
2026.02.24
「Kariya Micro Maker Faire 2026」会場レポート:3Dプリンタ製キャブやレーザー顕微鏡にお手軽メガネマウスなど「作りたいから作った」作品たち
愛知県で唯一のメイカーフェアである「Kariya Micro Maker Faire 2026」が1月17~18日の2日間に渡って開催された。2024年の初開催から2年ぶりとなったが、今回も多くのメイカーと来場者が訪れ盛況となった。
なお、Kariya Micro Maker Faireは、刈谷市に拠点のある大手自動車部品メーカーである株式会社デンソーの社内メイカーコミュニティである「D’s Maker College」(以下、DMC)の協賛・協力のもとで開催されている(DMCについては取材記事を参照されたい)。
会場の準備や運営等々、DMCのメンバーによる尽力によって円滑に開催できたことを改めて記しておきたい。
このレポートでは、会場で気になった展示についてお伝えしたい。

会場のあいおいホールに、約70組のメイカーがひしめき合っている
まだまだ広がる3Dプリンターの可能性
メイカーにとって3Dプリンターは、もはや必需品とも言える機材だ。メイカーフェアでは毎回、3Dプリンターの新たな可能性に遭遇できるが、刈谷でも驚かされる出会いがあった。
「裏庭工芸」では、3Dプリンターで製作したオートバイ用のキャブレターを展示していた。ニードルやネジ、Oリングなどは市販のものを用いているが、キャブレターのボディやフロート、フロートチャンバーなどはPLA樹脂を3Dプリンターでプリントしたもの。
内燃機関のコア部品にプラスチックを使うということに不安を感じるが、実はPLA樹脂はガソリンにある程度の耐性があるのだとか。それよりも熱の方が問題で、PLAは融点が低く60度を超えると強度が下がるため、できるだけエンジン本体の熱がキャブレターに伝わらない工夫が必要だそうだ。
裏庭工芸では、もともとは海外での製作事例を目にしたのがきっかけで始めたのだとか。独自の改良を加えながら製作を続け、実際にサーキット走行で用いており、航続距離で100キロメートル、最高速度は時速60キロメートルを達成したとのこと。
また、キャブレターの製作に関するプロセスや知見などを同人誌にまとめて頒布しているほか、古いバージョンのキャブレターの3Dプリンター用の印刷データも一部公開している。
「術式造形工房」では、数学の関数をベースにした美しい模様のお皿やトレーを3Dプリンターで印刷したもの展示。
谷口朝洋氏が開発したG-coordinatorという、3DモデリングをせずにPythonのコードから直接3Dプリンタ用のG-codeを生成できるソフトを用いており、そうやって作成したデータを市販のマルチカラーのシルクPLAフィラメントで印刷すると、美しくも不思議な見た目の造形となる。
数式を元にした造形なので、同一のパターンが繰り返し現れており、ストライプ状に複数の色からなり光沢感の強いフィラメントでプリントすると、見る方向によって色が変化し、凹凸などの形状が強調されて見えるため、まるで3D CGやホログラムを見ているかのような不思議な外見を実現している。
こうした表現を実現するには、単にG-Cordinatorを用いるだけでは上手くできず、フィラメントの特性を生かすために、プリント時にスライサーで外壁部分を一筆書きで印刷するようにするなどの細かな設定の工夫が必要とのこと。
「Mono’s Tory」では、3Dプリンターで製作したスピーカーユニットを展示していた。
音を発するコーンとそれを支えるエッジ、磁石を支えるバックハウジング、フロントのメッシュカバーを3Dプリンターで印刷したパーツ。白いフィラメントを使っていることもあって、ユニットの外観はスピーカーには見えないが、実際に音を聞いてみると想像以上にしっかりとした音が出てきて驚かされた。
制作者によると、海外で同様の製作をしている事例を参考に作ってみたそうで、思ったよりも簡単に音を出すことができたそうだ。また、各部品が小さいため、製作してみて、さらに改良し、再度印刷して試してみるというサイクルが素早くできるので、ここまで完成度を高めることができたのだとか。
個性溢れる企業内部活で活動するメイカーたち
最近のメイカーフェアでは、企業の中で業務とは無関係にメイカー活動に取り組み、企業の名前を出して参加するグループが増えている。そんな「企業内部活」による展示を紹介したい。
「モノトコ」は、京都の測定機器メーカーの社員によるモノづくりサークルで、部員たちが作った作品、「ポエム印刷機」を展示。
