2013.03.12
Maker Pro:大きなコミュニティーを作る
共有工房にはコミュニティの雰囲気がある。私は、それは規模の問題だと思っていた。大きなグループになるほどコミュニティらしくなると。今は、それだけ人がそこにたむろっているかで決まると思うようになった。工房の中で人と人が関わり合うことが多いほど、コミュニティの意識が高まるのだ。地域に根ざしたMakerスペースでそれがよく実現されていることは、多くの人が経験している。しかし、今まで、大規模なプロのMakerのコミュニティを経験したことのある人間はいない。
地域のMakerスペースは活動が活発だ。その大きな理由のひとつに、コミュニティの意識がある。同好の士が場所と工具を共有して集まり、互いに教え、学び合う。そこに魔法の空気が漂うと、みんなでひとつのプロジェクトに取り組むようになる。それを意図的に起こすことはできない。スペースを作ろうという目標を共有するある程度の人たちが集まって、互いの間の無数のハードルを乗り越えて、初めて強いコミュニティの意識が芽生える。中心的なメンバーは、Makerスペースから30メートル以内に住んでいることが重要だ。たいていそこにいて、長い時間そこで過ごしている。それが彼らのギークなチアーズ(訳注:ドラマ「Cheers」の舞台となったバー)なのだ。そこでは、みんな互いの名前を知っている。
工具となると、大抵のMakerスペースでは、種類も多くないし、大型機械もないし、最新の設備もないというのは仕方ないことだ。物作りに真剣な人たち(「金のため」という人たちなど)は、Maker Works、TechShop、MakerPlaceなどのプロ向けの工房に行ってしまう。多くの人は、その時間を作業に集中させる。多くの人は、その日の作業が終わると、荷物をまとめて家に帰る。そこでウロウロする人はいないので、コミュニティの基礎となる人と人のつながりはできにくい。私の経験では、ある程度プロ向けの工房では、コミュニティの意識が低い。「仕事が終わったらすぐ帰る」的な雰囲気なのだ。
以上は、私がArtisan’s Asylumで週末を過ごすまでの考えだ。そこは、私が訪れたなかで最大のMakerスペースであり、私が経験したなかで最高の親密なMakerコミュニティだった。スペースはとても広く、工作機械や材料が豊富に揃っている。数マイル離れたところからも職人たちが集まってくる理由がある。さらに、レンタルスペースもあり、そこに天啓がある。職人たちは、ここにとどまるのだ。彼らはぶらぶら歩きまわり、互いに顔見知りになっている。この一つ屋根の下の職人の街には、コミュニティができていた。
近ごろそれが心から離れない。Artisan’s Asylumは、1830年代に始まり、約200年の歴史を持つアーティストコロニーのバリエーションだ。このレンズを通してみると、大規模な創造的コミュニティが無数に見えてくる。北バージニアの地元でも、現在活動中の実例がある。Torpedo Factoryは165名のアーティストが82のアートスタジオで活動している。Workhouse Art Centerは、7つの建物からなるアートスタジオ群で、陶器とガラスの研修プログラムを行っている。つまりこれは、技術系DIYがこれから目指すべき、よく知れわたった領域なのだ。
ではいつ、それが実現するのか? 職人の大きなコミュニティはずっと昔からあったのだが、これまで、インターネットとコンピューターを組み合わせた力を活用してこなかった。ハードウェアを改造したり、ハードウェアの設計を共同開発したり、CNCツールで簡単にプロトタイプを作ったりすることは、つい最近までできなかったことだ。こうした共同作業が生み出すものを、まだ誰も見たことがない。プロのMakerのコロニーの創造性、共同作業、コミュニティの可能性は大きい。すぐにでも、その実例を見たいものだ。
– TravisGood
[原文]