己に課した制約を守るという大変な努力は、やがて実を結んだ。自分のフローに従って進めたプロジェクトは、Instagramのフォロワー、メディア、金銭的な支援者たちの想像力を掴んだ。つまり、今すぐ壮大なプロジェクトを開始する場合も、将来の大きなプロジェクト(結果的に大規模になる場合も含め)を宣伝するための宿題を課す場合でも、メッセージは明白だ。「行動せよ」だ。スキルはこれまで以上の速度で磨かれる。期待をして見てくれる人たちへの責任を示せる。その結果、自分のポートフォリオも履歴書も書き換わる業績を残せるようになる。これをすれば、これから先の人生、または少なくとも、好奇心に突き動かされて再び大胆に転身するまでの間、新しい充実したクリエイティブな役割を自分に与えるという、理想的な方向に舵を切ることができる。


だから、好奇心を持ち続けて、あらゆることを試してみよう。教室にも参加してみよう。興味のある業界で働く友人をお茶に誘ってみよう。講演を聞きに行こう。ミートアップに出てみよう。実験的なプロジェクトを自分で始めてもいいだろう。数週間、数カ月、数年かかるかも知れないが、新しいことに挑戦し続ければ、いつか自分の情熱に巡り会える。

Windyの作品は、彼女のウェブサイトで見られる。Instagramもチェックしよう。Windyの考え方や、彼女の素晴らしい業績については、Making Waysポッドキャストで聞くことができる。

原文