数年前、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は、非公式に「ドローンの年」を宣言すると、たくさんの人たちが会場に空飛ぶプラットフォームを持ち寄り展示した。DJI、Parrotや、その他無数のグローバル企業がマイクロサイズのドローンから相当な重量の荷物が運搬できるマルチコプターまで、大きなブースを構え、大掛かりなデモを披露していた。
それ以来、ドローンはCESでは定番の展示製品となり、昨年は人が乗れる自律飛行ドローンも、会場で盛んに騒音を立てていた。今年も、サウスホールにドローンエリアが設けられ幅広い企業が集まっていたが、その隣に新しい住人が現れた。小型の潜水ローバーだ。それも大量に。色も、明るい海の色から、オレンジや黄色などさまざまだ。流線型のものもあれば、科学調査用潜水艇を小さくしたようなものもある。なかには、サメの形をして、尾びれをうねらせて泳ぐものもあった。
この進化の様子は、とくにMakerの視点からすると興味深い。2011年、David LangとEric StackpoleはOpenROVを立ち上げた。彼らがKickstarterで製品化したデスクトップサイズの潜水ローバーキットは、水中探査を新しい層にもたらした。アマチュア科学者たちだ。彼らは即座にROVを調査や探査に利用し始め、海の冒険の枠を広げた。DavidとEricは、本物のMaker魂を体現している。尽きることのない好奇心を持ち、失われた宝を発見するためのツールを作るという約束で結ばれた彼らは、それを実現することによって、すぐさま世界最大の潜水ロボットのメーカーに成長した。すべては、カリフォルニア州バークレーのオフィスから生まれた。彼らはオリジナルの設計を何度も練り直し、操作性や精度を高め続けている。そして近年、洗練された水中探査プラットフォーム、Tridentのための新しいKickstarterキャンペーンを行なった(Ericは「Make:」Vol.34の表紙を飾り、Davidは、Make: book『Zero to Maker』を著した)。
彼らのOpenROVはまた、OpenExplorerウェブサイト(ナショナルジオフラフィックが買収)を中心とする情熱的なコミュニティも作り上げた。人々は、そこに集い、いろいろな冒険の詳しい話を交換している。水の中の話ばかりではない。熱帯雨林の違法伐採を監視するための音声探知ポストや、孵化したばかりのリクガメの赤ちゃんを狙う腹を空かせたカラスを追い払うラジコン式の見張り番などもある。
OpenROV製品と空を飛ぶドローンとは、明確に区別することができる。その主な違いは、研究目的か娯楽目的かだ。科学研究や商用目的でドローンを飛ばすコミュニティは無数にあるが、ドローンを作っている企業の収益の大半が、自分の家の屋根の上を飛び越えて普通なら見ることができない隣の家を簡単に覗き見できるガジェットを熱望する技術マニアからもたらされていることは容易に想像できる。
それに対してROVは、ほんの少しだけ条件が厳しくなる。それには、探査するに値する水域が必要だ。自宅のプールに沈めたところで、そこに何があるかは最初からわかっている。本来ROVは、埠頭や船の縁から水中に投じて、沈没船や水中の構造物や、未知の水域の水棲生物を調査することを目的にしている。それは、水上のコントロールステーションとケーブルでつないで操作する仕組みになっているため、ややかさばる。ROVをハワイ旅行に持って行きたいと思えば、スーツケースをもうひとつ用意しなければならないだろう。トレーナーのポケットに入ってしまう今時の折りたたみ式ドローンとは訳が違う。
OpenROVの、この分野の先駆者としての立ち位置から思うに、甘い考えかも知れないが、一般消費者が他の用途を編み出すことは十分にあり得る。CESで新型潜水ローバーを展示する企業の大半は海外のメーカーだ。そのうちのどれかが、あらゆる市場に幅広く受け入れられるようにならないとも限らない。しかし、すでに競争が始まっている。ひとつの例として、Tridentの形状をそっくり真似た製品を展示する企業があった。形状ばかりか、名前までPoseidonと紛らわしい(さらにややっこしいことには、そのメーカーでは、Tridentという名前の水中スクーターを作っている)。
Geneinnoのブースに展示されていたTrident水中スクーター
Robo-fish。この名前が示すとおり、非常に素直な企業だ
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