Crafts

2022.03.15

おとでん通信 #17|乙女電芸部的・自作スピーカーのすすめ

Text by editor

そろそろ花粉が飛び始めて、家から出るのがはばかられる季節になってきましたね! みなさんいかがお過ごしでしょうか?

今回は前回に引き続き、DIYの幅を広げるための第一歩としての「オーディオ」がテーマ! この後編では、日常で音を楽しむところからさらに一歩踏み込んで、メイカーのみなさんに向けた自作スピーカー情報、キット、作例などをご紹介します! 前回に引き続きフォスター電機株式会社 営業本部の近藤淳一さん、フォステクスカンパニーの乙訓克之さんのお二人にご協力いただきました。


左から近藤淳一さん、乙訓克之さん

究極に自分好みにできるのが、自作スピーカー!

前編では、アンプの内蔵されていないスピーカー(パッシブスピーカー)を使えば、アンプなどとの組み合わせでライフスタイルにあった環境がカスタマイズできるよ! ということをご紹介しました。今回は、そこからさらに一歩踏み込んだ、自作スピーカーについてご紹介します。

パッシブスピーカーは、自分好みのトッピングを選んで載せていくピザみたいな感じで楽しめますが、自作スピーカーは、生地の粉選びから始めて大きさも自由に決められる手作りピザのようなイメージです。音作りをゼロから楽しめます。

スピーカーの自作というと、スピーカーユニットを購入して筐体(エンクロージャー)を木材から切り出してつくることをイメージする方が多いと思いますが、もう少し簡単な一歩としてエンクロージャーが組み立て済みの「自作スピーカーキット」があります。ピザの例でいうとピザ生地とピザソースのセットを買ってくる感じですね!


スピーカーユニットもエンクロージャーもたくさんの種類が販売されています!

スピーカーユニットから作れるキットの製作体験

今回、フォスター電機さんにてスピーカーキットの製作体験をさせていただきました。しかもスピーカーユニットの組み立ても一部体験できるキットです! 手順は思ったより簡単で、あっという間にできてしまったのですが、そこから色々とカスタマイズできるのが魅力的です。

①箱を開けて部品を並べる

なんと、キットが入っている箱がそのままエンクロージャーになります! なので壊さないようにそっと開けます。 部品も変形させないように注意。特にボイスコイルは気をつけます。

②スピーカーの仕組みを理解するための実験

スピーカーが動作するためには磁力が必要です。キットの磁気回路には予め着磁されていますが、それを確かめるために外装が鉄製の電池を近づけてみます。


(左)スピーカーの外周に電池を近づけるとくっつき/(右)中の磁気キャップに近づけると磁気回路全体を持ち上げられるほど強く引きつけられます。

次の実験はスピーカーが動く仕組みそのままを実感できるものです。磁気回路にボイスコイル+ダンパーを入れ、その導線(ティンセルワイヤー)に左側を+にして電池を接続します。

すると、ボイスコイルが上にぽんっと飛び出すのです!(写真がなくてごめんなさい!) フレミングの左手の法則ですね。では、電池の極性を反対にするとどうなるか…? makezine読者の方はおわかりですよね。自分の手で動かしたことで、なぜスピーカーが動作するのかわかって感動しました。実際にはボイスコイルを支持するパーツがあるので使用するときには飛び出ません。

③ボイスコイル+ダンパーの接着

磁気回路の内側の平坦な面にぐるりと一周接着剤を塗布し、そこにティンセルワイヤーが端子ラグの上にくるようにしてボイスコイル+ダンパーを置き、貼り付けます。ボイスコイルには組み立て治具としてフィルムを中に入れています。

④フレームに振動板を接着

磁気回路の上の面の外周にぐるりと一周接着剤を塗布し、振動板を貼り付けます。

⑤ボイスコイルと振動板の首部を接着

針先で少し振動板を押し下げながら、ボイスコイルとの間に充填するように接着剤を一周塗布します。

ここで一度休憩。接着剤が固まるのを待ちます。

⑥センターキャップを接着

組み立て治具として使っていたフィルムを抜いて、ボイスコイル外周に接着剤を塗布し、センターキャップを接着します。このときセンターキャップを押しすぎてつぶさないように注意!

⑦ティンセルワイヤーをフォーミングして端子ラグに接続

先程のフィルムを三角柱に折って、今度はティンセルワイヤーのフォーミング治具として使います。製品ではティンセルワイヤーははんだづけしてあるそうですが、ここでは端子ラグに巻きつけて接続します。

エンクロージャーの組み立て

あとはスピーカーコードを端子ラグにつなげて組み立てたエンクロージャーに入れればスピーカーの完成! アンプとスマホをつないで早速視聴します。


ダンボールのエンクロージャーですが、インシュレーターを下に置いたら音がかなり変わりました。

このまま外装を好きなようにカスタムすることも可能です。また、スピーカーの振動が机などの外部に伝わって、音に余計な影響を及ぼさないようにする台(インシュレーター)も、身の回りのもので代用可能。これがあるとないでは、まったく違ったので、外装とあわせてコーディネートするのも、おすすめです。

今回体験させていただいたスピーカーユニットから組み立てられるキットは主に学生さん向けの非売品なので、みなさんは完成されたスピーカーユニットをお買い求めください。初心者の方はフォステクスさんから発売されている「かんすぴシリーズ」がおすすめです!こちらも手軽に作れて必要工具はプラスドライバーとカッターだけだそうです。

https://www.fostex.jp/kanspi/

スピーカーの外装デコレーション

せっかくスピーカーを自作するなら、外装もとことん自分好みに仕上げたいところです。黒い箱、木の箱というものがスピーカーのイメージですが、あっと驚くようなデコレーションもできちゃうのが自作スピーカーの良いところ。作例を見ていきましょう!

