Fabrication

2013.05.13

Inside 3D Printing:メーカーレポート

Text by kanai

ニューヨークで開かれたInside 3D Printing Conferenceは、3Dプリントのビジネスの面をハッキリ見せてくれた。3D Systems、MakerBot、Stratasysといったいつもの面々は総力をあげて展示を行っていた。また、FormLabs、ZoomRP、Sculpteo、Mbot、MakerGearといった新規参入組も顔を揃えていた。Shapeways(ニューヨークに本社がある)はなぜか出展していなかったが、CEOのPeter Weijmarshausenはキーノート講演を行い、3,000万ドルの新規投資を受けることを発表していた。

すごいエネルギー

顧客を驚かせて喜ばせることをいつも考えている独立系の起業家として、私のような人間が使えるようになる新しいツールや可能性を見るのはとても楽しかった。

私はSculpteoのNora Touréに声をかけ、価格について聞いてみた。このとき、私はSculpteoのノーブランドウェブツール用プラットフォームについて知った。このソフトウェアにはカスタマイズ可能なインターフェイスがあり、デザイナーが外部のロゴを入れることなく独自サイトをホストできるようになっている。顧客はそのインターフェイスを使ってオブジェクトをデザインすると、それが直接、 Sculpteoのプリンターに送られる。

Matt Griffinのプレゼンテーションでは、現在3Dデザインやプリントで使われているツールを幅広く紹介していた。実際にデザインしている人たちのビデオ(リアルタイムであったり高速であったり)は、クリエイティブなプロセスから湧き出る生のエネルギーを感じさせてくれた。

このカンファレンスでは、大勢の投資家も私のような人間に声を掛けて、将来の3Dプリントで何がエキサイティングかを聞き出そうとしていた。T. Rowe PriceやBB&Tといった大物投資企業から、中小の企業までが、次なる大きな波を探してInside 3D Printing Conferenceの会場をうろついていた。


Matt Griffinがキュートなデザインを披露。

我々が手にしている素材

私にとって、このカンファレンスの大きなテーマは、3Dプリンター技術固有の能力に基づくオブジェクトデザインのアイデアだった。

NetfabbのUlf Lindheは、3Dプリントの構造的制約から生まれる挑戦や可能性について語っていた(NetfabbはSTLリペアの分野で高度な数学的研究で知られている。この話は面白い新機軸だった)。

3Dプリンターは、通常、簡単な物体の限られた範囲を出力する。物体はプリンターで作られるものだから、強度はそれほど期待できないと考えてしまう。

この考えは、伝統的な、強度と密度との相関関係から来るものだ。

強度と密度で分類されたさまざまな素材。この関係がわかるだろうか? しかし「HOLE」ってなんのことだろう。

Lindheは、デザインの強度についてもっと考えるべきだと訴えた。密度が低くても強度の高いものをたくさん作り出している自然に学ぶべきだと言う。

脳サンゴは、限られた素材から頑丈な中空構造を効率的に形作っている。

3Dデザイナーは、こうした構造から、限られた素材を最大限に活かす方法を学ぶことができる。

紙も3Dに

カンファレンスで紹介されたなかで最もクリエイティブな新技術は、McorのIRISプリンターだろう。このマシンは、普通のA4版の紙にインクでプリントして、重ねて、接着剤で貼り合わせて、タングステンカーバイドの刃で切り出す。紙を貼り合わせている間に次の紙に印刷するので、時間が節約できる。

出来上がったものは、エポキシでコーティングでき、実際のメカニカルな部品として使えるだけの強度が得られる。エポキシコーティングによって、本当に使える栓抜きも作れる。

IRISには2つの大きな利点がある。ひとつは、これまでのプリンターに比べて、より鮮明でハッキリとした色が使えることだ。これにより、今までにない写実的なプリントが可能になった。Mcorが展示していたものの多くは単色の作品だったが、人の顔のプリントはすごかった。Inside 3D Printingが回を重ねれば、もっといろいろ見られるようになるだろう。


Mcor IRISのタングステンカーバイドの刃。

IRISが使用する素材は非常にシンプルだ。普通のプリント用紙とカラーインク、それに少しの接着剤だ。2Dプリンターの3D版とも言える。本体価格は4万ドルだが、素材の安さで還元されるとMcorは言っていた。

IRISのプリンターを個人的に今すぐ買おうという気にはならないが、こうした技術が開発されたことは、3Dプリントの可能性が急激に広がっていることを示している。

カンファレンスの写真はここでも見られます

– Todd Blatt

原文