Science

2016.07.26

NASAは未来の宇宙設計と探索をミックストリアリティで構築する

Text by Mike SeneseTranslated by kanai

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NASAのジェット推進研究所(JPL)のあるパサデナは、サンガブリエル山地と南カリフォルニアらしい乾燥した小渓谷との間に洒落たモダンな高層ビルが建ち並ぶ小さな街だ。中に入ると、地球上でもっとも頭のいい人たちが、遠い宇宙を探索するためのロケットや衛星やローバーの設計、製作、打ち上げに毎日勤しんでいる。

私がそこを訪れたのは5月の中旬。2020年に火星に打ち上げられる予定の新型ローバー(Mars 2020)を特別に見せてくれるということだった。これはキュリオシティが着陸したほんの数カ月あとの2012年12月に発表された最重要計画だ。機能的には似ている部分があるが、少し大型の6輪車だ。しかし、JPLにはそのプロトタイプはなかった。そのかわりに、私はデモンストレーションルームに案内され、MicrosoftのHoloLensヘッドセットを装着するよう言われた。すると、ローバーの CADプロジェクションが現れた。それは原寸大で、細かいところまで完璧に作られている。彼らによると、このバーチャルな工学へのアプローチは、彼らにとっては未来の技術ではなく、今実際に使われている技術なのだという。

バーチャルローバーの製作

JPLはこれを、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)に対して、ミックストリアリティ(混合現実)と呼んでいる。「私たちが作った画像は、実際のオブジェクトを同じように感じられ、通常の物体と同じように手で動かすこともできます」と、JPLミッション・オペレーション・イノベーション研究所のJeff Norris主任は、完全な没入型のVRや彼が採用しているヘッドアップディスプレイを使って画像をオーバーレイするARとの違いを解説してくれた。それは、ハガキ大のディスプレイに表示されたカラーのCAD映像に過ぎないのだが、ミックストリアリティのMars 2020ローバーは本物に見える。

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このプログラムは「ProtoSpace」と呼ばれ、私がローバーの周囲を歩くのに完璧に同期する。上か見下ろすことも、膝を突いて下から覗き込むこともできる。実際の周囲の様子もそのまま見えている。私の脳は完全に騙され、何度もカメラに手を伸ばしては、実際にはそこには何もないことを思い出し手を止めた。あるとき、頭をローバーの中に突っ込んでみるように言われた。体は拒否反応を示したが、なんとかやってみた。何層もの部品の中を通り抜けて、私は中央の空間に出た。

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「ProtoSpaceのようなツールは、たくさんのブロックで遊んでいるときと同じ気持ちにさせられます。ただし、こちらは非常に高度なブロックで、ゴールもうんと難しいものです」とNorrisは言う。「Earth-science satellite」というプロジェクトで、その価値を見せてもらった。非常に密度の高い構造物だ。ProtoSpaceで調べた結果、内部のツールを収める場所が狭すぎることが判明した。そこで、実際にそのパーツを組み込む前に、設計をし直すことができ、時間と予算を削減できた。

「この分野は急速に発達しています。1年半前からくらべると、雲泥の差があります」とNorrisはこのテクノロジーについて語る。ProtoSpaceもまだ成長しているという。パーツを取りだして調べられる機能や、アニメーションや動きを追加したり、ミックストリアリティの中で実際に開発を行えるようにするという。

火星の上を歩く

隣の部屋では、Norrisと彼のチームが別のミックストリアリティーのプロジェクトを見せてくれた。OnSightだ。キュリオシティが集めた写真をもとに火星の地表が再現してある。そして、写実的なキュリオシティが部屋の真ん中にいる。ここでは、地表を見渡すと、はるか地平線までそれが続いている。

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Marsのデータサイエンティスト、Fred Calefは、歩きながら詳細な岩場を見せてくれた。彼は実際にはこの建物の別の場所にいるのだが、私は彼を青く光るアバターとして見ることができ、火星表面の私の隣に立っている。これは、この2つのプロジェクトの大きな利点だ。実際には近くにいない同僚と会って話ができるのだ。JPLのエンジニアたちは、別の場所にビームダウンして集合し、宇宙船の設計を調べたり議論したり、別の惑星上にあるローバーの次の行き先を決めたりできるのだ。

数分後、Calefが部屋に入ってきた。私は彼に、2012年にキュリオシティが火星着陸に成功したとき、火星のローバーの隣に立てるまでに技術が進むと思ってたかと聞いた。彼は首を振って答えた。「これは本当に突然現れたのですよ」

これのおかげで仕事が楽になったと、彼は喜んでいる。「極限まで時間を節約できますから。時は科学なりです」

一般公開はいつ?

NASAはケネディー宇宙センターに「Destination: Mars」という施設を公開し、一般の人でも同じようにHoloLensを使って火星を歩く体験ができるようにするという。ガイドはホログラムのバズ・オルドリンだ。その後、Norrisは、自宅でもProtoSpaceやOnSightが見られるようになり、より多くの人が体験できるようになると興奮気味に話してくれた。「火星での将来のミッションを、リビングルームでヘッドセットをかぶるだけで、何千何万の人たちがローバーの横に立って、または実際の探検隊の近くに立って見学できるようになると想像すると、素晴らしいことだと思います」と彼は言う。

見学だけではない。これがみんなのための新しい設計や組み立ての方法になるのだ。Norrisはさらにこう言っている。「私の夢は、ProtoSpaceのようなツールとミックストリアリティが一般的になり、まったく新しい段階に進むことです。業務用ではなくアマチュアにも使えるように。そうすれば、人々はものを作ることに夢中になりますよ」

原文