Fabrication

2013.08.29

FAB9 第9回 世界ファブラボ会議 フォトレポート

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世界50カ国、200箇所以上に広がる、デジタルファブリケーション機器を備えた実験的市民工房ネットワーク「FabLab(ファブラボ)」。その世界会議の第9回が、8/21から8/27まで横浜で開催されています。今回は、ワークショップと自由制作が行われていた8/23(金)、ヨコハマ創造都市センター(YCC北仲BRICKを訪れました。

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拠点となる北仲通周辺にはFab9のポスターやサインが各所に掲示。これは最寄り駅の馬車道駅改札前。よく見ると、FabLabのロゴの形をした回路図や、Processingのコードがポスターの地の部分に書き込まれていました。

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YCCも北仲BRICKも、ともに1920年代に建てられた風情のある建物。

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会場のレストスペースでは、スポンサーのローランド ディー. ジーによる、Arduinoから制御可能なCNC(切削加工機)と、光造形の3Dプリンタの2つのコンセプトモデルの展示が行われていました。

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この日は14:00から15:30の間で4つのワークショップが行われていました。ワークショップといっても、今回はゴールが設定された体験型の講座という意味ではなく、予め設けられた幾つかのテーマの下に興味のある人たちが集って、ホストを中心に議論を交わす形式のものです。

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北仲BRICKに期間限定で設立されているSuper FabLabでは、2D(平面)から3D(立体)を作成するための様々なテクニックとTipsを紹介するワークショップが行われていました。日本の折り紙の技法やプログラミングによるパラメトリックなデザインで2次元データを3次元へ展開する手法が共有されていました。

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Super FabLabの別フロアで行われていたのは、100ドルから1000万ドルまでの予算でどのようなFabLabが可能かについてディスカッションする、「Powers of Ten(元ネタはおそらくこれ)」。MIT Center for Bits and Atoms所長で「Fab」の著者でもある、ニール・ガーシェンフェルドがそのホストを務めていました。限られた予算でどのようなFabLabが望ましいか、またどのようにスケールアップしてくことが理想的なのか、文化的にも経済的にも異なった背景を持つ各国のFabLabの運営者たちが熱心に議論をしていました。それぞれのリサーチと経験を踏まえて、地に足の着いた議論が交わされている様子は、聴き応えのある内容でした。

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「1年ごとにその数は倍々に増える」と言われているFabLab。隣のYCCでは、その設立支援や教育プログラムの開発などを2009年から行ってきた「FabFoundation」の活動を改めて紹介していました。そこでは、地域/州/国/国際間といった異なった領域を横断する、グローカル(Glocal、Global+Local)指向を最も大きな特徴とするFabLab同士が、相互のネットワークをどう形成していくのかについて話合われていました。

これに関連して、日本国内に設立されている6ヶ所のFabLab(鎌倉つくば渋谷北加賀屋仙台、そして8/26にオープンしたばかりの関内!)のFabLab運営者を中心にした日本会議「日本ファブラボ会議 2013」は、8/30(金)東京ミッドタウン DESIGN HUBで行われる予定です。

国際会議、と銘打ちつつもディスカッションやプレゼンテーションといった言葉中心のコミュニケーションだけに重きが置かれていないのがFab9の大きな特徴。ワークショップ終了後の15:30からは、Fab9参加者が会場内の工作機械を使用して自由制作を行う時間が用意されていました。そこでは、制作過程のモノや加工を行うファブリケーションツールを通じて、実際に頭と手を動かしてアイデアを実現するためのコミュニケーションを参加者同士が自然に行っていました。

Super FabLabの会場で見つけた、多くの3Dプリンタ。

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Super FabLabでは、足形を計測しながら自分の足に合ったサンダルをその場でデザインして、大型CNCのShopBotで切り出して作っている女性がいました。

また最終日の8/27(火)を予定している「FabLab World Cup Contest 2013」では、”The Open (Re)Source Jazz Orchestra”と題して、各所より提供・寄付された廃材を利用して作った自作楽器の演奏会が行われます。廃材をハックすること、費用は全体で200ドル以下、(スタンダードに限らない)ジャズないし音楽が演奏できるような装置にすること、制作したもののドキュメントを公開すること、など「Learn, Make, Share(学ぶこと、作ること、共有すること)」を基本理念とするFabLabらしい、ユニークな参加条件が設けられていると思いました。

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今回の”The Open (Re)Source Jazz Orchestra”をオーガナイズするIAMASの城さん(右)、アムステルダムのFabLabで半年間インターンの後、Fab9に参加している大網さん(中)、Modelaの制御コードをハックして楽器にしようと試みているFablab Sendai – FLATの渡辺さん(左)。

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サンタの大きな置物にギターのアームを取り付けて弦を張り、楽器にしようとするチーム。

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PlayStationのコントローラをハックして、ボタンやキーにArduinoで生成するトーンを割り当ててラジカセから出力するモバイル楽器を作っている、ロシアのFabLab Polytechから来ているIgor。「カセットデッキに作り方をまとめたドキュメントを入れて完成なんだ」とのこと。

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産業廃棄物として出た信号機を使ったドラムマシン。圧力センサーが押されると、信号機のボックス開閉口にモータとレーザーカッターで切り出した歯車が回転して大きな音がでる仕組み。作業は深夜まで続いていました。

FabLab World Cup Contest 2013」の様子は後日レポートを予定しています。お楽しみに。