「ポエム印刷機」は、マンションの広告などで用いられるキャッチコピー、いわゆる“マンションポエム”をテーマにした作品。パソコン上で物件に関する5つの項目(周辺環境、交通アクセス、部屋の設備、周囲の眺望など)について、それぞれ表現する言葉を選択肢から選ぶと、その表現にあった“マンションポエム”を生成AIによって作り出す。さらに、その物件の空撮写真もAIで生成して、最終的にマンションの広告ポスターを出力するというもの。
外壁の劣化や騒音などのネガティブな要素をポジティブに言い換えたり、ウォークインクローゼットやフィットネスジムなどの特徴的な設備をより魅力的にアピールするようなポエムを楽しむことができる。ちなみにウェブ版も公開されているので、誰でも体験することができる。
「ATS」は、大手自動車部品メーカーである株式会社アイシンの社内有志団体であるアイシン技術会の略称。DMCが所属するデンソーとは、同じトヨタグループに属する兄弟会社であり、刈谷市に本拠があるなど縁の深い企業だ。
メイカーフェア初参加となるATSは、社内で開催されたロボットコンテストや「全日本ロボット相撲大会」に参加したロボットの展示やデモンストレーションを行った。
アイシンは1965年に愛知工業と新川工業が合併することで設立(当時の社名はアイシン精機)され、2025年に設立60周年を迎えた。それを記念して社内対抗のロボットコンテストを開催したとのことで、KMMFではコンテストに参加したロボットたちを展示していた。
コンテストでは「目指せハイスコア!お掃除大作戦」という競技を行い、3分間でフィールド内に置かれたティッシュ箱からティッシュペーパーを抜き取り、所定のゴールに放り込む枚数を競うというもの。レギュレーションとして、ロボットのベースにタミヤのリモコンロボットキットを用いる必要がある。
参加したのは5チームで、優勝したのは「チームATS ~半田工場~」が改造したマシン。ティッシュを1枚ずつ取り出すのではなく、箱ごと取り込みローラーでティッシュペーパーを連続して引き抜くという、発想の転換とも言えるチカラ技で圧倒的な勝利を収めたとのこと。
また、同ブースでは2012年から出場している「全日本ロボット相撲大会」(主催は富士ソフト株式会社)で用いている相撲ロボットの展示とデモも行っていた。ロボット相撲大会は、3kg級と500g級の2クラスあり、それぞれ直径が154cmと77cmの土俵から相手を押し出したら勝ちというもの。また、動作についても、内蔵したプログラムで動く「自立型」と、プロポで人間が操作する「ラジコン型」の2つの部門に分かれている。
KMMFでは小さな500g級の自立型によるデモ競技を行っていたが、小さな土俵のなかでアルゴリズムに従って動くロボットが、キビキビと相手をかわし、横や後ろをとって押し出していた。ロボットの速度やパワーだけでなく、アルゴリズムも重要な要素であり、一瞬で勝負が決まる場合もあれば、数秒間にわたってロボット同士が駆け引きする様子も見られた。
今回の会場で、その大きさで一際目立っていたのが、「チームEプソン」が展示していた「SWANG」だ。NHKのテレビ番組『魔改造の夜』の競技「ブランコ25m走」(2025年9月25日放映)に登場した魔改造モンスターが、メイカーフェアに初お目見えした。
ただし、会場に展示されていたのは「レプリカ」だそうで、実際に番組で使用したものはEプソンの倉庫にて保管されているとのこと。このレプリカは、メンバーのひとりがメイカーフェアに参加するために、自分で倉庫を借り自費で材料を集めて「ほとんど同じ」に再現したものとのこと。今回のメイカーフェアへの参加もあくまでプライベートとのことで、もうひとりのメンバーとふたりだけでレンタカーを借りて長野県から運んできたとのことだ。
また、SWANGと合わせて展示されていたのが、「スリッパ跳ばし」(2025年10月30日放映)に出場した「パタパタトリッパー」だ。スリッパを一度分解し、スリッパとしての外観と機能を保つことができる最小限の部品のみを残し、カーボンファイバーなどを用いた羽ばたき機構を組み込んだもの。総重量はわずか53グラムと、スリッパの元の重量(約60グラム)よりも軽くなっている。
なお、エプソンのウェブサイトでは「魔改造の夜プロジェクト 特設サイト」が公開されており、モンスターの詳細な解説や参加メンバーへのインタビューなどが掲載されている。
「e-Motion Lab」は、デンソーの社内サークルのひとつで、電動レーシングカートを製作している。動力にハイブリッド車用のモータを使いて、インバータや制御コンピュータ、プログラムを自作して、時速100キロ突破と、加速度で1Gを達成することを目指しているそうだ。前回も参加していたが、その時からはモーターがより強力なものになるなど、車体が着実にグレードアップしている。
世界最小から8本足までバラエティ豊かなロボットたち
世界的にヒューマノイドロボットの開発が盛んに行われているが、メイカーフェアの会場ではヒューマノイドだけでなく、さまざまな形態や大きさのロボットがいくつも展示されていた。
