Electronics

2021.06.14

555タイマー、オペアンプ、さらにデジタル電子回路の実用的な知識を「発見による学習」で身につける『Make: Electronics 実践編』は6月29日発売!

Text by editor

本書は“21世紀のエレクトロニクス入門書”として、米国そして日本でも読者に支持されている『Make: Electronics 第2版』の続編です。この「実践編」では、最初に実験または製作を行い、理論を解説するという「発見による学習」というプロセスをさらに深めます。デジタル電子回路、オペアンプとそのフィードバック回路を中心に、555タイマー、コンパレータ、マルチプレクサ、加算器、エンコーダー、ポジティブ/ネガティブフィードバック、オーディオアンプなどについて、詳細に解説。そのための作例は、「擬似乱数生成器」、「易占マシン」、「危機一髪型コインゲーム」など、ユニークなものばかり。回路同士を組み合わせて、応用プロジェクトを生み出すための考え方、試行錯誤の過程についても知ることが可能です。本文オールカラー。


●書籍概要

Make: Electronics 実践編 ―― 36の実験で独習できるデジタル電子回路
Charles Platt 著、鴨澤 眞夫 訳
2021年06月29日 発売予定
B5変形判/360ページ
ISBN978-4-87311-943-4
定価3,520円

◎全国の有名書店、Amazon.co.jpにて予約受付中です。
◎目次など詳しい情報は、「O’Reilly Japan – Make: Electronics 実践編」を参照してください。


●訳者あとがき

『Make: Electronics』の続刊、『Make: More Electronics』(原書名)をようやくお届けする。本書は、エレクトロニクスの重要な基礎知識のうち前書で扱えなかったもの、すなわちロジック回路とオペアンプ、その他のさまざまな周辺部品について独習し、あなたの回路技術の基礎を完成するものである。(本書は「デジタル電子回路の基礎」と謳ってはいるものの、ここに含まれているオペアンプ、およびそのフィードバック回路の考え方は、アナログエレクトロニクスの重要トピックだ。これが前書『Make: Electronics』に入っていなかったのは学習勾配の問題だと思うが、ついにようやくお届けできる。)

本書の教材に使われるのは木工用ボンドからフォトトランジスタ、擬似乱数生成器から易占マシン、危機一髪型のコインゲームまで、ちょっと変わったプロジェクトの数々だ。前書と本書は「21世紀のエレクトロニクス教科書」として、アカデミックな電子回路教科書のほとんどのトピックを独習できるように構成されているが、もちろんチャールズ・プラットは教科書どおりにやるつもりなんてさらさらない。教科書以上のものが上乗せされているのだ。

たとえば加算器については、半加算器と全加算器がちゃんと取り上げられているのに加え、通常のスイッチ(ただし多極多投のもの)だけで構成した加算器、などというものまでが登場する。加算器なんて知ってるよ、というあなた、この回路を想像できるだろうか。

そして前書『Make: Electronics』でも多用された555タイマーは、ここでもいろいろな役割を担う。たとえばロジック回路のハンズオンとして、2つの555タイマーで生成した波形同士をXORして聞いてみよう、というのがある。音が想像できるだろうか。

この回路はまた「発見による学習」のひとつの例でもある。「発見による学習」は、まずはハンズオンでその概念に親しんでしまい、それから概念を見ていくという、人間の理解のしかたに沿った楽しい学習方法だ。新登場の部品はまず回路を組んで、動作を見てから中身を考えていく。こうした部品にはフォトトランジスタ、コンパレータ、エレクトレットコンデンサマイク、LM386オーディオアンプチップなど多岐にわたる。

歴史的なうんちく話も興味深い。シリコンバレーがお行儀の悪い凄腕エンジニアを当然のように受け入れていた時代の逸話を紹介し、しかも彼が作ったアナーキーな装置を再現する。

こうしたさまざまな手法を使うことで、一本道で学べばよいという段階をすでに超えつつある読者に、回路同士を組み合わせて新しいものを作り出すことの重要性と、その実践方法を見せてくれる。ごく簡単な回路同士を組み合わせるだけで、突飛な応用プロジェクトがいとも簡単に出現するのだ。その発想力の豊かさとともに、実装の簡潔さも見てほしい。

プラットの弱点は一部の数学にあるようで、ところどころに訳者がツッコミを入れた部分もある。とはいえ実用的に考えれば、限られた知識だけで数学パズル的なアプリケーションを作り出し、確率事象を扱う際にはパスカルの三角形の理解だけを要求するなど、これまたユニークな切り口が楽しめるものでもあろう。

訳出にあたっては前書と同様に原文の雰囲気を保存しつつも、「理解力のある中学生ならどうにかなる」といったあたりを目指した。すこし上の知識には道筋を補ってあるので、好奇心の強い読者であれば、読むのに支障はないだろう。

本書を通読すれば、インターネットで説明等に使われている回路図で理解できないものはほとんど無くなるはずである。プレッドボードでの回路作成にはそれなりに面倒なものもいくつかあるが、すべてを作らなければならないわけでも、全体を作らなければならないわけでもない。おもしろそうなものだけでも製作してみようではないか。読者が電子回路を楽しめるようにならんことを。

— 鴨澤 眞夫