こちらは、フォスター電機さん社内で、毎年新入社員の方が参加されているというスピーカーコンテスト。中身は乙女電芸部が製作体験したのと同じキットで、思い思いのデコレーションがされています。

中でも目を引いたのは、中央の弥生土器風の作品! 周りは粘土で固めて埴輪風の外装になっているのですが、位置にもこだわりがあり、よりよい音質を考えた結果この外装になっているのがとても素敵でした。

さらに、ブロック玩具で装飾されたこんな作品も! ドーナツやピザのかわいさもさることながら、全面にブロックの土台を敷いてしまえば気分や季節によってオブジェを作り変えることもできる、という名案が光っていました。

乙女電芸部もスピーカーのデコレーションに挑戦することに。スピーカーの外装は通常、木材を使用されることがほとんどなので、柔らかい素材を使ってもよいかフォステクスの乙訓さんに相談したところ、「固定観念にとらわれないところから新しいスピーカーが生まれるかもしれないからなんでもチャレンジしてみてよ!」と背中を押していただきました。

そんな言葉をいただいて完成したのがこちら。ポンポンとファーを使って、モフモフの生き物のようなスピーカーを作ってみました!白い見た目で、いわゆる「黒くて大きい箱」なスピーカーのイメージから遠い佇まいを目指してみました。


動物の目の周りのような仕上がりに。毛並みが左右反対なのがこだわりです。


アンプ(鼻)を置くとさらに優しい目元の印象に!

外装前のスピーカーと聴き比べてみたところ…… 音が丸くなっている感じがする!となりました。言葉で表現するのは難しいのですが、外装によって確実に聴こえ方は変わるので、こんなところも自作スピーカーの楽しみのひとつです。

もうひとつのスピーカーは、家にあった大きい横長のダンボールに取り付けてみました。


しっかりした横長のダンボールに穴をあけ、付属のビスでスピーカーを固定。スポンジと綿の仕切り(右)を中央に入れています

左右のスピーカーを同じ箱に収めたため、スポンジと綿をつけた仕切りを中に接着しました。箱が大きくなったため、大きな音量で鳴りました!音質にも満足です。

デコレーションのコンセプトは「ハグできるスピーカー」。キッチンスポンジと綿を周りに貼り付け、角がないふわふわの抱き心地に。

水彩画の花柄がかわいいNaomi Ito Textureのふんわりしたガーゼ生地を巻き付けます。振動板部分にはスポンジを貼らなかったため、ガーゼの上から押してしまわないよう、アップリケで印をつけます。

完成!

かわいい部屋にも馴染む、ほっこりとしたスピーカーができました。ソファやベッドでスピーカーを抱っこしながら音楽を楽しむ体験も楽しかったです。


ハグできるスピーカー。角に綿も入れたので抱きしめても痛くありません。

フォステクスさんのサイトでは、かんすぴをデコレーションした例も紹介されています。元は同じキットなのにすべて音の鳴り方が違うと思うと「どんな音がするんだろう?」とワクワクします!

https://www.fostex.jp/kanspi/#photoGallery

アンプだって自作できる

今回自作したスピーカーはフォステクスさんのAP05mk2というアンプに接続しましたが、アンプももちろん自作できます! 電子工作が趣味の方は自作スピーカーよりむしろ、こちらのほうがなじみがあるかもしれません。 初心者の方はキットの製作から始めましょう。

https://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-15698/

上のキットのように、3.5mmステレオミニジャックやスピーカーケーブル用のターミナルがついているものがおすすめです。

アンプの外装もスピーカー同様、とことんこだわれるポイントです。パワーLEDを好きな色に変えるなど、電子工作てきなデコレーションも楽しめます。

というわけで、今回は前後編にわけて、DIYの幅を広げるということをテーマに「オーディオ」を取り上げました。スピーカーユニットから自作するのはとても貴重な経験で、音の鳴る仕組みが理解でき、全世界のスピーカーが愛おしくなりました。自作することで既製品にも愛着が湧くのはDIYの醍醐味ですよね! 普段ものづくりを楽しむ方には「釈迦に説法」かもしれませんが、乙女的ものづくりの発想でDIYを楽しむお役に立てたら幸いです。

大変貴重な機会をいただいたフォスター電機株式会社、フォステクスカンパニーの皆様、ありがとうございました!

おとでんの日常

時間があいてしまいましたが、年末にFabLab SENDAI FLATさんの企画Advent Calendar Challenge2021に参加しました。クリスマスまでの日数を数えるアドベントカレンダーですが、乙女電芸部は13を担当。

https://fablabsendai-flat.com/2021/12/13/acc2021_13/

スマホ用のマクロレンズとLEDを使って数字を映し出すミニ投影機を作りました!

ほかにも1から25まで素敵な作品が揃っていますのでぜひご覧になってください!