「宮中工学部OB」では、転がって移動する8本足のロボットを開発。本体部分は正三角形を組み合わせた正八面体となっており、それぞれの面から足が生えるという構造。足を広げたときの全幅は2メートル前後になるという大型ロボット。
デモンストレーションでは、安全のために本体を台座で支えた状態で行っていたが、足を動かすことで見事に前に進んでいた。まだまだ開発段階ということで、動きはスムーズとは言えず、動作も不安定だが、この大きさのロボットが実際に動く迫力はなかなかのものだ。
「NISUN ヒューマノイドロボット プロジェクト」では、全高57mmの手のひらサイズのヒューマノイドロボットを展示。世界最小の人型ロボットとして、ギネスにも認定されているそうだ。Bluetooth接続でスマホから操作することができ、ARによる複数ロボット同士の対戦ゲームを行うこともできる。
ゲームでは、ロボットを操作しビームを打ち合って相手を破壊するというもので、ARの画面上では仮想的な障害物を置いて上手く隠れたり、壁にビームを反射させて狙うなどゲーム性も高い。
奈良工業高等専門学校が展示していたのは、お地蔵様の前でお辞儀をするとおみくじを引くことができる「おみく地蔵」。授業のなかで「地域振興を目指すシステムを製作する」という課題のなかで出来ていたアイデアを元に、授業の中では簡単なコンセプトモデルを作るにとどまったが、そこから開発を継続して完成までこぎ着けたもの。
外装は3Dプリンターを印刷したもので、色や形状を工夫することで実際の仏像に近い見た目を実現している。こだわったのはおみくじの表示部分で、あえて液晶ディスプレイではなく、あえてアナログなフラップ式の表示(いわゆるパタパタ)を用いている。一見すると古色を帯びた仏像だが、突然下半身が開きメカメカしい内部と、パタパタのおみくじが表示される様子は非常にユニークな印象を受けた。
「r9kawai」では、作れる四足歩行ロボット「printpupper.com」のデモを行っていた。printpupper.comは、オープンソースの四足歩行ロボットで、スタンフォード大学の開発した”Stanford Pupper”を元に、より安価に簡単に作れるよう再設計したもの。
足などの構造部品はすべて3Dプリンターで印刷でき、基板はCADデータが公開されているほか同人ハードウェアとして頒布もしている。サーボモータは汎用的なもので、コントローラはゲーム用など、すべての部品・部材がAmazonで買える。組み立ても電子基板のハンダ付けを除けば、ほとんどがネジ止め、高度な加工技術は不要だという。
制御基板の入手とその組み立てのみ若干ハードルが高いが、それ以外の部分に関しては市販のラジコンキット並みの難易度で、四足歩行ロボットが実現可能となっている。会場でも複数のprintpupper.comがキビキビと動いており、子どもたちが興味深げに集まってきていた。
メイカーフェアの常連グループのひとつ「MONO Creator’s Lab」は今回、リモート操作が可能な双腕ロボットを展示していた。Maker Faire Tokyo 2025で展示していたものの改良版で、写真手前の灰色と黒の小さな方がコントローラになっており、こちらを手で動かすと後ろの白いロボットが同じ動きをトレースできる。
「作りたいから作った」レーザー顕微鏡にペンプロッターなどなど
メイカーフェアの会場では、目的が不明だったり、技術的難易度が非常に高度だったりするなど、「どうしてそれを作ろうと思ったのか」と疑問を抱いてしまうような作品がしばしば登場する。刈谷においても、そんな作品たちがいくつも登場した。
「Naan」が自分で作ってしまったのは、微細な物体の表面を観察できる共焦点レーザー顕微鏡。共焦点レーザー顕微鏡とは、サンプルの表面に当たるレーザー光の焦点距離を元に、サンプル表面の立体的な構造を3Dスキャンすることができるもの。主に研究に用いられ、電子顕微鏡ほど分解能は高くないが、細胞などの生体試料も観察できるのが特徴で、価格も非常に高価なもの。制作者は特にこうした機材を扱う職業ではないが、たまたまその存在を知り、入手可能な部品で実現可能にするアイデアを目にしたことから、実際に取り組み、見事に実現させた。
使った部品は、レーザーの発振と受光はDVDプレイヤーのピックアップユニット、サンプルを精密に動かすのにはミラーレスカメラの手ぶれ補正ユニットと、いずれも市販されている家電製品のパーツを流用している。こうしたパーツを組み合わせることで、個人レベルでもこれほどのものを作り挙げることができたそうだ。
顕微鏡によって、レーザー光の反射率によるモノクロの画像と、試料の高さの情報が取得できるので、そのデータを用いて試料の表面を3Dプリンターで拡大して再現するといったことができる。会場でも落ち葉の表面から得られたデータを3Dで印刷したものを展示していた。
