2015年、私たちは「Exploding Kittens」(こねこばくはつ)というゲームのKickstarterキャンペーンをローンチした。
ゲームは大好評で、キャンペーンは数々の記録を更新した。しかし、これは4年前のカードゲームの話ではない。これは、喜びと魔法……、そして、ほとんどのコンベンション会場から蹴り出されそうになった巨大なマシンの話だ。
ゲーム会社として順調にやっていくためには、数々のコンベンションに出展しなければならない。メーカーにしてみれば、ファンのみなさんと直接顔を合わせることができるよい機会であり、エコシステムの中の一定の地位を保つためだけでなく、話題を振りまくためにも重要だ。サンディエゴ・コミックコンの他にも、ジェンコン、ドラゴンコン、ワンダーコン、キティーコン、なんてこったまたかよコン……などなど。実際、この中のひとつはフェイクだが、なんとなくわかると思う。この記事が公開されるころには、それも本当のコンベンションになっているかもしれない。みんなコンベンションが大好きなのだ。
コンベンションは、どれも非常に大規模だ。やかましくて、何千人ものファンであふれていて、何百ものゲーム会社が20秒間の注目を集めようとひしめき合っている。
2016年、初めてコミックコンに出展したとき、私たちは当たり前のことをした。他のブースと同じようなブースを出して、他の人たちが展示しているプラスティックのオモチャや、似たり寄ったりのゲームや、どうでもいいようなブースの中に埋もれてしまっていた。なんの成果もなかった。翌年の準備を始めたころ、何かもっとマシなことをしなければと思うようになった。
もっと強力なワナ……というかブースを設置する
私たちはまず、「ブース」という概念を捨てることから始めた。
・どのように人と関わるか?:お金をあげると物がもらえる。
・1回のやりとりの長さは?:20秒。
・物理的特性は?:客に対面して気をひく。サンプルの商品を見せる。価格を見せる。秘密の在庫がある。
基本的に、どのブースも自動販売機だ。ただ、それを作っている人たちには自動販売機を作っているという自覚がない。コンベンションで成功するには世界一の自動販売機を作るべきだと、私たちは考え、実行した。
まずは巨大なダンボール箱を用意した。
それに毛皮をかぶせる。
私たちはこれに、自動販売機に求められるあらゆるものを完備した。商品の選択ボタン、お金の投入口、商品を取り出す口。客に応対するための大きな画面。
そしていちばん重要なのは、とっても特別な秘密兵器を備えていること。「Random Item $1」(ランダムな何か1ドル)と書かれた虹色のボタンだ。
このボタンを押すと、即座にマシンの下からランダムな何かが出てくる。スイカ丸ごととか、トイレのすっぽん(ラバーカップ)とか、その場で描いた絵とか、ホウキとか、石が入った袋とか、ソンブレロとか、アスパラガスとか。
ランダムな何かは、このボタンを押した勇気ある人とその仲間たちを楽しませ、びっくりさせて、喜ばせることが狙いだ。
そして、このマシンを駆動する驚きのテクノロジーとは? それをどう動かしたのか?それは中に大勢、人が入ってるというものだ。
ランダムな何かのパワー
Exploding Kittens販売機は、自分たちのために作った特製マシンだ。私たちの製品や商品に加えて、マシンにはランダムな何かが無数に用意され、それらのアイテムが無限に出てくるかのように見せるために、6人から12人のチームが無休で働いた。何時間見ていても、同じアイテムは決して出てこない。
初日が終了した時点で、ランダムな何かの需要がこれほど劇的に多いとは思っていなかったため、急きょ、地元の1ドルショップへ駆けつけ、車に積めるだけの品物を買ってきた。1回のコンベンションで250個もあれば足りると見積もっていたが、実際には1,400個が売れた。週末の35時間で、1時間あたり40個が出た計算だ。
ファンたちは、通路やホールや他の人のブースの前を列でぐるぐる巻きにして何時間も待っていた。あまりにも列が長くなったので、消防保安官に目を付けられた。これでは、コンベンションから我々を追い出す口実を与えてしまう。仕方なく私たちは、3時間待ち以上の列になったときに人々を解散させるために、行列の整理係を雇わなければならなくなった。
このマシンが生み出した結果は、それ以上誇張ができないほど大きかった。あらゆる瞬間がドラマだった。ストームトルーパーと自撮りしたり、子どもに妖精の羽やユニコーンの角を着けたり、手品まで披露した。
私たちは、短い時間で多くのことを学ばなければならなかった。風船の動物は大人気だったので、マシンの裏で必死になってYouTubeを見て作り方を学んだ。
多くの州では、農作物をコンベンションで配るために食品販売業者として登録しなければならないことも知った。そんなわけで、Exploding Kittensは、14の州で食品販売業者として登録されている。人々に個人レベルで対応する術も学んだ。たとえば、列の中にデナーリス・ターガリエン(『ゲーム・オブ・スローンズ』のドラゴンの母)のコスプレをしている人を見つけたら、丸ごとのスイカに細工して、彼女が先頭に来たときに、即座にそれをドラゴンの卵だと手渡して、びっくりさせるといった風に。
私たちは、懸命になって人々と遊び、彼らもきっちりリアクションしてくれた。
この販売機にラブレターを書いてくれた人たちもいた。一人はプロポーズまでしてくれた(その人には、50本のバラの大きな花束を贈って応えた)。コンベンション会場のあちらこちらで、ホールで、ソーシャルメディアで、みんなが噂を広げてくれた。私たちがそれを持ち込んだコンベンションでは、どこでも一番人気となった。
最終的にそれは、魔法そのものだと言える。一人一人のために、あり得ないユニークな瞬間を作るライブショーを、私たちは1日8時間、ぶっ通しでやり抜いたのだ。
人々はこのマシンを通じて、笑い、泣き、恋に落ち、友だちを作った。
私たちの目的は、コンベンションで目立つことだった。その結果、素晴らしく楽しいマシンを作って、人間ソフトウェアを駆動し、幸せを届けることができた。
これは、私たちのコンベンションでのブースの問題を解決してくれただけではない。私たちが作った最高のマシンだ。
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