Electronics

2010.03.23

Maker Business: Adafruit Industriesの場合 – ニューヨークのオープンソース会社の裏側 Part 1

Text by kanai

mz makerbusiness-1

上のビデオはRocketBoom 提供
Maker Shedでもたくさんのキットを販売しているAdafruit Industriesのことは、聞いたことがあるという方も多いと思う。ボクはMakeのシニアエディターであるほかに、Limor(Ladyada)のオープンソースハードウェアキットのビジネスを手伝っている。ボクは、ボクたちがこの船をいかに浮かばせて、いかに新しい海域へ進めていくかという総合的な話を、何回かに分けて書いていこうと予定しているんだけど、今回はMaker Business特集ということで、ボクたちの仕事の概要と、どれだけたくさんのウェブツールやサービスを活用しているかを紹介したいと思います。Makerたちから受ける質問のなかで、いちばん多いもののひとつに、「どのショッピングカートを使っているのか」というものがある。一言で答えれば、 Zencartです、となる。ビジネスの立ち上げ当初は、どのカートを使うかなんて問題じゃないと思うんだけど、Adafruitではそれを使っている。ついこの前、ボクたちは5万件めの注文を発送するという記念すべき日を迎えた。ボクたちの製品のほとんどがオープンソースなので、ボクたちが使うツールも、ほとんどがオープンソース。ボクはこれまで、ひとつの企業がビジネスに使っているオンラインツールのすべてを紹介した記事を読んだことがないので、ここでそれをしたい。きっと楽しんでもらえると思うよ。では始めよう。
Adafruitを知らない方は、上のビデオか、Adafruitのaboutページを見てほしいい。オープンソースハードウェア、チュートリアル、エレクトロニクス、ハッキングなど、Maker たちの電子工作を学ぶ旅の手助けとして、ボクたちがやっていることの概要がわかるよ。
日本語版編集から:以下の情報はプロバイダ、決済システムなど、米国固有のサービスも含まれていますが、選択のポイントなどは日本の読者にも参考になる部分があるという判断から掲載しました。

これはプレゼンテーションのスライド(英語)。どうぞ見てください。前半は「オープンソースハードウェアとは何か」という話なので、必要のない人は飛ばしていただいて結構。この記事は、このプレゼンテーションの延長版といったところだ。
pt 2673

プロバイダー

ボクたちはservint.netを使っている。月89ドルのプランだ。servint.netにはまったく驚くばかりだ。最高のプロバイダーだ。失望させられたことは一度もない。とにかく、いろんなプロバイダーを調べてほしい。ボクたちもそうして決めたんだ。ボクたちはservint.netで十分に満足している。ボクたちのサイトは、Slashdot、Digg、Engadget、Hackaday、Gizmodoとも連携しているけど、ぜんぜんへっちゃらだ。


pt 2671

使っているソフトウェア

Adafruit.comは、LAMPサイトでいたいと思ってる。つまり、Linux、Apache、MySQL、PHPだ。これらはすべてライセンス料金がいらないから、商売上助かる。LAMPは商用利用が許されているから、ボクたちは、これらすべてを仕事に役立てている。商用利用不可のオープンソースハードウェアを売ろうと考えている人たちがいたら、考えてほしい。Linux、Apache、MySQL、PHPで作られたショッピングカートのソフトを使うのに、誰かにライセンス料を払わないといけないとしたら。オープンソースソフトウェアが成功したのはそこだ。だから、オープンソースハードウェアは商用利用を認めているんだ。ちょっと寄り道しちゃったけど、大切なことだよ。


pt 2674

ショッピングカート

ボクたちはZencartを使ってる。オープンソースのショッピングカートだ。コミュニティーも巨大だし、ハック情報や改良版も山ほどある。好みの形にするには、それなりの専門知識が必要だけど、生活を掛けようというのなら、そしてホスト型ソリューションに限界を感じているのなら、Zencartがお勧めだ。.:oomlout:.Seeed StudioといったサイトもZencartだ。SparkFunはOSCommerceを使っているが、これはZencartから分岐したソフトだ。
pt 2675
管理者画面で注文の状況を見たところ。
pt 2676
これは伝票の画面。これを印刷してキットといっしょにパッケージする。バーコードをスキャンすると、発送ラベルを印刷できる。
pt 2700
オープンなツールを使っているから、独自の在庫システムを作るなんてことも、比較的簡単にできる(上の写真)。


pt 2677

クレジットカードの受け付け

クレジットカードの認証と支払いの処理にはauthorize.netを使っている。ボクたちが行っているのは、あくまでカードの「認証」。自分たちでカード情報は保管しないことにしている。保管するのは認証情報だけだ。商品が発送されたときにカードに請求が行く。こうすることで安全性も高まる。短所は、認証情報が30日間しか使えないため、注文予約を受け付けてから30日を超えると注文がキャンセルされてしまうという点だ。滅多にないことだけど、たまにある。Zencartとオープンなツールを使っているので、Authorize APIにヘビーな仕事をさせている。それほど強力じゃないけど、十分に多くの仕事をこなしてくれる。

ボクたちは今、SQUAREのiPhoneクレジットカードリーダーで遊んでいるところだ。次のイベントで製品を販売するときには使ってみたいと思ってる。authorize.net互換アプリケーションもあるが、まだドングルがない。両方を試してみて、どっちのほうが手数料が安いかを比べてみたい。


pt 2679

Paypal

ボクたちはPaypalも受け付けている。PaypalとZencartで利用できるリソースは山ほどある。最新バージョンではPaypal Expressも使えるので、お客さんはショッピングカートにアカウントを作らなくても買い物ができる。PayPalは、海外通貨の決済という面倒な処理もやってくれるから、とくに海外のお客さんに便利だ。ただし、PayPalのサイトはすごく遅い。作業を行うのにすごい時間がかかる。でも、ボクたちが知る限りではベストのサービスだ。ボクたちは PayPalドングルを使っている。特別な物理的なセキュリティーキーで、サーバーと同期してランダムな数字を作りだし、サーバーへのログインを許可するというものだ。だからさらに遅い。でもそれだけの価値はある。セキュリティー上の問題を起こしたくないからね。


pt 2681

ブログソフト

ボクたちのブログはとても活発だ。ショッピングカートに直接埋め込まれている。ボクたちが使っているのは、驚くほど柔軟で応用が利くWordPressだ。すごく気に入ってる。シームレスに統合するにはかなりの苦労があるけど、それだけの価値はある。RSSフィード、Podcastフィード、複数のエディター、コメントなどすべての機能が盛り込まれている。お客さんに常に情報やリソースを提供するには、最高の方法だ。ボクたちは、1カ月に100万ページビューを達成した! これまでボクは、あらゆるブログツールを使ってきた。カスタムメイドのものから、Engadgetや、このMake: OnlineのMoveable Typeまで。でも、Wordpressにかなうものはない。ただし、これを本当に思い通りに使いこなすには、かなりの勉強が必要だ。
pt 2686
ブログの書き込みを製品のページに表示させるための改良を行った。


pt 2705

フォーラム

ボクたちはphpBBを使っている。素晴らしいオープンソースの掲示板パッケージだ。


Part 2に続く。
こちらもどうぞ:

– Phillip Torrone
原文