刈谷でもペンプロッター勢の広がりを確認することができた。「メカトロ同好部エルチカ」では、独自の機構をもったペンプロッタ「ぶらっくんD」と「RθProtter(仮)」の2機種を展示。
「ぶらっくんD」は、モーター駆動によるラック&ピニオンでXY平面上でペンを動かすタイプ。ロール紙を使うことができるので、紙とインクが続くかぎり延々描き続けることができるのが特徴だ。
「RθProtter(仮)」は、まったく新しい機構を持ったペンプロッタ。ラック&ピニオンのようにも見えるが、ピニオンギアが大きく、複数に分割されているなど、少なくともこれまでのメイカーフェアに展示されたペンプロッターでは見たことがないタイプだ。メカもソフトウェアもまだまだ開発途中ということで、きちんとした絵を描くことはできていないが、その独特の機構と動きには惹きつけられた。
「ハードウェアとか研究所」では、ドアノブとカギをUIとして取り入れたゲーム「カギカギパニック!」と「ドアライダー」を出展。
「カギカギパニック!」は、3×3のマトリクス状の線路を走る機関車を脱線させずにゴールまで導くパズルゲーム。コントローラにも線路の交点に位置する9箇所にシリンダー錠があり、錠をひねることで画面の線路の接続を切り替えられる。
錠をひねるためには1つしかないカギを差し込まなければならず、機関車が脱線しないように素早くカギを抜き差しする必要がある。焦れば焦るほどカギが錠にうまく刺さらず、また錠が回る方向も限られているので、思った方向に機関車を進ませられないことがあるなど、かなりゲーム性が高かった。
「ドアライダー」は、コントローラに付いた2つのドアノブをひねることで、画面上のキャラクターを操作してコースを走破するゲーム。ドアノブを引くと、引いた側へキャラクターが移動し、左右を同時に引くとジャンプする。コース上にはさまざまな障害物が現れるので、キャラクターを操作して障害物を避けながらゴールを目指す。
ゲーム自体はよくあるレースゲームだが、コントローラがドアノブという身近な道具で、かつしっかりと握ることができるため、不思議とゲームに馴染みやすさを感じることができた。
「kotobuki」こと小林茂さんは、今回Ogaki Mini Maker Faireのディレクターではなく、個人のメイカーとして参加。ALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患した体奏家・ダンスアーティストの新井英夫さんと協働開発したメガネ型マウスを展示していた。ALSは全身の筋肉が徐々に動かなくなっていくため、通常のマウスなどでのPC操作が困難になる。そのため、画面を見ながら顔をわずかに動かすだけでカーソルの操作が可能なメガネ型マウスのニーズがある。
ハードウェアは市販のメガネにM5Stack AtomS3Rを両面テープで取り付けたのみで、ソフトウェアはオープンソースとして公開されており手軽に取り組むことができる。柔軟にカスタマイズできるのが特徴で、M5Stack AtomS3Rのボタンをダブルクリックすることでカーソルの感度を切り替えたり、M5Stack AtomS3Rをメガネに取り付ける位置も左側面だけでなく右側面や後頭部を選ぶこともできる。
なお、小林さんはステージプログラムとして、近著の『テクノロジーって何だろう?』(ビー・エヌ・エヌ出版)で紹介しているベルクソンの時間哲学を元にしたプレゼンテーション「〈未完了相〉が開くための設計論」も行っており、こちらについても別途レポートの予定だ。
「ジャンクヤード」では、8×16ドットや8×8ドットのLEDマトリクスで様々な画面表示を行えるオリジナルデバイス「ドッター」を展示。マイコンを内蔵しており、スマホなどからWi-Fi経由で接続してウェブブラウザから表示内容をカスタマイズできる。
キャラクターなどのアニメーションを表示するだけでなく、加速度センサーを内蔵しているので、向きに合わせて表示を変化させることもできる。デモでは、上から落ちてきたドットがどんどんと積み上がっていき、ドッターを左右に傾けるとそちらの方向に落ちてきたドットが転がっていくというもの。
テツオさんは、Maker Faire Tokyo 2025などでも展示していた、自分で出る数字を事前に指定することができる「人生を制御するルーレット」を展示。DCモーターを内蔵し回転数と位置を検知して、自然に減速したように止まるのが特徴。2024年の初公開時は、USBで繋いだノートPCから数字を指定していたが、最新型ではBluetooth接続したM5Stackから無線で制御できるようになった。画面のUIもルーレットを模した表示になって、タッチでの操作がしやすくなっている。









































