Science

2017.04.12

OpenAPS:糖尿病をコントロールするオープンソースツール

Text by Lisa MartinTranslated by kanai

糖尿病患者のDana Lewisは、生活を改善したいと、3年間をかけてDIY人工膵臓システムを完成させた。そのデザインは、誰でも利用できるように公開されている。

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OpenAPSプロジェクトは、自分の持続血糖測定(CGM)をRaspberry PiIntel Edisonなどの小型コンピューターで処理して、基礎インスリンの量を微調整し、体に注入するというものだ。接続されているアプリが、栄養価の高いものを食べたり、走ったりといった、血糖値の急激な変化を起こす行動を監視する。それにより、糖尿病のコントロールを自動化して、最終的には血糖値を長時間安定させることを目標にしている。

アラームの理由

Lewisは1型の糖尿病患者だ。寝ている間に血糖値が急激に低下したとき、持続血糖測定器から、目が覚めるように大きなアラームが鳴るようにしてある。目が覚めなければ、そのまま低血糖症で死んでしまう恐れがあることを考えると、アラームの音量を上げるというのは単純な対処法だ。しかし、彼女は抵抗に遭った。

「アラームの音を大きくして欲しいとメーカーに訴え続けていました。しかしメーカーは、アラームの音は十分に大きく、これでみんな目が覚めると言い張るのです。私は頭に来ました。私は目が覚めなかったからです」と彼女は言う。

もうひとつ、彼女が不満に感じたのは、長い間、持続血糖値測定器から、自分のデータをリアルタイムで取り出せなかったことだ。もしそれができていれば、簡単に自分でアラームを作ることができた。

支配権を奪う

2013年11月、彼女はたまたま、息子の持続血糖測定器からデータを取り出すことに成功した父親、John Costikのツイートを見た。そのツイートは、Lewisだけでなく、その他の患者やその愛する人たちにも希望を与え、市販のツールが使えるようになるのをじっと待ってはいられない人たちの間で、#WeAreNotWaitingというムーブメントが始まった。彼女もそれに加わった。

Costikの助けも借りて、このオープンソースコミュニティでは持続血糖測定器とインスリンポンプの機能にアクセスするための情報が活発に交換されるようになり、Lewisも本格的に取り組めるようになった。1年かけて、彼女とボーイフレンド(現在は夫)のScott Leibrandは、カスタマイズ可能なアラームの製作から、持続血糖測定器のデータを読み出してインスリンポンプに正しい情報を送り投与量の調節を行うアルゴリズムの開発へと進み、ループを閉じて最初のDIY膵臓を完成させるに至った。

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初期のOpenAPS装置、インスリンポンプ、持続血糖測定器、Carelink USB スティック。写真:Dana Lewis

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Dana LewisのPebble腕時計に血糖値と人工膵臓の活動が表示されているところ。写真:Dana Lewis

OpenAPSが完成して、これは個人のプロジェクトからオープンソースのコミュニティーのプロジェクトへと発展した。「Scottと私がOpenAPSコミュニティを作った目的は、人工膵臓技術へのアクセスを改善することにありました」と Lewis は言う。彼らのサイト、openaps.orgでは、OpenAPSの設定方法がわかりやすく説明されている他、ユーザーからの貢献や質問を募集し、OpenAPSの互換性を高めて他のデバイスにも対応できるようにするための協力を求めている。

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OpenAPS人工膵臓を収めた手作りのカエデ製ケース。カバンに入れて持ち運べるように蓋を閉じることができる。写真:SarahとTim Howard

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カバーをスライドさせて開き、寝ている間に充電する。写真:SarahとTim Howard

計算されたリスク

持続血糖測定器とインスリンポンプといった既存の糖尿病対応デバイスを除けば、これは100パーセントDIYだ。「カスタマイズの方法はたくさんあります。手持ちの材料もいろいろ使えます。これは、コミュニティが作り、吟味してきたアルゴリズムを使ってもよいし、システムの判断を行うアルゴリズムを自分で開発してもよいということです」とLewisは言う。ただし、このシステムは完全自動ではないことを注意して欲しい。OpenAPSのサイトには、こう書かれている。「糖尿病のコントロールは積極的に行うべきであり、以前と変わらない基本の自己管理を怠らないようにしてください。食事前のボーラス投与、血糖チェック、持続血糖測定器の調整、ポンプ位置の変更などです」

このシステムは食品医薬品局の認可を受けていないので、あくまで自己責任で使わなければならない。規制外のデバイスの使用はリスクを伴う。しかし、OpenAPSのユーザーはその価値があると考えている。「命がかかっていると聞けばドラマチックでしょうが、そのとおりなのです。残念ながら、短期的には、寝ている間の低血糖症で死亡する危険性はまだあります。また長期的には、糖尿病の合併症として、高血糖症で命を落とすリスクも高まります」

現在、この記事を書いている時点で、何らかの形のOpenAPSで糖尿病のコントロールをしている人は、少なくとも247人いる。また彼らのコミュニティでは、95万時間以上の閉ループ体験が記録されている。

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選択の自由

「(技術は)発達して、市販品が登場するのを待てるように、または待たなくてもよくなりました。OpenAPSコミュニティのおかげで、互換デバイスを持つ人たちに、DIYをするか、市販品を待つかの選択ができるようになったことを誇りに思います。すべての人に恩恵があるわけではありませんが、何年も何年も待たされてきた私たちにとって、選択肢が増えるのは大きなことなのです(実際に、私は糖尿病1型になって14年以上になりますが、いつも、あと数年と言われながら、ずーっと待ち続けてきました)」

長年待ち続けた最初(で唯一)の食品医薬局公認の閉ループ型システムの市販品は、2017年の春に登場する予定だ。だからといって、これでOpenAPSの役割が終わるわけではない。「市販品がひとつやふたつ現れても、それで完璧とはいきません。すべての人が使えるわけでもないからです」とLewisは言う。「コミュニティとして、私たちは、メーカーを助けて、より優れたシステムを、より早く、より多くの人たちのために届けられるように協力する仕事があります」

糖尿病に影響された健康ハッキング

Nightscoutは、持続血糖計測器からリアルタイムで血糖値のデータを読み出し、クラウドに送るというオープンソースのプロジェクトだ。これは、OpenAPS用にウェブベースで視覚化できる他、電話機やスマートウォッチにも表示でき、1型の子どもの糖尿病を遠隔でモニターすることもできる。

EpiPenは、命の関わるアレルギー反応を抑えるために緊急にエピネフリンを投与するためのものだ。EpiPenの価格が突然300ドルに跳ね上がったとき、Michael Lauferは、糖尿病でよく使われている器具を使ってEpiPencilを作る方法を動画にして発表した。エピネフリンの価格は別にして(処方箋が必要)、EpiPencilの価格は35ドル以下だ。

原文