
2026.10.02
ガンマ線バーストの検出、手のひらに載る超小型衛星… 人工衛星を作るメイカーたち — Maker Faire Tokyo 会場レポート #4
宇宙を目指すメイカーがいる。10センチ立方のキューブサットサイズからもっと小さい人工衛星まで、すでに宇宙で運用されている人工衛星や打ち上げが決まっている人工衛星を、大きい順に紹介する。
ガンマ線バーストをとらえろ! 青山学院大学の再挑戦
一辺10センチの立方体を基本とした超小型人工衛星が「キューブサット」である。このサイズの人工衛星は、学生や中小企業でも比較的低予算、短期間で開発できる。また大きさが標準化されているため、ロケットなどから衛星を放出する機構などの周辺環境も整っている。
青山学院大学の坂本研究室が開発したのは、10センチの立方体を2つつなげたサイズのキューブサット「ARICA-2」である。宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「革新的衛星技術実証4号機」のひとつに選出され、今年の4月23日にロケットラボのエレクトロンロケットでニュージーランドから打ち上げられた。

ARICA-2のサイズは10センチ×10センチ×20センチ、重さは2.3キログラム
どの人工衛星にもミッション(宇宙ですること)がある。ARICA-2のミッションは、宇宙最大の爆発現象とされるガンマ線バーストをとらえ、いち早く地上に知らせることだ。
人工衛星と通信する地上局は、人工衛星が上空を通過しているときだけデータをやり取りできる。しかし地上局の上空に人工衛星が来るのを待っていては、ARICA-2がガンマ線バーストの発生を検知してもすぐに地上へ伝えることができない。そこで民間の衛星通信網を使って、ARICA-2が軌道のどこにいても地上と通信できるようにしているという。
ARICA-2には前身の人工衛星、「ARICA」がある。そのミッションはARICA-2と同じガンマ線バーストの検出だったが、残念ながら打ち上げ後にARICAとの通信を確立できなかった。後継機のARICA-2とは無事に通信でき、現在すでに運用が行われている。雪辱を果たしたARICA-2のミッション成功を祈りたい。
東京都市大学初の人工衛星は来年打ち上げ
東京都市大学宇宙科学教育コミュニティ(TAC)は、宇宙開発の人材育成のために大学内に作られた。現在人工衛星班、ロケット班、ミッション班に分かれて活動している。ロケット班はハイブリッドロケットを開発しており、ミッション班は衛星設計コンテストへの参加が目標だ。そして人工衛星班は人工衛星「TCU-01」を開発中である。

TCU-01のペーパークラフト(TACのXより)
TCU-01はミッションの柱として、地域連携を掲げている。地域の住民や子供たちなど、ふだん宇宙と関わることが少ない人にTCU-01の開発や運用に参加してもらい、宇宙を身近に感じてもらいたいという。不登校児童にTCU-01のプロジェクトに関わってもらう計画もあるそうだ。
TCU-01のサイズは10センチ立方で、一般的なキューブサットの形状である。メインのオンボードコンピュータにはソニーセミコンダクタソリューションズのマイコン、SPRESENSEを採用している。ARICA-2も同様で、SPRESENSEは「革新的衛星技術実証2号機」で宇宙空間での技術実証が済んでいるからだそうだ。すでに宇宙で運用されているARICA-2にTCU-01の実績も加われば「宇宙ならSPRESENSE」がさらに広がるかもしれない。
加えてTCU-01は、教育向けマイコンの「micro:bit」を搭載した世界初の人工衛星でもある。宇宙にあるmicro:bitを使うミッションを計画しているという。
TCU-01の打ち上げはインターステラテクノロジズが開発中のロケット「ZERO」初号機を使うことが決まっている。打ち上げ予定は来年3月だ。現在は振動試験が終わったところで、打ち上げまでさらに試験を重ね、万全の態勢を目指しているとのことだ。
キューブサットよりも小さい人工衛星を打ち上げるプロジェクト
宇宙開発する社会人のグループ、「リーマンサット・プロジェクト」のプロジェクト内サークルとして今年1月に発足したのが「ポケットキューブサークル」である。現在開発中の人工衛星「RSP-P00」は、10センチ立方のキューブサットよりさらに小さく、5センチ立方の「ポケットキューブ」規格で作られている。一辺の長さがキューブサットの半分なので、体積はわずか1/8だ。この中に人工衛星として必要な機器やミッション機器を搭載する。

ポケットキューブのモックアップ。5センチ立方は手のひらに載るサイズで、重さは250グラム以下になる
このように小さな人工衛星を作ることになった背景には、人工衛星の開発期間を短縮したいとの考えがあった。キューブサットサイズの人工衛星は開発におおむね4~5年かかる。ポケットキューブならば2年ほどで開発でき、開発から打ち上げ、そして運用のサイクルを短くできる。メンバーはより多くの人工衛星を開発し、ノウハウを早く蓄積できるメリットがある。
また、打ち上げ費用の高騰化もポケットキューブ開発の動機となった。人工衛星打ち上げ需要の世界的な増加と円安の影響で、現在キューブサットの打ち上げ費用は約1,300万円。一方ポケットキューブサイズなら、約450万円で打ち上げることができるという。
RSP-P00は2028年の上半期に、スペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げる契約をすでに結んでいる。ミッションは人工衛星としての技術実証のほか、アマチュア無線の通信の中継などがある。また設計データはすべて公開し、後進に役立ててもらうとのことだ。






